横芝光町では、町の名物となっている梅林で、いま梅の花が見頃を迎えています。地元の宿泊施設でつくる組合では、この梅林でとれる特産の梅の実を使ったビール系飲料を開発し、新たな呼び物にしようとしています。
(千葉放送局銚子支局記者 岡根正貢)
千葉県北東部にある横芝光町。室町時代に築かれた城の跡に、昭和40年代、食用の梅を育てる梅林が作られ、現在は1000本ほどが植えられています。
この時期は花が見頃を迎え、2月18日からは恒例の「梅まつり」が開かれて多くの観光客を集めています。
今回、ここで新たに売り出されたのが、去年とれた梅の実を使った発泡酒です。
梅林の木は、農家の後継者不足や転作の影響で減ってきています。この発泡酒は、町内の宿泊施設で作る組合が、梅の実の需要拡大と宿泊客の増加をねらって開発しました。
購入した人
「珍しいところに惹かれました。梅林の梅は有名なので、どんな味がするのかなあと。私はビールが大好きなので、楽しみです」
使う実は、去年の夏の収穫期に組合の会員が手摘みして冷凍しておき、秋に、千葉市にあるクラフトビールの醸造所で仕込みました。
風味を楽しめるよう、実に切れ込みを入れるなど、試行錯誤を繰り返しました。
醸造所では2月、組合の会員を集めた試飲会が開かれ、独特の香りに仕上がった酒を味わいました。
できばえは上々。こだわった梅の風味も、うまく取り入れることができたといいます。
組合で中心になって企画した秋葉香織さん
「イメージしていたものよりおいしくできあがっていると思います。地元の良さのひとつを分かってもらえたらうれしい」
醸造所の宮ざき浩司さん
「青梅の風味を出すことを心がけて、3度の工程に分けて梅を使いました」
※「ざき」の字は「たつさき」
組合ではさらに、会員の施設に呼びかけて、この酒に合う新しい料理の提案も募集しました。2月13日に開かれた試食会では……。
町特産のイワシを梅肉入りのたれで仕上げた「イワシのみりん干し」。
梅干しを日本酒で煮詰めて作った日本古来の調味料「煎り酒」をつけて食べる「たいの刺身」などが並びました。
宿泊組合 早川盛康 会長
「みんなで料理を持ち寄り意見を交わすことで、いろいろな料理に合うことが分かりました。今後も組合として町の魅力を発信していきたい」
できあがった酒はそれぞれの宿泊施設で提供されるほか、3月5日まで開かれている横芝光町の「坂田城跡天空の梅まつり」の会場で土日に販売されます。
まつりの会場で販売を行っている
横芝光町観光まちづくり協会 井上富雄 会長
「梅を使ったものは珍しく、これから人気が出てくるのではないでしょうか」
この発泡酒、試飲した最初のひと口目ではあまり感じることがなかった梅の風味が、飲むほどに次第に強くなり、苦みよりさっぱり感が際立つ後味でした。その日の肴は銚子で水揚げされたマイワシを一日中寒風にさらした丸干しでした。ごちそうさまです。
宿の設備や規模、客単価などがそれぞれ違う施設が集まる組織では、統一した企画は難しいと以前の取材で聞いたことがありました。コロナで落ち込んだ宿泊客の増加と、地域の特産の梅を活用することが今回の企画の目的だったとメンバーは話します。その多くが親から事業を承継していて、「何かしたい」という気持ちが高まり、このお酒を生み出したのではないかと、取材を通じて感じました。