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千葉科学大学 銚子市が公立化検討委の開催見合わせ発表 77億円公費投入の効果は 少子化時代の大学経営とは

  • 2024年01月30日

銚子市の「千葉科学大学」。定員割れが続き、市に対して公立大学への移行を要望しています。

しかし、市はきょう、移行に向けた検討を行う委員会の開催を見合わせていることを明らかにしました。

元々は市が多額の公費を投入して誘致した大学。公立大学への移行は実現するのか、大学設置の経緯からひもときます。

銚子市「検討委の開催見合わせ」

千葉科学大学は、岡山県に本部がある学校法人「加計学園」が、市の誘致を受けて2004年に設置した大学です。

長く定員割れの状態が続き、去年10月、「大学存続のため」として、公立大学への移行を求める要望書を市に提出しました。

これを受けて市は、有識者などが検討を行う委員会の設置を定めた条例を制定。1月中にも委員会を開催するとしていました。

銚子市議会での条例案の採決(2023年12月21日)

そうした中、越川信一銚子市長は、1月30日のの記者会見で、委員会の開催を見合わせていることを明らかにしました。

越川市長

検討を行う前に、市と学校法人が大学の運営にどのように関わっていくのか、認識を整えておく必要があるが、運営のあり方の基本的な部分について協議が整っていない。詳しい説明は控えたい。

学園側は2025年度からの移行を求めているが、移行ありきではなく、慎重に議論を進めていきたい。

今後も、学園側と協議を続け、委員会が開催できるか見極めるとしています。

千葉科学大学 誘致の経緯は

以前、銚子市には大学がなく、大学の設置は、若者が大学への進学をきっかけに流出する課題を抱えた地元の悲願でした。

そうした中、2002年の市長選挙に、「加計学園」の運営する大学で客員教授を務めていた元官僚が立候補し、大学の誘致を公約に掲げて当選。

すると、選挙の8か月後には、学生や教員などで人口を増加させ、地域の教育や文化の向上につなげるなどとして、市と学校法人側の間で協定が結ばれました。

<協定に盛り込まれた内容>

●市がキャンパスの建設費の一部を負担すること

●市がキャンパスの土地を無償で貸し付けること など

大学は当時、全国初の危機管理の専門家を養成する「危機管理学部」が設けられるなどして注目され、少子高齢化が進む地域で、長期にわたって活性化の原動力になるものと期待されました。

今回、当時大学の誘致に関わった関係者が、匿名を条件にNHKの取材に応じました。

関係者

人口減少が進み、地域の経済が疲弊する中、大学の誘致は抜本的な対策になると考え、製造業や工場に代わる新たな産業の誘致として推進した。

大学が長く存続すれば、税金の増収によって市の財政負担分は30年程度で取り戻せる計算になっているし、大学が地域の活性化に貢献したことは間違いないと思っている。

誘致には77億円の公費

千葉科学大学の誘致にあたって、銚子市は77億円に上る公費を投入しています。

市は、2003年に学園側と結んだ協定で、▼キャンパスなどの建設費の一部として92億1500万円を負担し、▼約10ヘクタールの市有地を無償で貸し付けることを約束しました。

大学の誘致を伝える市の広報紙(2003年)

しかし翌年になって大学が設置された後、市議会で市の負担の大きさが指摘されます。市は学園側に対し、負担するとした約92億円のうち22億円余りの減額を要請しました。

これに対し、学園側は14億円余りの減額を受け入れ、結果的に市の負担は77億5000万円となりました。

市は、このうち約70億円分を地方債を発行して賄いましたが、利息を含めて毎年4億円に上る返済を、20年後の2025年度まで続けています。

銚子市は、借金の返済がどの程度負担になっているかを示す「実質公債費比率」が、千葉県内の市町村の中で最も高く、ただでさえ厳しい財政状況を圧迫しています。

銚子市役所

一方、減額が受け入れられなかった約8億円については、市が当時の一般財源から支出しました。

その代わり、市によりますと、学園側は8億円相当の予算をかけて、「銚子市の教育・文化の向上に貢献する施設の建設を前向きに検討する」としましたが、いまだそうした施設は建設されていないということです。

