進むテレワーク オフィスの役割が変わる?

  • 2020年5月12日

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の要請を受けて、テレワークを導入する企業が増加し、オフィスに出社する人が減っています。この春入社した新入社員の中には、当初から在宅勤務で、オフィスに出社したことがないという人もいます。一方、企業の間では、東京都心部にあるオフィスの賃貸契約を解約したり、面積を縮小したりする動きが出ています。緊急事態宣言が続く中、専門家はオフィスの役割が見直される可能性があると指摘しています。

試行錯誤 在宅での新人教育

東京・千代田区のIT企業の「イグナイトアイ」。従業員およそ70人のこの会社では、この春、3人の新入社員を迎えました。しかし、感染拡大の影響で従業員全員が在宅勤務となりました。3人の新人も入社以来、全員が在宅勤務で、新人研修もオンラインで行っています。
新入社員の一人、廣川千瑛さんは「こんな形で新入社員として入社すると思ってなくて、正直すごく寂しさはありました」と当初の戸惑いを打ち明けます。

新入社員が在宅勤務でも孤独感を感じず、ほかの社員とつながりを深めるためにはどうしたらよいのか。この会社が取り入れたのがオンライン上での昼食会です。毎日、自由に参加でき、雑談専用のチャットも設けてコミュニケーションの機会を増やしています。社員どうしが、顔を見ながら過ごしてもらうことで、つながりを感じてもらうのが狙いです。
昼食会では、その日のランチを画面越しに見せながら、先輩社員と笑いあう新人の姿がありました。

新入社員の廣川さんは「寂しさはありますが、デジタルツールのおかげで仲間として受け入れられている安心感があります」と話していました。
人事担当の城居秋馬さんは「オンラインになって人とのつながりというところが失われるのを危惧していました。それをどう乗り越えるのか、かなり意識したポイントですね」と話していました。


およそ200人の新入社員がいる東京・有楽町にオフィスがある医療系の人材派遣会社「TSグループ」は、営業力をつけてもらうためのオンライン研修を行いました。
新入社員を30以上のグループに分け、社員役と顧客役になって商品説明など営業現場でのやりとりをする動画をオンライン上で制作。先輩社員もやりとりを見ながら話し方や動作・仕草などについて、オンライン上でアドバイスを送りました。

この研修で会社が重視したのが、新入社員のグループ内での話し合いです。各グループがコンテスト形式で競うことで、顧客の気持ちをつかむにはどうすればいいか新人同士、考えさせました。

新入社員の渡邉優さんは「最初はとても不安でしたが、オンラインでこんなに絆が生まれるんだと実感しました」と、仲間と協力して研修に臨んだ感想を話していました。
TSグループ人材開発部の石塚瞳さんは「チームでの話し合いを意識しました。今後も大変な時は、いっしょに頑張った同期を思い出してほしい」としています。

社員どうしのつながりをどう築き、力をつけさせるのか。緊急事態宣言の延長で2つの会社とも、当面オンラインでの育成が続くことになりました。新たな研修の進め方を検討しているということで、試行錯誤が続いています。

オフィス契約解除の動きも

企業のテレワーク導入が進むなか、東京都心部にあるオフィスの賃貸契約を解約したり、面積を縮小したりする動きも出ています。

東京・千代田区にあるエネルギー関連のベンチャー企業「エネチェンジ」では、3月下旬に100人ほどいる従業員を原則、すべてテレワークにしてから、定期的に仕事のしやすさを調査しています。4月下旬の調査では、90%余りの従業員が「生産性が上がった」または、「以前と変わらない」と回答したということです。

このため、この会社では、テレワークによって、業務効率がかえって上げられると判断。オフィスの一部を解約することを決め、11日、従業員に通知しました。解約するのは、エンジニアが使っていた部屋や、全社員がいちどに集まれる集会スペースです。今後は、半数の従業員の分の席しか設けず、新型コロナウイルスの感染が収束した後も、従業員には週に2日から5日はテレワークをしてもらうということです。
また、オフィスには、インターネットを使った打ち合わせの増加に備え、数個のいすとモニターを置いた専用のスペースも設けることにしています。

エネチェンジの城口洋平会長は「テレワークを前提に、オフィスは、コミュニケーションを取るための場としたい。新型コロナウイルスによる社会や経済への影響は大きいが、未来の働き方を一足先に実現するきっかけにしたい」と話していました。

オフィスの役割 見直される可能性も

東京都心部のオフィス物件を多く手がける不動産会社によりますと、先月中旬以降、ベンチャー企業などから、都心部のオフィスの賃貸契約を解約したいという相談が、ことし1月の4倍余りのペースで寄せられているということです。さらに、大手企業の間でも、オフィス面積を広げる計画を取りやめる動きが出ているということです。

背景には、想定以上にテレワークが機能し、従業員が出社するオフィスの必要性が見直され始めていることがあるということで、不動産会社アットオフィスの中西孝至さんは「高い賃料を払わずにシェアオフィスなどを活用する動きが進むものとみられ、都心のオフィスは拡張傾向から分散縮小へと流れが変わり始めた」と話しています。

こうした動きについて、日本不動産研究所の吉野薫不動産エコノミストは「テレワークの普及で一概にオフィスが不要になるとは思えないが、作業スペースからコミュニケーションの場へと機能が変化し、むしろそうした役割が見直される可能性もある」と指摘しています。

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