色合いが華やかで、とても目を引く絵。かわいらしい動物のキャラクター。いずれも、作者は障害のある人たちです。こうしたアートの才能をいかして作られた作品を展示。さらに販売して、自立につなげようという施設が、川崎市にオープンしました。
今年1月 川崎市に障害のある人の創作活動を支援する施設『studio FLAT』がオープンしました。
ここを利用しているのは、知的障害のある8人。毎日、絵や立体作品の制作に取り組んでいます。作品づくりでは、本格的なプロ用の画材を使っています。
併設したギャラリーでは、作品の販売も行い、経済的な自立にもつなげていこうとしています。
8人の創作活動をサポートしているのは管理責任者の大平 暁さんです。大平さんは美大を卒業したアーティストです。
大平 暁さん
「障害のあるなしに関係なく、作品を見てもらえる機会を作りたかった。見るだけでなく、販売というか、所有していただくところまでもっていきたい」
施設の利用者の一人、山内健資さんは、カラフルな動物をモチーフにしたオリジナルキャラクターを描くのが得意です。
山内さんは、幼いころから絵を描くことが大好きでした。しかし学校を出たあとに入った施設では軽作業が中心で、絵を発表する機会はなくなってしまいました。このため、家で一人でコピー用紙に絵を描くことしかできませんでした。そのころのことを、母親の緑さんは「才能をいかせるような場所・人たちに巡り合えたらいいなと考えていた」と振り返ります。
この施設に来て、山内さんは思う存分絵を描くことができるようになりました。
2月、ギャラリーで開かれた展覧会では、お客さんのリクエストを受け、即興で絵を描くパフォーマンスに挑戦しました。
幼い2人の子どもが、サルを描いてほしいと伝えると、「難しい」と言いながらもサラサラとサルを描いて見せました。
山内さんは、「こういう絵を描くのが 今は楽しいですね」と感想を話していました。
緑さんは「好きなこと、才能をいかせる機会になって、ここにつながってすごくよかったです」と話していました。
しかし、新型コロナウイルスの影響で、ギャラリーで展覧会を開くのは難しくなってしまいました。
そこで施設では、インターネット上で展覧会を開くことにしました。
制作者それぞれが作品を紹介する動画も公開。山内さんは、オンラインでもお客さんからチャットでリクエストを受け、絵を描きました。
オンラインの展覧会は大成功しました。ふだんならギャラリーには来られない遠いところに住むお客さんも見に来てくれ、売り上げは30万円近くに上りました。
施設では、今はネットで販売するTシャツを製作中です。デザインは、山内さんの絵をもとにしています。
大平 暁さん
「新型コロナウイルスによってインターネット上での展覧会を余儀なくされました。しかしそれは、自分たちが “元気で頑張っている” と外に伝えられるチャンスだったと考えています。めげずに、なるべく前に進んでいけるように頑張りたい」