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自筆証書遺言“保管”できる新制度とは

  • 2020年7月27日

遺言書の紛失や改ざんのトラブル。それを防ぐための新しい制度が始まりました。自分で作成した遺言書を法務局で保管できるようになったのです。どんな仕組みなのか、なぜ新しく始まったのか、専門家と共に詳しく解説します!

遺言書が残されていなくても、法律で定められた人が決められた割合だけもらうことができます。
例えば、亡くなった人の配偶者に半分、子供全員で半分という具合です。
しかし、すんなりといかずトラブルが多く裁判にまで発展することが多々あります。
また「終活」が浸透しつつあるいま、自分の財産を家族に確実に託す方法として遺言書は大切です。

遺言書がない場合、法定相続人らの間で法定相続分に従って話し合いで遺産を分けることになりますが、
・不動産が多数の方の共有になってしまって意思統一できずに処分できない。
・介護や家業に貢献した方が、「寄与分」という権利はあるが報われにくい。
・事実婚のパートナーに遺言がないと相続させられない。
など、話し合いが年単位で長引くこともあります。

遺言書の種類

大きく2種類、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
「自筆証書遺言」
一人で手軽に書けるというメリットがあります。
しかし、条件を満たしていなかったり、自己流の自由形式では認められません。

「公正証書遺言」
「公証役場」という場所に出向いて、公証人に遺言書の作成を依頼する方法です。国の公証事務という制度の下で、公正な第三者で公務員である公証人が、遺言者の意思に基づいて作成する遺言書です。法律の専門家が作ってくれるので、手堅い方法で保管も安心です。ただし、相続とは関係のない証人が2人立ち会う必要があり、遺言の内容や遺産の総額に応じて手数料もかかります。

なぜ新制度に?

新しい制度がスタートしたのは、「自筆」のほうです。
自筆証書遺言はこれまで、自宅などで保管されていました。新制度では法務局で保管ができるようになりました。

いままでは「保管」の仕方がトラブルの大きな原因のひとつになっていました。亡くなってから見つけられないまま紛失してしまったり、相続人による、廃棄、改ざんのおそれもありました。
さらに、銀行の貸金庫などに預けたいという人もいますが、実は貸金庫を開けること自体、相続人全員の合意が必要で、話し合いがつかずに開けられないなどトラブルにつながっていました。

新制度では、法務局が全国一律のサービスを提供して、相続手続きが円滑に進めることができます。
全ての相続人に遺言書の存在や内容も知らされ、遺言書の存在や内容に改ざんがないことが確実にわかります。
ただし、全国どの地域の法務局でも自由に手続きできるという訳ではありません。
遺言書を作成した本人の「住所地」「本籍地」「遺言者が所有する不動産がある地域」の法務局や、地方法務局での手続きが必要になります。

保管の申請方法

※申請書がないと、順番待ちなどで時間がかかってしまいます。
※申請書は法務省のHPからダウンロードできるほか、法務局(遺言書保管所)の窓口にも備え付けられています。
※申請予約は法務省の手続き案内予約サービス専用ページから行うことができます。
※本人の出頭義務を課していることから、入院中など どうしても申請にいけない人は制度を利用することができません。介助のために誰かが同伴する場合は問題ありません。入院していて動けない、自宅や病院での保管が心配という場合には公証人に出張してもらって公正証書遺言を作る方法もあります。

●法務省ホームページ【申請書ダウンロードURL】
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

●法務局手続き案内予約サービス専用ページ
https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/

相続人について

遺言者が亡くなった場合、これまでは遺言書の確認をするだけでも相続人全員の合意が必要など、大変な手間が必要でした。
法務局で保管できるようになったことで、遺言書の内容の証明書の請求、遺言書の閲覧をすることができるようになりました。

相続人が複数人いる場合に相続人の一人が遺言書情報証明書の交付や閲覧をすると、法務局は相続を受けるほかの人たちにも「通知」します。これによって、遺言の発見者が自分に不利な内容だった場合に、遺言を握りつぶすというようなことを防げます。
また家庭裁判所での「検認」という手続きも不要となり、スムーズに手続きが進められるというのもメリットです。

遺言書の書きかた

※遺言書の様式の注意事項については下記法務省のHPを参照してください。
 http://www.moj.go.jp/content/001318459.pdf
※内容については、抽象的な書き方だと無効になってしまう場合があります。
※2019年1月から財産目録についてはパソコンでの作成が認められようになりました。
※法務局では作成に関する相談については一切応じられません。
※「自書」する必要があるので、代筆は認められていません。介助のために手を支えるなど内容や筆跡に影響を与えない範囲であれば「自書」として認められ場合もあります。
(心配な場合は、公証人に出張してもらって公正証書遺言を作るという方法もあります)

こんな遺言書はアリ?

Q:令和2年とすべきところ、令和2020年7月27日と誤記した場合は?
「誤記であること、及び真実の作成日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、日付の誤りを無効としない」という判例があります。
この場合はいずれも誤記で、その記載内容からして令和2年ということが容易にわかるので有効です。

Q:印鑑の代わりにぼ印やサインなどをした場合は?
・ぼ印→印章に代えて、ぼ印でも有効とした最高裁の判例があります。

・サイン→日本の一般的なハンコ文化の下で生活している人の場合は、要件を欠き無効となる可能性が高くなります。「遺言者が押印の習慣を持たない帰化者である等の事情の下では有効(最高裁判例)」

・インク内蔵のゴム印→押印という要件は満たすので無効にはなりませんが、インクが経年や日光照射で薄くなりやすいく消えてしまう恐れもある、どこでも手に入るため偽造だといわれやすい、というデメリットがあるため避けた方が無難です。

Q:チラシの裏紙を遺言書として利用した場合は?
有効です。用いる紙は何であっても構いません。ただし、新制度を利用する場合、A4で色移りしない紙でなければなりませんので、きちんとした紙を使用することをおすすめします。

Q:SNS メッセージや動画は自筆証書遺言になる?
自分の手で文字を紙に書かなければいけないので、自筆証書遺言の要件は欠きます。
ただし、SNSメッセージやメールなどで「私が死んだら○○を贈与します」「ありがとう、大切に引き継ぎます」などとやり取りがあったら、別途死因贈与契約として成立する余地があります。しかし、利害関係がある場合は紛争のもとなので、やはり遺言書を作るのが望ましいです。

■遺言書の新制度について

弁護士 椎谷 恵さん

■法務局における自筆証書遺言書保管制度について
●法務省ホームページ【申請書ダウンロードURL】
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

●法務局手続き案内予約サービス専用ページ
https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/

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