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「男女に関わらず選択できる社会を」初の女性市長に聞く 勝浦

  • 2022年09月14日

『「女の子なんだからそんなことするな」と言われて育ってきた世代』
自らをそう話した勝浦市の照川由美子新市長。

8月28日に行われた市長選挙で初めての当選を果たしました。勝浦市では初めての女性市長で、県内54市町村のうち5人目の女性首長の誕生です(2022年9月時点)。
どんな勝浦市にしたいと思っているのか、聞いてきました。

(千葉放送局記者 荻原芽生/房総支局記者 大西純夫)

勝浦市初の女性市長

初登庁(8月30日)

照川由美子市長は70歳。小学校の教諭や校長などを経て、平成27年の市議会議員選挙で初当選し、2期目の途中で市長選に出て新人5人の争いを制し、当選しました。

荻原記者

インタビューを行ったのは9月7日。房総支局の大西記者と私が市役所に伺いました。

大西記者

私は立候補会見から取材をしていますが、照川市長、選挙活動中よりもなんだかいきいきとしていて、気力に満ちあふれているように見えますね。

照川市長へのインタビュー(9月7日)

照川由美子市長
「正直、最初は立候補するか迷っていたんです。このため、ほかの候補者よりも立候補表明が10日ほど遅くなってしまい、選挙活動では追いつくのに必死でした。でもたくさんの方が背中を押してくれて、中でも女性たちからの支援を強く感じました。
就任して10日、もう毎日忙しく動き回っています。重要な課題が山積しているので、頑張らなくちゃって力がみなぎっています」

県内で最も人口の少ない市

勝浦市の8月1日現在の人口は1万6221人で、県内37の市のなかで最も人口が少ない市となっています。

荻原記者

選挙では、人口減少対策が議論のテーマのひとつになりました。データを見ると、1958年(昭和33年)から60年あまり、ずっと人口減少が続いているんですね。

照川市長

勝浦市の大きな課題として感じています。長年教育に携わってきたことから、「教育体験交流」というのを私のキーワードにしていきたいと思っています。都会の子どもたちに勝浦に来てもらい、自然環境のすばらしいところで、マリンスポーツや海を裸足で歩く体験をしたり、昆虫観察などをしたりする教育体験をしてもらう、保護者も一緒に、勝浦の魅力を感じてもらう。こうしたものをきっかけにして、まずは「関係人口」を増やしていきたいです。

荻原記者

「関係人口」、移住したり観光に来たりする人たちと違い、地域と様々な形で交流する人たちのことですね。

照川市長

はい。それが人口増につながっていくかどうか、すぐに成果が出るものではないので分かりませんが、「関係人口」を増やしていくことがまず第一歩だと思っていますので、その切り口として教育体験だとか自然体験などを提供していきたいと考えています。そしてこうしたものから移住者などを増やし、そして人口を増やしていくことができればと考えています。

荻原記者

勝浦にまず来てもらうとなると、観光をどう活性化するかも課題となりますね。

本当に昔に比べて朝市の出店数も減ってしまっています。でもこうした中でも、店を出し続けて頑張っている人たちもいます。こういう人たちを支援するために市としては、まず第一歩として、朝市に合わせて定期的に市がイベントを開催したいと考えています。毎月、あるいは毎週、継続できるようなイベントによって人を呼び込む。それから、朝市でお惣菜などを作って販売できるような特産品を生み出したいです。

朝市の様子

照川市長
「また今年度はビッグひな祭りもやる予定です。新型コロナウイルスの影響で、もう3年やっていないのですが、とにかく力を合わせて、続けてきたものを消さないで進めていきたいです。また勝浦の自然環境を生かした散策路なども紹介して観光をアピールしたいとも思っています。新型コロナウイルスが収束したら大々的にやりたいです」

市民は・・・

私たちは今回、インタビューの前に、勝浦市民の方に日頃、感じていること、市長に伝えたいことなどを聞いてきました。

勝浦駅前で止まっていたタクシー運転手の男性は、次のように話していました。

「駅前のロータリー、道路の標示が薄れてしまって、たまに逆走をしてくる車もいて困っています」

照川市長

私も感じていたことです。街の顔でもある駅ですから、イメージアップしたい。安全に運転できる道でないとまずいですね。絶対にそれは必要です。取り組んでいきたいですね。

70代の女性は、このように話しました。

「水道料金やゴミ袋の代金が高いです」

照川市長

市民目線でとても大切なことだと感じています。ただ、料金については公約には掲げませんでした。というのも、ゴミ袋の値段を下げても、今老朽化している焼却場が止まってしまったら元も子もありません。水道管も最後まで水が行き渡らず、*有収率が低いんです。こうした暮らしに関わる設備をまず変えていかなければならないという危機感を強く感じています。そこの順序を間違えないように担当部署ともよく話し合っていきたいと思っています。
(*有収率=数値が高いほど、漏水などが少なく、効率的に事業が運営されていることを示す)

災害対策は

災害対策についてはどう考えていますか?

