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小学生の通学かばん「ランドセル」でも「リュック」でも 千葉

  • 2022年12月12日

小学生の頃に多くのみなさんが背負ったであろう「ランドセル」。来年、小学校の入学を控えるお子さんのいるご家庭では、既に購入したという方も多いと思います。
そもそもみなさん、「小学校の通学かばんはランドセルでなければいけない」という決まりはないことを知っていましたか?

(千葉放送局記者 坂本譲)

「ランドセル主義は見直す時期」!?

熊谷知事のツイート(10月23日)

「高価なものが多く、そもそも機能的ではないので、ランドセル主義はそろそろ見直す時期です」

ことし10月、千葉県の熊谷知事がツイッターに投稿した内容が注目を集めました。本来、小学生が学校に持っていくかばんに規定はないので、高価なランドセルを購入する保護者の負担軽減などの観点から、ランドセルにはこだわらず、リュックなどでも良いという認識がもっと広まるべきだとの主張です。このツイートにはさまざまな反応が寄せられました。

「物価高騰の中の発言、とても頼もしい」
「子どもに合わせていろんな選択肢があってもいい」
「ランドセルにも良い面はあると思う」

知事のこの発言は、大手アウトドア用品メーカーが小学生向けの通学用リュックを販売するというニュースを受けたものでした。

記者会見で、真意を尋ねてみました。

熊谷知事

学校現場の先生によっては、ランドセルのみという考え方のもと、リュックを持って行く保護者や子どもたちに対して、それはランドセルにしなければならないというふうに言ってしまう事例があります。学校現場や教育現場において、そういう規定がないということは、まずしっかりと認識をしてもらわなければならないと思っています。

『ランドセル』の決まりはない!?

坂本記者

私は、小学生のときは6年間、ランドセルを使いましたが、クラスメイトの中には、リュックで通学している子もいました。このため、知事の発言にはそこまで違和感はなかったのですが・・・。

「えっ、ランドセルでなくてもいいの?!」
「みんなランドセルだったから、小学生といえばランドセルだと思っていた!」

デスクや先輩記者たちの反応は、このようなものでした。

知事も言うように、ランドセルの使用は法令で義務づけられているものではありません。指定のランドセルがある学校もありますが、通学に使うかばんは本来どんなものでも良いとされています。

教育だよりちば(令和元年10月号)より

熊谷知事は千葉市長時代、入学準備品としてランドセルを指定する文書を保護者に出している小学校があることに疑問を抱き、教育委員会を通じて、「ランドセルやリュック等」のように、通学かばんはランドセルに限らないことを明示するよう要請したということです。

ランドセル?リュック?聞きました

坂本記者

人々はランドセルについてどのように思っているのでしょうか。千葉市と習志野市で聞いてみました。

小1児童の保護者

1年生になったらやっぱりランドセルかなって。小学生の象徴のような感じがする。小学生の自覚を芽生えさせるためにも使った方が良いと思う。

小2児童の保護者

中学生はリュックじゃないですか。リュックだと雨の時に教科書がびちゃびちゃになるんですけど、ランドセルだとそこまでぬれない。耐久性や防水性の面で、ランドセルは丈夫だと思います。他の人を見ていても、ほとんどランドセルで、リュックはあまり見かけないです。

小4児童の保護者

『小学校ではランドセル』と、それ以外の選択肢を考えたことがないですね。義務化されていないことは知らなかったです。リュックでもいいんだと今初めて知りました。リュックだと途中でへたって買い換えたりすることがあると思うんですけど、ランドセルだと長く使えるので、それは良いところかなと思います。値段は5~6万円位したと思うんですけど、6年間使うと思えばそんなに高い買い物ではないのかなと思いました。

実際にランドセルを使っている小学生はどうでしょうか。

小学4年生

「クラスみんなランドセルです。お父さんお母さんが買ってくれて、もう4年間も一緒に学校に行ったりとかしてるから、やっぱりランドセルに思い入れがあるから好きだなって思います。私の色はピンクですけど、紫とか水色とか、茶色の子が多いです。リュックも選べるよと言われても、ランドセルを選ぶと思います」

