ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. ちばWEB特集
  3. 人口増加率6年連続1位の流山 移住者を呼び込む戦略の秘訣は?

人口増加率6年連続1位の流山 移住者を呼び込む戦略の秘訣は?

  • 2023年01月24日

『母になるなら、流山市。』、このフレーズ、みなさんどこかで聞いたことがあると思います。流山市は、全国の市のなかで6年連続で人口増加率が全国1位となっています。
このキャッチコピーを通して、市がどのように若い世代の呼び込みに成功したのか、取材しました。

(千葉放送局東葛支局 間瀬有麻奈)

『母になるなら、流山市。』立役者

全国各地の自治体職員から、『会いたい』と声がかかる人が流山市役所にいます。

流山市マーケティング課 河尻和佳子課長

流山市マーケティング課の、河尻和佳子課長です。『母になるなら、流山市。』のキャッチコピーで、市の知名度を上げた立役者です。

流山おおたかの森駅前

2005年つくばエクスプレス開通時の市の人口は15万人ほど。当時、市の知名度は高くなく、「柏市の隣のまち」などと、名前を出さずに表現することも多かったというもいます。

流山市は、つくばエクスプレスで都心に20分ほどで行けるようになったことと、ほどよい自然と閑静な住宅街が広がっていることを強みとして、「都会で働く子育て世帯」を呼び込みたいと考えました。

流山市には、全国に先駆けて「マーケティング課」が設置され、河尻さんは2009年、民間企業を辞めて入庁しました。『共働き子育て世帯』への知名度とイメージを上げるため、キャッチコピーをつくることになりました。

河尻課長

当初はですね『帰りたくなるまち流山市』のような綺麗なコピーの案があったんですけれども、やはり流山らしさ、流山のこれから向かっていく方向性ということを考えたときに、『母になるなら、流山市。父になるなら、流山市。』というコピーが最適ではないかなと。

河尻課長

転入された方にあとで聞くと、私に向かって語りかけてくれてるように思ったっていうふうに言ってくださる方が多くて。理由としてはやはり主語が自治体ではないので、そういった部分で共感を得られたのかなと思います。

移住をきめるきっかけのひとつに

このキャッチコピーが、移住をきめるひとつのきっかけとなったという、大澤郁恵さんです。学生時代に住んだことがあった流山市に、2018年に再び引っ越してきました。現在、3歳の娘を育てています。

大澤さん

私がいない間に、いつの間にか「マーケティング課」ができて、『母になるなら、流山市。』っていうのをやっていて、そこでまちに対する期待が膨らんでいったというのはあります。特に知名度が違いますね。以前だったら「千葉県にあって柏の近く」って言わなくてはいけなかったけど、最近は説明が楽になりました。

駅前でのイベント(市提供)

キャッチコピーは、子育て世代の心をつかみ、狙い通りに30代や40代が多く移住し、年々人口が増加していきました。

呼び込み成功も・・・

マーケティング課

成功した若い世代の呼び込み戦略。しかし、河尻さんのもとには、必ずしもポジティブでない市民の声が届くようになります。

届いた声の例
「『母になるなら』って言っているのに、子どもが遊びやすい公園が少ない」
「プロモーションにお金かけるなら、保育園ひとつ作ったほうがいいんじゃないか」

河尻課長

プロモーションで人口が増えてきたことに関して、必ずしもポジティブな声ばかりではないということが聞いて初めてわかるっていうことがありました。住んでもらった方々の気持ちを聞いて、まちを好きだっていう気持ちを上げていく必要があるなと思いました。

マーケティング課のミーティング

住民自身がまちの良さを語れること”の重要性を感じた河尻さんたち。そこで手厚く取り組んだのが、聞き取り調査です。ひと月あたり多いときで15人、毎月必ず住民に会って話を聞き、話の内容によっては市の関連部署にも伝えることにしました。

住民満足度を上げる!

「ながれやまStyle」HPより

また、聞き取った内容は、専用のサイトに紹介することにしました。住民がどのように暮らしているかを紹介することで、まちを深く知ってもらい、地元に愛着を持ってもらうためです。

河尻さんたちは、大澤さんにも聞き取りを行いました。

市「親になって変わったことはありますか?」
大澤さん「流山にいたからってこともあるんですけど、人との繋がりをちゃんと持つようになりました。子どもができてからは、子どもといろんな人に関わってほしいと思ったので、いろんなお父さん、お母さんとつながっています」

市に対して思っていることをいつでも話せるよう、顔の見える関係性を築くことも、目的のひとつです。

大澤さん

こんなに話を聞いてもらったの久しぶりだなと思って。しかも、あのあまり話さない地元の話とか過去の話とかしたりしたので、すごい面白かったです。市の職員の方というふうにあまり感じずに話ができました。

河尻課長

今、子育て中の方たちが本当はどう思っているか、本当のニーズはどこにあるのかがずれてしまうと共感をえられず、逆にネガティブな結果に終わることもあるので、本当にその人たちが考えていたり望んでいたりすることを聞き出していくのは必要不可欠です。

「ながれやまStyle」HPより

こうした取り組みを続けた結果、2021年度の市の調査では「流山市に住み続けたい」という住民が90%をこえました。

住民が生き生きと暮らす姿が、新たな移住者を呼び、人口は15年間で5万人増え、20万人を突破。最も多い年代は、30代と40代です。

『母になるなら、流山市。』のキャッチコピーで、若い世代の取り込みに成功した流山市。河尻さんは今後、つくばエクスプレスの駅周辺の開発地域だけではなく、もともとある住宅地域など、高齢化しているエリアにも若い世代が入っていくようなしかけをしたいと考えているといいます。

河尻課長

コミュニティとか地域経済っていうのをさらに活性化させて、『流山市のなかが盛り上がっている、すごく活力があって楽しそうだ』というのが、外に向けて見えるようにしていく仕掛けは必要だなと思っています。

こちらの内容は、24日午後6時30分ごろから総合テレビ「首都圏ネットワーク」の「変わるくらし つくばエクスプレス沿線ウイーク」のなかでリポートでお伝えします。

  • 間瀬有麻奈

    千葉放送局東葛支局

    間瀬有麻奈

    流山市の自然と調和した町並みが魅力的だと思いました。

ページトップに戻る