照川市長

海と山と両方の魅力がある勝浦市ですから、やっぱりそこに大きな災害のリスクもあるわけです。私が一番懸念しているのは津波です。津波が来た時命からがらてんでんこで逃げる。あとは大きな台風ですね。そういうときどこで過ごすか。
勝浦市は大きく分けて、海の地域、山の地域に分かれているんです。そのうち人口は海側の地域が7割、山側の地域が3割。面積はその逆で山側が7割、海側が3割です。それで海岸部はそれだけ人口が集中していて、地震が起きて津波が来てしまったらひとたまりもないわけです。
せっかく海と山、両方を持つ勝浦市ですから、津波が来たら山側に避難、大雨などの際には海側に避難、そういった助け合いの仕組みづくりを進めていきたいと思っています。

初の女性市長として

荻原記者

勝浦市初の女性市長ということで同性からの期待も高いと思いますが、どう応えていきたいですか?

照川市長

まだまだ封建的な日本です。私自身も「女の子なんだからそんなことをするな」と言われて育ってきた世代です。私に対しても「女性に何ができるんだ」と思う人も当然いることでしょう。

就任時の記者会見(8月30日)

照川市長
「女性が子育てをして料理を作って、さらに責任の重い仕事をする。そもそもこれができない、だから責任の重い仕事を女性が自ら避けるという実態もあると思います。ジェンダーの問題は家庭に起因している。女性が家事、育児を行うと言った根本を解決しないとだめ。なので市役所でも男性の育休を推進し、市民からのジェンダーに関する相談を受け付ける場所を作り、男女にかかわらず物事を選択できるような社会を作りたいです」

荻原記者

最後に、どんな勝浦市を目指したいですか?

照川市長
子ども、働く人、高齢者、すべての世代を大事にして、安心して暮らせる、そして人間らしく生きられるような市を目指したいです。少しでも何かアクションを起こし、気持ちをもり立てたいですね。昭和の時代にあったような市民同士が助け合える環境作りもしたいです。新しい目線を持った移住者もいます。移住者の力も借りて盛り上げていきたいですね。
自分がおごらずひるまず焦らず一歩を踏み出すことが大事なんだという気持ちで取り組み、これまでの教え子たちにも勇気を与えられたらと思っています」

取材後記

インタビューの中では熱く語るシーンもあり、照川市長の勝浦愛が伝わってきました。中でも、「男女関係なく選択できる社会」ということばが特に印象に残りました。家庭内で女性の負担が多いことからこれまで選択肢が少なかった。家庭内に根づいてしまっている今の環境を変えることは簡単ではないと思いますが、勝浦市から始め全国に広めたい、という照川市長の心意気を感じました。いつか「初の女性○○」ということばが無くなるくらいフラットな社会になってほしいです。(荻原)

突然の前市長の逝去を受けての勝浦市長選挙は、5人の新人による熱い戦いでした。どの候補もそれぞれ特徴ある政策を掲げて選挙戦に挑みましたが、結果、元市議の照川由美子氏が当選し、勝浦市初の女性市長の誕生となりました。初登庁の朝には、たくさんの支持者が市役所玄関に集まり手を振りながら声援を送っていました。勝浦をより住みやすいまちに変わってほしいという多くの市民の期待の声が聞こえてきました。さまざまな課題を抱える勝浦市ですが、それに応える新市長の少し緊張した笑顔が印象的でした。これからの新市長の手腕に注目していきたいと思います。(大西)

  • 荻原芽生

    千葉放送局 記者

    荻原芽生

    勝浦市は神社にお雛様がずらっと並ぶビッグひな祭りが魅力ではないかと思います。前任地徳島にある勝浦町でも行われていて、それが縁で千葉でも始まったんです。

  • 大西純夫

    千葉放送局房総支局

    大西純夫

    勝浦市は住みやすい気候と美味しいカツオが魅力のまちではないかと思います。

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