各地のすてきな温泉や銭湯を発掘するコーナー「#いいお湯見つけました」。
今回訪ねたのは、東京足立区。創業は昭和2年。昭和の面影が今も残る銭湯で、至福の時間を過ごせるとっておきの場所があるんです。
東京足立区。北千住駅から徒歩20分の住宅街に、昭和2年創業の老舗銭湯があります。建物は、昭和13年の改築からほとんど姿を変えていません。屋根は神社仏閣を思わせる「千鳥破風」、戦前まで東京の銭湯で見られた建築様式です。入り口には七福神を乗せた宝船の彫刻があります。創建当時に仏具職人によって掘られたものです。
この銭湯のいちばんの見どころは、脱衣所から続く縁側。ここから手入れが行き届いた日本庭園を眺めることができるんです。
ご主人の松本康一さん(74)は3代目。創建した祖父の松本留次郎さんが元々庭師だったことから、この庭が作られました。
他の銭湯と少し違うことをして、お客さんを集客しようという目的もあったのかもしれませんね。
縁側と庭園の景観の良さは、SNSでも人気。いつしか“キングオブ縁側”と呼ばれるようになりました。
松本さんは、銭湯を継ぐ前はプロのカメラマンとして活躍。その腕を生かし、季節折々の銭湯の風景を撮影してはHPやSNSで紹介しています。
庭園は、銭湯としては利益が出るような空間ではありませんが、この景色が1人でも多くのお客さんに喜んでいただけるならうれしいです。
松本さん一家と一緒に、縁側と日本庭園の景色を守ってきたのが、渡辺亮一さん(77)、町さん(82)夫婦です。キャリアはなんと60年以上!亮一さんはお湯の管理を任され、町さんは接客からスタッフの食事の用意まで何でもこなす、この銭湯にはなくてはならない存在です。
2人は朝出勤するとまず、庭の手入れをします。鉢植えで育てた花が咲くと縁側に飾るなど、お客さんの目を楽しませる工夫もしています。
いろんな面で気を利かせてやらないと、長年いた意味がないからね。
おふたりは10代の頃からこちらで働き、職場結婚しました。亮一さんは番頭として、町さんは赤ちゃん連れのお客さんがゆっくりお風呂に入れるようにと雇われた従業員でした。多いときで1日に2000人の利用客があった中で、みんなで協力しながら運営していたそうです。
赤ちゃんをベッドに寝かせて服を着せたり。ベッドがいっぱいになるとおぶったりカゴに入れたりして面倒を見たんです。
町さんが働き始めたときは、松本さんは小学1年生。松本さんにとって渡辺夫婦は、兄姉のような存在であると同時に、仕事の先輩として今も頼りにしています。
私が知らないこともよく知っている。うちにとっては神様のような存在。渡辺夫婦無しには成り立たないです。
ジェットバス、電気風呂、薬湯とバラエティ豊かなお湯は、地下180mからくみ上げられた地下水を使っています。以前は飲料水にも使われていたほどきれいな水です。地下水の温度そのままの水風呂もあります。
窓が低めに設置されているので、湯舟から庭を眺めることもできます。
湯上がりには、脱衣所から続く縁側でひとやすみ。ビールや牛乳、ジュースを片手に、至福のひとときを過ごせますよ。
縁側で自然の風を感じながら、森林浴のように過ごしていただきたい。みんなで頑張って維持していきたいです。
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