一方、こんな意見もありました。

園児の保護者

1年生にはまだ重たいのかなって。教科書も入れますし、ちょっと背負われてる感はありますよね。自分の時はランドセルだったので考えたこともないですが、リュックでも入れば良いのかなと思う気もしなくもないかな。

園児の保護者

いまイギリスに住んでいますが、ファッションのトレンドとしてランドセルがはやっているんです。日本にある独自の文化のかばんなので、子どもがランドセルが良いといったら、絶対買ってあげると思います。ただ、高いイメージはありますよね。

私が聞いた範囲では、リュックで通学しても良いという認識を持っている人は意外と少なく、また、ランドセルのデメリットとして「重い」という声が多く聞かれました。

ランドセルも進化している!

坂本記者

私が小学生だったのは20年も前の話です。実際、いまのランドセルってどうなんでしょうか?専門店の方に話を聞いてきました。

船橋ランドセル館

このランドセル専門店には、様々な色やデザインのランドセルが並んでいます。オーダーメイドで、自分の好きな色や模様などをカスタマイズし、オリジナルのランドセルを作ることもできるそうです。

左から古いランドセル→新しいランドセル

ここ数年で、教科書の大きさが変わったり、A4サイズのファイルなどが使われるようになったりしているため、サイズが一回り大きくなっているそうです。

また、▽すべての方向からの光に反応するように反射板が取りつけられたり、▽給食袋などを吊り下げるフックは、一定の力がかかると自動的に外れる仕組みになっていたりして、交通事故などから児童を守るために機能が改善されているそうです。耐久性の向上のほか、子どもの体が成長しても対応できるよう、肩の部分が可動式になっているものもあります。

【関連記事「また同じ小学校の通学路で・・・事故はなぜ防げなかったのか」】

坂本記者

よく言われる「重い」というのは、実際どうなんでしょうか?

船橋ランドセル館 小林明子館長

大体平均1200グラム弱なので、実際にからの状態で背負っていただければ、そこまで重くはないです。ただ教材が、昭和の時代と比べたら倍以上重くなってるものもあるので、中身が負担になってるのかなと思います。

坂本記者

確かに、学校に教科書などを置いてくる『置き勉』が禁止のケースがあったり、最近だと授業で使うタブレットを持ち帰ったりしますからね。あとやはり気になるのは値段の問題です。

ランドセル工業会によると、ランドセルの平均価格は10年前は3万円台でしたが、今年は5万6425円となっているとのことです。また、物価の高騰も影響しているようです。

小林館長

ランドセルは200以上のパーツを重ねて作っているので、サイズを大きく改良するにあたって高騰化してしまうというのがどうしてもあると思います。あとは消費税があがったり、材料費が高騰したりしている影響もあります。

取材後記

私も小学生時代にランドセルを背負っていました。ランドセルが重い、と感じたことも確かにあります。しかし、実質的な問題はランドセル自体にあるのではなく、別の部分にあるとも感じます。文部科学省は教材やタブレットなどの荷物を学校に置いていく、いわゆる「置き勉」を認めているものの、学校の対応はまちまちです。子どもたちがかばんに荷物を詰めこんで、毎日家と学校を往復しなければいけない状況が生まれているのが問題であり、子どもの成長発達の観点から、毎日重たいものを持ち帰るこの現状からまず変えていく必要があると感じました。
ランドセルとリュックを比べてみると、かばん自体の重さ、機能性、安全性、価格など、それぞれのメリットがあります。ランドセルとリュック、どちらが良い悪いの二項対立を作るのではなく、子どもたちそれぞれの好みに応じた通学かばんの選択ができるということが大事です。選択の自由の認識が、ぜひ広がっていってほしいと思います。

【12月13日おはよう日本 放送】

  • 坂本譲

    千葉放送局記者

    坂本譲

    2020年入局。小学生のときは黒のランドセルを6年間使っていました。学期末には持ち帰る荷物が重すぎて肩が取れそうでした。

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