「口どけが絶品なんです!」食べた人が皆とりこになるのが、千葉県ののり。
こののり、東京湾で養殖されているんだそうです。
東京湾でのりの養殖?しかも、おいしいの?
どういうことなのか、取材しました。
(千葉放送局 金子ひとみ/高橋大輔)
のりの養殖は海で行われます。
東京湾でも養殖が行われています。
「江戸前ちばのり」として人気がある、東京湾で育てられるのり。
湾に面した1都2県のうち千葉の生産量が最も多く、その大部分を占めているんです。
東京湾でのりの収穫が行われると聞き、同行させてもらいました。
あ、船が…のりに覆われている
育ったのりを収穫する専用の船なのだそうです。通称「潜水艦」。
どうやって収穫しているのでしょうか。
のりがついているのは海の中に張られた網です。
収穫する船はその先端を網の下に潜り込ませました。
船がのりに覆われていたのは、こういう仕組みになっていたからだったんですね。
作業をしていた「海苔師」・坂才丸の滝口光宏さんは、この日だけでのり1万2千枚分(21センチ×19センチのサイズ)を収穫していました。
三番瀬で収穫されたのりはどんな味がするのでしょうか
港に戻ってから勧められたのは、生のりの天ぷらです。
むむ、確かにおいしい。
甘さとしょっぱさのバランス絶妙、何より味が濃い!
さらに焼きのりを食べると、しっかりした風味が口の中に広がり続けます。なんでこんなにおいしいの?
船橋市農水産課の梅田新也さんに聞きました。
いくつかの要因があります!
のりはこの支柱柵に張られた網で育っています。
この時点では満潮時に近く、海水につかっているのりはリンや窒素などの養分を海水からしっかり取り込みます。
逆に干潮時には海面が下がってのりが出てくるため、たっぷりと日光を浴びます。こうするとのりが強くなると言います。
支柱柵を使った100年続く伝統的な養殖方法。のりが育つのに時間がかかり大量生産は難しいですが、時間をかけてうまみと甘みが強まり、香りもよいのりが育つそうです。
梅田さんが千葉ののりがおいしい理由としてもう一つあげたのが、三番瀬という場所で育てられていることです。
三番瀬の漁場には、すぐ北にある江戸川が流れ込んでいます。河川から海に流れ込む水は、のりを育てる栄養が多く含まれているのです。
すこし西には荒川もあり、たくさんの水が流れ込むことで海の栄養分が高まり、おいしいのりが育つと話していました。
こんなにおいしいのり、でも実はすこし困った事態も起きています。
いま、船橋市漁協でのりの養殖に携わっているのは3軒のみ、人数にして6人、50年前の1%以下です。
このおいしいのりをなくしたくないという思いで、滝口さんはのり養殖を続けていると話していました。
「船橋の漁場は徳川家康が開いたって言われていて、それが私の代でなくなるのはいたたまれないから、生きている間はがんばります。のりの甘みと香りは一番だと思っていますよ」
このおいしいのりを守るために漁業者と行政も力を合わせて、今後も取り組みを続けていきたいということです。