「アクセス集中で登録すらできない」「上限に達しました表示が出て、ガックリ」・・・。千葉県の新型コロナの陽性者登録システム「陽性者登録センター」。自分で検査して陽性だった場合、オンラインで確定診断を受けられるはずですが、想定を超える事態になっています。何が起きているのか、そして、万が一発熱した場合はどう行動すればいいのか、調べました。
(千葉放送局記者 岡本基良/坂本譲)
「13分で上限に達して終了、登録チャレンジ失敗」
システムに登録を試みたという千葉県の女性に、話を聞きました。
家族が市販の検査キットで陽性が出ましたが、サイトにアクセスはできたものの、登録できなかったといいます。
ネットには、同じように「登録できない」という千葉県民からの投稿が相次いでいます。
千葉県の「陽性者登録センター」は、オンラインを活用して感染の急拡大による発熱外来のひっ迫を防ぐのが目的で、ことし2月に開設されました。自分で抗原検査キットなどを使って陽性だった場合、オンラインで医師の確定診断を受け、保健所などが感染者の健康状態を把握するシステム(HER-SYS)に登録することができます。
しかし、今回の「第7波」で、そのシステムに想定を超えるアクセスが集中し、登録できない人たちが相次いでいるのです。
登録できなかったとSNSに投稿した女性は、保健所に感染者として把握されていない状況に不安な思いをしているといいます。
私が家族より先に感染したのですが、その時は発熱外来にかかって診断を受け『HER-SYS』にも登録できました。後日、家族が発熱した際には発熱外来に診察を断られ、市販の検査キットで陽性になったのでオンライン登録を試みました。感染が行政に把握されていない状況で、万が一、症状が悪化した際に医療にスムーズにアクセスできるのでしょうか。
全国でも早期に設置されたこの千葉県のシステム。なぜ、このような状況になっているのでしょうか。
県の担当者に話を聞くと、「第7波」が想定を大きく上回っていることが主な要因でした。
開設直後に起きた「第6波」では、最大で、1日あたり145人の登録があったそうです。その後、感染が落ち着いたため一旦閉鎖していましたが、「第7波」にあたって7月下旬に再開。そのときは、1日あたり100人程度を想定して準備しましたが、再開初日の7月21日に、17倍を超える1751人が殺到しました。
申請に対して1件ずつ医師が電話をかけて診断していたこともあり、処理がパンクして、その日のうちに登録を停止しました。その後、県は対応する医師の人数を増やしたり、電話での診断をメールに切り替えるなど体制を強化し、7月25日に、1日あたり300人分の上限で再開。さらに、8月1日からは枠を1000人分まで増やしました。
しかし連日、受付開始から30分経たずに、早いときには10分足らずで上限に達する事態となっています。
また、アクセスの集中でサーバーに負荷がかかり、システム運用に支障が生じているため、3日からは、登録枠を分割し、時間をずらして登録を受け付けることにしました。
千葉県健康福祉政策課の岡田慎太郎課長は、今回の事態の要因として以下を挙げました。
▼登録センターでコロナ陽性の診断にあたる医師や、職員の増強が難しい
▼登録者情報を保健所へ届け出る際、一部、情報を手入力しているため時間がかかる
そして、以下のような点を通じて改善していきたいとしています。
▼医師によるコロナ陽性の診断の効率化を図る
▼コロナ陽性の判断が医師以外でも可能となるよう仕組みを変更する
▼手入力で行っていた作業を自動化する
まさに今、求められている事業だと思うので、今すぐにでも改善できるところは改善したい。登録できていない人たちが速やかに陽性の判定を受けて支援が受けられるように、県としてしっかりと対応していきたいと思います。
今後受付枠を拡大していく予定ですが、それでも登録センターが使えない場合には、厚生労働省のホームページにオンライン診療のできる医療機関のリストが載っているので、活用してほしいです。症状が重い、重症化リスクのある方については、発熱外来を受診してください。
そのような状況で、発熱したらどうすればいいのでしょうか。
発熱して診断を受けるには、自分で検査するか、医療機関を受診するかの2つの選択肢があります。県は、重症化リスクが低い人は、医療機関を受診する前に、自分で検査をすることを推奨しています。
まずは自分で検査する場合です。
しかし、この図にある「陽性者登録センター」にアクセスが集中し、登録できない状況となっています。このほか、厚生労働省のホームページにも、オンライン診療が可能な医療機関が掲載されています。
そして、医療機関を受診する場合です。
どちらの選択肢を取っても診断を受けられない場合、どうすればいいのでしょうか。
発熱などの症状だけであれば熱を下げる市販薬も使えますので、一般で売っている薬をお使いいただくというのも1つの手です。
それでも症状が治まらない、症状が重い、おかしい状態で、発熱外来の受診もできないというような人は、救急車を呼ぶというのが最終手段になってくるかと思います。ただ、救急医療のひっ迫もあるので判断は慎重にしていただきたいと思います。
県としてはまずは、症状が軽度の人についてはこの陽性者登録センターを活用できるよう、枠を広げることに鋭意努力していきます。
登録センターの登録処理のひっ迫が象徴するように、千葉県の新規感染者数は、先月から高い水準で推移しています。7月末、1日の感染確認が初めて1万人を超え、病床全体の使用率も、2日時点で60%を超えました。
こうした状況を受けて、千葉大学病院では1人でも多くの患者に対応しようと、今月を「コロナ対応強化月間」に位置づけ、独自に医療体制を変更しています。
具体的には、「第6波」の時と同様に、
▼一般病棟を一部、閉鎖するなどして新型コロナの専用病棟に必要なスタッフを確保
▼・酸素吸入の必要性がある場合
・基礎疾患があり重症化リスクがある場合
・救命の可能性がある場合 を入院基準とし、中等症や重症患者を中心に受け入れる
第7波では新たに、
▼10日間の療養期間に関わらず、患者の症状が落ち着いた時点で早めに退院してもらうことを検討する
▼人に感染させる可能性がある期間を過ぎた患者は、一般病棟に移動してもらう
このような対応をとって、医療のひっ迫を防ぎながら、1人でも多くの医療を必要としている患者の診療に当たりたいとしています。
千葉大学病院の横手幸太郎院長は次のように話しました。
病院の機能がまひしてしまうような状況の1歩手前まで来ており、最高ランクの非常事態と言ってもいいかもしれない。8月を“コロナ対応強化月間”にして第7波が収束することを願いたい。
想定を上回る勢いで感染が拡大している「第7波」。行政の対応も手探りで試行錯誤が続いています。感染状況に応じて必要とされる対応が刻々と変わる中で、どのような体制が望ましいのか、今後も取材を続けていきたいと思います。(岡本基良)
県や医療現場の取材を通して、担当者の危機感迫る様子が印象的でした。社会全体のコロナの捉え方が変わる一方で、現在も必死に対応している人たちもいます。感染拡大の終わりが見えない中、私たちにできることは基本的な感染対策を徹底すること、これに尽きると思いました。(坂本譲)