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“小松菜”で地域を盛り上げたい! 

ある農家の奮闘 ~千葉・船橋~
  • 2023年08月09日

船橋市で生産される小松菜は、苦味が少なく食べやすいため、都内の市場で最高値をつけるほどの人気を誇ります。そんな西船橋の特産物・小松菜の本格的な生産が始まったのは今から30年ほど前。背景には、今年で誕生50周年を迎えるJR武蔵野線との関わりがありました。

小松菜栽培の始まり

小松菜の栽培は、西船橋駅の近隣の畑で30年ほど前に始まりました。 
現在は13軒の農家が作っています。

西船橋の小松菜 市のブランド野菜にも認定されている

小松菜が地域の特産となるきっかけを作った平野代一(ひらの・しろかず)さんです。
武蔵野線の開通が、農家としての転機につながったといいます。

平野代一さん 西船橋の農家の6代目
1978年 西船橋駅に武蔵野線が開通

1978年、西船橋駅に武蔵野線が開通すると、 田畑が多かった沿線は急激に宅地化が進みます。 その結果、農地は住宅の合間の狭い場所に残るのみとなりました。

現在の西船橋 住宅に挟まれた農地
平野代一さん

武蔵野線が乗り入れたことで、地域は住宅が増えて、すっかり変わりました。 便利な街になった反面、農業はだんだんと衰退していきます。次の世代に繋ぐためにも、何とか農地を守っていきたいと思いました。

平野さんは、残された狭い農地でも作れる特産品で、再び農業を盛り立てたいと考えました。
そこで注目したのが、小松菜。 小ぶりで場所を取らず、年に何度も収穫できる効率の良さから、
狭い農地に向いています。
平野さんは、自ら試作を繰り返して作り方を調べ、地域に広めました。

小松菜は季節を選ばず1年中作ることができる
平野代一さん

農家も減っていく中で、小松菜で仲間の農家もひとつ目標を作ってやっていけたらいいかなと。生産を始めたころは、まずは皆さんに食べてほしいと思って、ビニール袋にサンプルの小松菜をいれて飲食店を周るなど、いろいろ走り回りました。

”小松菜ハイボール”誕生

小松菜の特産化にひと役買ったものがあります。 それが“小松菜ハイボール”です。 
西船橋駅前で居酒屋を経営する山本圭一さんが旅行先で飲んだ、野菜を使った酒をヒントに思いつきました。

材料はハイボール、小松菜のピューレ、グレープフルーツ風味のシロップ 
居酒屋経営 山本圭一さん

西船橋駅前の商店街で閉店する店が増えてきたので、何かみんなで地域を盛り上げる方法がないかなと思っていました。平野さんたちが作る小松菜が盛んになっているのを知っていたので、一緒に何か作れないか相談しました。

平野代一さん

最初のころは、試作品を客に提供したら、みんな驚いて「これ飲めるの?水槽の水みたいだね」って言われて、ちょっとショックを受けたこともありました…。

実際に店で出してみると、予想以上の反響がありました。見た目のユニークさに加え、すっきりとした味わいが評判を呼び、年間10万杯近く売れる西船橋の名物になったんです。 
そのおいしさを広めたいという住人の発案で、今では小松菜ハイボールを飲んで語り合う交流会まで開催。
競馬の調教師やプロレスラーなど、SNSを通じて集まった様々な職種の人が親交を深めます。

月に1度 小松菜ハイボールで交流会を開催

小松菜の魅力 次世代に伝えたい

交流会のおかげで、小松菜の魅力を知ってもらう機会は、増え続けています。
平野さんは、交流会で知り合った保育園の園長に頼まれ、 いま食育の授業を行っています。

授業では小松菜の生態や味について説明

この日は調理実習も開かれ、そこでは平野さんにも発見がありました。 
料理に使うのは珍しいという“小松菜の根”が食材に使われていたのです。
保育園の栄養士が「食材を無駄にしない大切さも教えたい」と、メニューを考え、今年から園児の食事に取り入れているそうです。

園児たちも小松菜の根の調理を手伝う
小松菜の根のきんぴら風

平野さんも小松菜の根を食べたのは初めて。「居酒屋のメニューに合う!」と大喜び。
 新しい発見を広めたいと、小松菜の魅力を伝える自身のSNSで発信していました。

平野さんは小松菜の料理や生育の様子を毎日発信

最後は園児たちが授業のお礼にと、小松菜をテーマにしたダンスを披露。
地元の歌手が作った歌に合わせ、小松菜の妖精をイメージした衣装に扮して踊り、「小松菜大好き!」と声をそろえて平野さんに伝えていました。
小松菜の生産を始めた平野さんの努力は、子どもたちの笑顔として地域に実っていました。

園児から先生まで、みんな踊れるという小松菜のダンス

小松菜の根もおいしかったですし、子どもたちのダンスを見ていたらウルウルきました。 今日は私の方が食育された感じでしたね。小松菜を食べて育った子どもたちが、また自分の子どもに小松菜を食べさせたいと思ってくれるような いい街になってくれればいいなと思います。

<取材後記>

<取材後記>
小松菜ハイボールが大好きです。 お酒が飲めない方にはアルコール抜きの「ジュース」や、甘味が苦手な方にはシロップを抜いたバージョンの「野郎」がおすすめです!
千葉局 ディレクター 安住洋之

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