大学の誘致を伝える市の広報紙(2003年)

このほか、2014年には市の要望を受けて、大学に新たに看護学部が設置された時、千葉県から学園側に施設整備にかかる経費の補助として、4億円余りが支出されています。

これまで多額の公費が投入されてきた中で、学園側が公立大学への移行を要望していることについて、越川市長は…。

越川市長

市が大きな財政負担をしたので、地域との連携を強化して誘致した効果を高めてもらいたい。

できれば学校法人が経営の努力をして、そのまま続けてもらいたい。

経済効果は想定の1/3

千葉科学大学の誘致にあたっては、地域経済や銚子市の財政に大きなメリットがあることが、想定されていました。

市役所に掲げられている千葉科学大学の垂れ幕

市は大学の誘致にあたって、学生や教員などが移り住むことで、人口が2600人ほど増加すると試算。

消費の増加などによって生み出される地域への経済効果は、毎年約69億円に上るとされていました。

大学の誘致を伝える市の広報紙(2003年)

しかし、実際には学生数は2009年から定員を下回り続けています。2017年時点の市の推計で、経済効果は想定の3分の1程度の年間22億8230万円だったとされています。

市は2017年を最後に、大学の設置に伴う経済効果の推計を公表していません。

越川市長

大学によって若い世代が居住してさまざまな活動をしているといった波及効果はあり、大学があるまちづくりは今後も継続したいと考えている。

一方で、当初市が示した経済効果の試算は本当に正しい数字だったのか、反省があるし検証しなければならず、移行に向けた検討では議論の中心とするべきテーマだ。

銚子の地元の人たちは…

こうした中での公立大学への移行の要望。地元の人たちはどのように受け止めているのか。銚子市内で話を聞きました。

大学はもともと、市が強引に誘致したようなもので、多額の公費を投入してきた上で公立大学に移行するのには疑問があります。

市の財政自体がかなり厳しくガタガタなのに、公立大学の経営まで引き受けられるのかと思います。

学園側がもう少しちゃんと経営できればよかったですが、大学を存続させるためには公立大学への移行はしかたないと思います。

すでに公費をつぎ込んで誘致し、さらに公立大学になってつぎ込むとなると難しいところですが、大学を残すためには必要だと思います。

また、千葉科学大学の学生は…。

看護師を目指して山形県から進学してきました。

私の下の学年も定員割れしていますが、学生にとって大学を選ぶ際には学費が大きなポイントになります。

千葉科学大学は私立で学費も高いので、公立大学になって、学費が安くなれば通いたいと思う学生も増えるのではないでしょうか。

少子化進み 私大の経営厳しく

少子化がいっそう進み、学生の確保が難しくなる中で、各地の私立大学では経営が厳しくなるところも出ています。

日本私立学校振興・共済事業団の調査によりますと、2023年5月現在、全国に約600ある私立大学のうち、半数を超える320の大学が定員割れになっているということです。

こうした中で、公立大学への移行を希望するところが近年相次いでいて、▼2023年は北海道の旭川大学、▼2022年には山口県の徳山大学が、それぞれ公立大学に移行しました。

旭川大学は「旭川市立大学」に
(NHKニュースより)

公立大学に移行したケースは、2009年以降で12の大学に上ります。こうした状況について大学の経営に詳しい専門家は…。

東京大学大学院
両角亜希子 教授

公立大学に移行することで国から地方交付税が入り、財政状況が改善することがあるが、施設の建て替えなどは自治体の負担になるのは財政的なデメリットになる。

国公立と私立という枠組みを超えて、将来の大学のあり方を国、地方自治体も含めて議論していく必要がある。

「首都圏ネットワーク」での放送内容は、NHKプラス2月6日(火)午後7:00 までご覧いただけます。

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