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若い世帯を呼び込み大規模団地の活性化を 千葉市・花見川団地

  • 2022年05月25日

高度経済成長期以降、首都圏をはじめ全国各地で建設が進んだ大規模団地「ニュータウン」。
それからおよそ半世紀。大規模団地では住民の高齢化や空き家の増加が進み、このままでは人口が減少して町が衰退するおそれがあるとも言われています。
こうしたなか、千葉市では、若い世帯を団地に呼び込んで活性化に繋げようと、新婚カップルなどが団地に入居する際に資金を補助する新たな施策を始めることになりました。
「新婚さん、団地にいらっしゃーい」というかけ声が聞こえそうな、この施策。千葉市が施策を打ち出した背景と大規模団地の現状を取材しました。 (千葉放送局 記者 大岡靖幸)

花見川団地

訪れたのは千葉市花見川区にある「花見川団地」。

高度経済成長期まっただ中の昭和43年(1968年)に入居が始まり、賃貸と分譲であわせて7000世帯以上が暮らしていました。
千葉県内でも最大規模の“ニュータウン”です。

当初からこの団地に住み、自治会の事務局長を40年以上務めている阿部京子さんは団地の現状に危機感を感じています。

阿部さん

「住民の高齢化がどんどん進んでいるし、住民が引っ越しても新たな入居者が入ってこないからそのまま空き家になってしまう」

かつての花見川団地は子どもたちや住民の賑わいであふれていたといいます。

団地の自治会が発行した昭和46年(1971年)12月の機関紙には、団地内で開かれた文化祭の様子が特集され、書道や手芸、演芸などに加え、パン食い競争やリレー競争などを楽しむ住民たちの生き生きとした姿が見られます。

また、45年前の昭和52年(1977年)にNHKで放送された団地の映像でも、子どもたちが団地内で遊ぶ賑やかな様子が捉えられています。

しかし団地の建設から半世紀。

4階建てや5階建ての老朽化した建物の多くはエレベーターが付いておらず、高齢者にとっては、ゴミ出しや買い物といった日常生活への影響が懸念となってます。

団地に住む83歳の男性は、もともとは4階に住んでいましたが、足が悪くなったため、5年前に2階に移り住みました。それでも階段の上り下りは大変で、買い物などは週1、2回行くのもやっとだと話しています。

阿部さん

「自治会とは別に『たすけあいの会』の活動もしていますが、スタッフも高齢化しています。団地の中みんな老老介護で助け合っているのが現状なんじゃないでしょうかね」

さらに高齢化によって、自治会の存続自体も危ぶまれていると言います。  

阿部さん

「若い人が入らないと地域の活性化になりません。私たちの自治会でも、私含め高齢者でやらざるを得ないのが現状です」

こうした団地の現状の改善につなげようと、千葉市は「結婚新生活支援事業」という新たな取り組みを始めることになりました。

打ち出したのは、千葉市内外に住む、30代までの新婚カップルの支援

花見川団地を含む、建設からおよそ40年以上たった大規模団地に入居した際に、家賃や移転費用、リフォーム費用について、あわせて最大30万円補助します。

▼団地に2年以上住む意思があり、▼ことし1月から来年3月までに婚姻届を提出するか、パートナーシップを宣誓したカップルであることなどが補助の条件です。

実は千葉市には、敷地面積が5万平方メートル以上の大規模団地が42か所あり、およそ100万人の人口のうち3分の1を超える36万人が住んでいます

さらに、大規模団地のうち建設からおよそ40年以上が経過した「高経年住宅団地」は24か所に上り、住民の高齢化が進んでいるのです。

浜田建築部長

千葉市 浜田恒明・建築部長「高経年住宅団地では急激に高齢化が進んでいて、市内全体の高齢化率が26%なのに対し、これらの団地では36%。なかには、50%を超える団地もあるなど、危機的な状況です。このままでは地域の活力が失われ、コミュニティの維持が難しくなることから、若い世帯にぜひとも団地に入ってほしい」

高齢化が進む大規模団地に若い世帯を呼び込むことで、どんなことが期待されるのか。

実は団地側でも、高齢化に対処しようとさまざまな対応をしてきました。
そのひとつが花見川団地の中心部にある商店街の取り組みです。

この商店街では特殊な三輪車を使った「買い物支援サービス」を無償で行っています。

高齢化で買い物がしづらくなったという声を受けて、およそ10年前から始めたもので、電話で予約を受けて、買い物をする高齢者を送迎するとともに商品も運ぶ仕組みです。

しかし、三輪車をこぐボランティアも高齢化するなどして6人から4人に減り、このまま減り続ければサービスを続けられなくなる恐れも出ています。

商店街では今回の千葉市の取り組みをきっかけに、若い人にも携わってもらえないか期待を寄せています。

大澤副理事長

花見川団地商店街振興組合 大澤幸治・副理事長「行政の取り組みをなんとか利用して、団地内に若い人を呼び込んでそれをこの商店街の活性化の決め手にできればと期待しています」

若い人たちが団地に増えることで、ゴミ出しなどの問題についても一緒に考える機会になると期待されています。

さらに、企業も団地の活性化に一役買おうとしています。

花見川団地では去年、「無印良品」のブランドで生活雑貨などを扱う企業グループと提携し、若い人向けにリノベーションした賃貸住宅の貸し出しを始めました。

狙いはあたり、用意した11戸はすぐに全室契約済みに。ことしは商店街の共用部分などのリノベーションも計画されています。

花見川団地の自治会で事務局長を務める阿部さんは、こうした取り組みで若い世帯が入居してくれることを心待ちにしています。

阿部さん

「若い人がいて、子どもの声が聞こえるだけでも私たちはうれしくなるし、それがいろんなところにいきいきと反映されるので歓迎です。若い人の力は大きいと思います」

高齢化などが進み、大規模団地の現状は厳しさを増しています。
若い世代の入居促進に向けたさまざまな取り組みが始まっています。

取材後記

高齢化や空き家の増加など、どうしてもネガティブな情報が多くなりがちな大規模団地ですが、保育所や小学校といった子育て・教育関連施設や商店、医療施設などが団地内に計画的に整備されていて、子育て世代にとっては安心して暮らすことができる場所でもあると感じました。
マンション価格が高騰するなか、比較的手頃な家賃で入居できるこうした大規模団地の魅力をどう訴えていけるかも団地再生の鍵になると思いました。

  • 大岡靖幸

    千葉放送局 記者

    大岡靖幸

    千葉局5年目で、千葉市政と遊軍、経済ニュースを担当。子どもの頃は企業の団地に住んでいて、いつもそこで遊んでいました。今回の取材では、かつて見たような光景に出会うことがあり、思わず懐かしさを感じました。

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