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コロナ「濃厚接触者特定せず」保育の現場の対応は?千葉 市原

  • 2022年07月29日

「今後は、濃厚接触者の特定は行いません」

あなたが子どもを通わせている保育所からこう言われたら、それも仕方ないと思いますか?それとも不安になりますか?

(千葉放送局記者 櫻井慎太郎)

「心配」「緩めることも大事かな」

今月21日、千葉県の熊谷知事は定例会見の中でこう述べました。

「すでに事業所などでは濃厚接触者の特定は行っておりませんが、今後保育所などにおいても同様の扱いとし、濃厚接触者の特定を行わないことといたします」

櫻井記者

この発言を現場で聞いたとき、私は、この決定を歓迎する保護者は多いだろうなと思いました。『子どもが濃厚接触者に特定されたために、数日間仕事を休まざるを得ない』ということが起きなくなると思ったからです。

実際、保育所に子どもを預けている何人かの保護者に話を聞きました。

保護者

濃厚接触者と言われると1週間ないし10日休まないといけないので、仕事に影響があって難しい。心配は心配なんですけど、仕事をしているとその方がいいのかなと思います。

保護者

感染は怖いですけど、社会を回す上では、緩めることも大事なのかなと思います。国も緊急事態宣言など出していないし、そういう流れなのかと思います。

やはり、直接話を聞いた保護者からは心配しながらも、仕事を休まずにすむので助かるという声が聞かれました。

160人中56人が休みに

では、保育の現場はいま、どのようになっているのでしょうか。

市原市「つぼみの森保育園」

話を聞かせてくれたのは、市原市にある「つぼみの森保育園」です。160人の子どもたちが通っています。

新型コロナウイルスの急拡大を受けて、ここにきて休みをとる子どもたちが急増しているといいます。取材した7月26日時点で、3分の1近い56人が休んでいました。

このうち、新型コロナに感染した子どもは5人でしたが、家族の感染がわかったために休んだり、感染拡大を受けて自主的に休んだりする子どもも多いということです。加えて、RSウイルスなどコロナ以外の感染症にかかる子どもも増えているということでした。

職員

これだけ多くの園児が休んだことは、これまでありませんでした。園児が休むということは、保護者も仕事を休むなどしなければならず、影響がこれまでになく大きいと思います。

保育の安心のために

熊谷知事が、保育所などでの濃厚接触者の特定は行わないことを表明しましたが、園長の池永幸弘さんは、このニュースを冷静に受け止めたと言います。

池永園長

現状の流れからすると、いつかはこういう日が来るだろうなという思いと、感染リスクが高まる中で、園として、どうクラスターの発生を防ぐか、どうやったら保護者の方が安心して子どもを預けられるのか、ということは、今まで以上に考えていかなければいけないと強く思いました。

この園ではこれまで、感染がわかった園児がいると、園長ともう1人の職員が、園内に設置しているカメラの映像を2日分振り返って、濃厚接触者の特定を行い、保健所に報告してきました。
そのうえで、濃厚接触者となった園児には、7日間の自宅待機をお願いしていました。

カメラの映像

園では、今回の県の方針を受けて、対応を協議しました。
濃厚接触者を特定しないことで、保護者に不安が広がるのではないか。また、園内で感染が広がる可能性は今まで以上に高くなるのではないか。

検討の結果、これまで通り、カメラの映像をさかのぼって接触状況の確認を行うことにしました。

池永園長

0歳、1歳、2歳の大抵のお子さんはマスクをしていません。非常に密着してマスクをしていないということでは、本来的に非常にリスクが高いです。社会一般で言う物差しが当てはまらないのが保育園だと考えています。そういった意味では、リスクが高まらないような取り組みをしていくのは務めだと思いますし、従来通り把握していくことは必要だと考えました。

カメラの映像をさかのぼって、子ども同士の距離や会話の状況などを確認する作業は、1人あたり2時間半くらいかかるそうです。時間はかかりますが、こうしたことを引き続き行って、園内での感染対策を徹底することにしました。
一方で、濃厚接触者の自宅待機については求めないことにしました。

池永園長

濃厚接触者となったお子さんの保護者の方には実情をお伝えして、より警戒していくということに繋げていただければと思っています。

情報を保護者に伝えて、自宅でも子どもの様子を確認してもらうとともに、万が一、園で体調の変化などがあればすぐに対応ができるようにしたといいます。

決断の検証を

池永園長は、保護者によって事情や思いはさまざまなので、保護者とも情報を共有しながら運営をしていきたいとした上で、次のように話しました。

池永園長

熊谷知事は今回、非常にはっきりとしたインパクトのある決断をされたと思います。第7波が次第に収まって、社会活動の維持が促進される状況にいけばいいですが、逆にリスクが非常に大きくなって社会活動への負の影響も生まれてくるかもしれない。ですから、どこかで検証の機会を設けていただきたいです。

取材後記

感染が拡大する中で「濃厚接触者を特定しない」という方針の発表はインパクトがありましたが、取材した保育園の受け止めは冷静でした。園長は「対応に感情をのせすぎてはいけない」と繰り返し話していました。先が見通せない第7波と向き合う上で、とても大切な姿勢だと思いました。

29日19時半~総合テレビ「首都圏情報 ネタドリ!」で、「行動制限なき第7波 ウィズコロナのジレンマ」と題し、行動制限がないなかで、感染急拡大に直面する現場について放送します。このなかで、つぼみの森保育園を取材させていただきました。ぜひご覧ください。

  • 櫻井慎太郎

    千葉放送局 記者

    櫻井慎太郎

    2015年入局。千葉県政担当を経て、8月から成田支局。現場の声を伝えられるように頑張ります。

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