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  4. 腹減ってるんだろ 食っていけよ

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の解除から1か月を迎えました。新しい日常が始まる中で、横浜市の下町では、新型コロナの影響で生活に困る学生を支援する取り組みが行われています。人と人との接触を減らすことが求められる一方で、町の中核である商店街を巻き込み、人と人との絆を育もうと模索しています。

頼りにしてきた学生たちが

横浜市神奈川区にある下町、六角橋地区。古くから商店街を中心に発展してきました。かつては、近所に顔見知りも多く 互いのふれ合いが町のにぎわいの源でした。しかし、昭和40年ごろから商店街の客足が徐々に遠のき、地域の人口も減少しました。

地域のとりまとめ役、自治会の連合会長の森 勤さん(69)が、地域の活力作りのために頼りにしてきたのは、同じ町にある神奈川大学の学生たちです。数年前から一緒にイベントなどを企画し活動してきました。

(写真中央)森 勤さん

そうした中で起きた新型コロナウイルスの感染拡大。イベントは自粛を余儀なくされ、学生との交流の場も失われました。
影響は大学生にとっても深刻で、なかにはアルバイト収入が全くなくなったという学生もいました。

ピンチの学生たちを支援

「学生は、いま実際に困っている。あした食べるものがない、困っている。じゃあ何をしようか」
そう考えた森さんは今月6日、新型コロナウイルスの影響で生活に困る大学生を支援する取り組みを企画。缶詰めや即席麺などを無料で配りました。

初めての開催にもかかわらず、会場には次々と学生が訪れました。
学生たちからは「ありがたい」「バイト全部切られちゃって…」という声が聞かれました。

一歩踏み出すことが活力に

森さんは “こんな時だからこそ、ともに活動してきた学生を支援し、つながりをより強めたり新しい出会いを作ったりできないか。そこには地域の中核である商店街も巻き込みたい” と考えました。

「もちろん応援したい気持ちはあるけれど、予算が潤沢ではない」
相談を持ちかけられた六角橋商店街連合会の石原孝一会長は、森さんに、新型コロナウイルスの影響で客が減り苦しい経営事情を率直に打ち明けました。

森さんは、人との接触を控えることが多くなる今、むしろ一歩踏み出すことが、今後の地域の活力につながると訴えかけました。

意見交換の結果、飲食店で大盛りを無料にしたり一品つけたりするなど、できることからやっていくことになりました。商店街も一緒になって、学生の暮らしを後押しすることで一致したのです。

石原会長は「多少、条件はついても、 “やってあげたい” という気持ちはもっている」と、自分たちも苦しい中での心意気を明かしました。

森 勤さん
「 “お前食っていけ、お腹減っているんだろ” 、それが商店街のよさ。みんなで応援しているというのが伝わればいいなと思いますね」

困っていたらお互いさま

今月21日に開かれた2度目の学生支援の会場には、商店街連合会の石原会長も訪れました。石原会長は、初めて会った学生に声をかけ、励ましの言葉を送っていました。

さらにこの日、特別に用意されたのが商店街で使える1200円分の商品券です。学生たちに無料で配布されました。実はこの商品券、地域の人などの寄付を財源に作られました。森さんたちが、ツテを頼りに動いた結果、実現することができました。今後、学生たちが商店街のさまざまな店で使うことで、商店街の振興や賑わいにもつながることが期待されています。

「ありがたいです。商店街に行くきっかけになりました」「商品券を使えるのが、すごくうれしい。徐々に商店街に足を運べたらいいと思います」。学生たちは口々にそう話していました。

新しい生活様式が求められる中でも、森さんは人と人とが助け合える関係を広げることが、地域の役に立つと考えています。

森 勤さん
「困っている人がいたら “お互いさま” 。何かあったとき、例えば災害のときなども、こういう経験は生かされてくると思う。ぜひみんなで続けていきたと思います」

森さんは、来月にも食料や商品券の配布を行うなど、学生への支援を通じた地域の交流の機会を作っていくということです。

  • 田中 徳絵

    NHK横浜

    田中 徳絵

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