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「チバニアン」待望の「ゴールデンスパイク」設置 千葉 市原

  • 2022年05月23日

地質学上の一時代が「チバニアン(千葉の時代)」と命名されるきっかけとなった千葉県市原市にあるおよそ77万年前の地層に、国際的な標準であることを示す目印「ゴールデンスパイク」が設置されました。登録決定から2年余りたちますが、新型コロナの影響で延期されてきたため、関係者にとっては待望の設置となりました。

(千葉放送局 記者 櫻井慎太郎)

市原市の貴重な地層 おととし命名された「チバニアン」

千葉県市原市にあるおよそ77万年前の地層は、地球のN極とS極が入れ代わる「地磁気逆転」が起きたことが読み取れる貴重な場所です。地球の歴史は46億年に及びますが、地質学では地層の特徴などを手がかりに、46億年を細かく分けてそれぞれ名前が付けられています。例えば、258万年前から180万年前は、「ジェラシアン」、180万年前から77万年前には「カラブリアン」という名前が、付いていました。そして、おととし、およそ77万年前から12万年前までを、地層が見つかった千葉県にちなんで「チバニアン」と命名されました。

国際標準地示す目印「ゴールデンスパイク」

今月21日、市原市は国際標準地を示す目印として「ゴールデンスパイク」を設置しました。今回設置されたゴールデンスパイクは、直径20センチのしんちゅう製のプレートです。1つ前の時代「カラブリアン」が終わり、「チバニアン」が始まる地層の境界を示しています。

「ゴールデンスパイク」 設置までの長い道のり

登録決定から2年余り。新型コロナの影響で「ゴールデンスパイク」の設置が延期されてきたため、関係者にとっては、待ちに待った節目となりました。

市原市 小出譲治市長
「ゴールデンスパイクは、地球規模で起こったダイナミックな自然の営みを将来に伝える象徴です。この貴重な地層を守り、未来へと伝えていきたいです」

国際地質科学連合 スタンリー・フィニー事務局長
「国際地質科学連合にとって誇らしい日になりました。申請を行った日本の科学者チームをたたえる日でもあります。地球の特別な歴史を記録している重要な場所だということを理解して、多くのみなさんが学べる場所として活用してほしいです」

「チバニアン」申請チームのリーダーを務めた茨城大学 岡田誠教授
「提案書の提出から昨年の最終報告論文の出版まで、およそ9年間にわたり走り続けた日々がありました。この間、予期せぬことがあり、一進一退をくりかえす時期もありました。日本の子どもたちが、これから地質学に親しめるきっかけとなることを願います」

国際標準地の登録申請にあたっては、国内の別の団体から申請のデータに疑義が寄せられ、一時、国際学会の審査が中断したこともありました。この団体が地層周辺の一部の土地を借りているため、いまだにしこりが残っています。地層の目の前には大きく傾いた木があったため市原市が伐採の要請を続けてきて、「ゴールデンスパイク」設置の2日前にようやく伐採が完了しています。

「チバニアン」の楽しみ方 観光客増加に備えて

この地層は誰でも見ることができますが、一見するとただの岩壁です。そのため現地の見学については、地層の特徴などをパネルや映像で伝えるビジターセンターが置かれていて、地元のボランティアが事前予約制のガイドも行っています。現在、活動しているガイドはおよそ30人です。ことしも新たに地元の住民など10人が、ガイドの養成講座に参加しています。

また観光客の増加を見据えて、毎週日曜日の午前11時と午後1時半には、予約なしでも参加できるガイドツアーを実施していく予定です。現在、市原市はガイダンス施設と遊歩道の整備を進めていて、令和8年のオープンを目指しています。市は教育や研究、観光の場として活用されるだけでなく、この場所を訪れる観光客や研究者、子どもたちなどの間で、さまざまな交流が生まれることも期待しているということです。

ガイダンス施設と遊歩道の整備イメージ 画像提供:市原市

ガイドを行うNPO法人「田淵チバニアンズ」 石井あゆみ代表
「地元の私たちにとっては、これから先が正念場と思っています。新型コロナのせいでチバニアンへの理解を深める活動が全然できていません。ゴールデンスパイクの設置を契機にチバニアンの魅力をおもしろく、楽しく分かってもらえるガイド活動に改めて力を入れていきたいです」

取材後記

この地層は、駐車場のあるビジターセンターから歩いて10分ほどのところにあります。新緑と養老川の澄んだ流れがとてもきれいで癒やされます。ゆっくりとした時間が流れる中で、地層を見ながら地球の歴史や地磁気逆転の謎に思いをはせるのは、とてもぜいたくな時間になると思います。また取材を通じて、地元の人が熱心にガイド活動に取り組んでいることもチバニアンの魅力の1つだと感じました。「これからが正念場だと思っています」と語るガイドの石井さんはとても明るく力強く、これからさらに多くの人が訪れる場所になっていくと思いました。

  • 櫻井慎太郎

    千葉放送局 記者

    櫻井慎太郎

    2015年入局。長崎局、佐世保支局を経て千葉局。千葉県政キャップとして、行政取材を担当。

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