1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. 千葉放送局
  4. 記事
  5. 知床観光船沈没 亡くなった千葉の男性 恩師が悔しさ語る

知床観光船沈没 亡くなった千葉の男性 恩師が悔しさ語る

  • 2022年05月13日

北海道知床半島沖で観光船が沈没した事故から3週間になります。この事故では乗客14人が死亡、12人が行方不明になっていて、捜索が続けられています。死亡した人の中には千葉県松戸市の34歳の男性がいました。男性は、筑波大学で鉄道に関する研究を行い、学会で賞を受賞するなど熱心に学んでいました。男性の恩師は悔しい思いを語りました。

千葉の男性の恩師「もっとやりたいことがあったのでは」

先月23日、乗客・乗員26人を乗せた観光船「KAZU 1」(19トン)が知床半島の沖合で遭難した事故では、これまでに乗客14人が死亡、12人が行方不明になっています。事故から2日後、千葉県松戸市の34歳の男性が死亡していたことが明らかになりました。

亡くなった男性の2人の恩師

事故のあと、男性の大学時代の恩師2人が取材に応じました。

男性は、平成18年から平成24年まで茨城県の筑波大学に通い、鉄道の安全性に関する研究をしていました。大学4年の時に学会で発表した研究で優秀賞を受賞するなど熱心に学んでいたということです。

筑波大学 松島亘志教授

指導教授だった松島亘志教授は「バイタリティーがあってやりたいことをどんどんやるタイプでした。4年生の時に賞を取るのはすごいことです。オランダからの帰国子女で英語が話せるので留学生とも仲良くしていました。卒業旅行が終わって研究室パーティーやったときに、小型飛行機の免許をフィリピンで取ってきたと聞きました。社会人になっても活躍すると思っていました。亡くなられたことは信じられず、もっとやりたいことがあったと思うので残念です」と話していました。

筑波大学 山田恭央名誉教授

もう1人の指導教授の山田恭央名誉教授は「旅行や列車が好きで卒業後は、鉄道関係の会社に就職したと聞きました。1人で黙々と実験していた姿が印象に残っています。若くして亡くなったのは非常に残念です」と話していました。

また、近所に住む50代の女性は「お母さんから息子さんは旅行が好きだと聞いていました。知床のニュースは気になっていたので、身近な人が被害にあったと知って驚きました。なんと声をかけたらいいのかわかりません」と話していました。

両親「海の中で恐怖を感じて死ぬ間際まで無念」

先月27日の夜には、男性の両親が取材に応じました。

父親は「観光船の社長からは私たちには直接謝罪がなく、とにかく対応が遅いです。まずは謝って、『詳細については調査中です』と説明するのが誠意ある対応だと思います。4月の北海道は寒くて、海はとてつもなく冷たい。荒れた海の中で恐怖や冷たさを感じて死ぬ間際まで無念だったと思います」と話しました。

また、母親は「息子は結婚を控えていました。まだ見つかっていない行方不明の方が多くいる中で息子が私の元に帰ってきてくれました。それだけでよかったんだと感謝したいと思います。今は息子と最後の時間をゆっくり過ごしたい」と話し、涙で声を詰まらせていました。

事故から3週間 最新の状況は

現場海域や沈没した船の周辺では行方不明者の捜索が続けられています。第1管区海上保安本部によりますと、北方領土の国後島の海岸に女性の遺体が打ち上げられているのが見つかったと今月10日、ロシア側から連絡を受けたということです。遺体は今月6日に島の西側の海岸で見つかり、その後、島にある病院に収容されましたが、身元の特定につながる所持品などは見つかっていないということです。

海上保安本部は、見つかった遺体は沈没した観光船の乗客の可能性もあるとみて、すでに乗客の家族にこの情報を伝えているということです。引き続き、ロシア側と連絡を取り合い、身元の確認を進めることにしています。

一方、観光船の沈没事故をめぐっては、海上保安本部などが知床半島から国後島の周辺にかけての広い範囲で夜を徹して行方不明者を捜しているほか、警察は来週、半島東部の羅臼町側の海岸線で陸地からの捜索を行う予定です。

また、海底に沈んだ「KAZU 1」の周辺でも、サルベージ会社の船が無人潜水機を使って捜索しています。サルベージ会社は、「飽和潜水」と呼ばれる深い海に対応できる方法で潜る潜水士や、機材を載せた別の作業船を現場海域に向かわせていて、今月中にも「飽和潜水」による捜索を行うほか、船の引き揚げに向けた調査を進めることにしています。

国土交通省の委員会

事故を受けて、国も安全対策について検討を始めました。国土交通省が開いた委員会は小型船舶の安全対策を、法的規制も含めて検討することにしていて、今月11日の初会合には、船舶工学や公共交通の安全、それに海上の法律などに詳しい有識者が出席しました。

委員会では冒頭、斉藤国土交通大臣が、「悲惨な事故が二度と起きることがないよう、徹底的な安全対策を講じていかなければならない」と述べました。

また現地で対応に当たっている渡辺副大臣が、事故の被害者の家族から、事業者の運航管理体制がずさんだったのではないかや、国の基準や検査、監督は適切であったのか、といった疑問が出ていることを報告しました。

委員からは、船の通信設備が電波の届かないエリアがある携帯電話だったにもかかわらず、船舶検査を通過していたことなどを踏まえ、抜き打ち検査をすべきだといった意見や、この時期の北海道沿岸では救命胴衣を着ていたとしても海上ではすぐに体温を奪われ、効果に疑問があることから、救命用具については地域的な特性を踏まえてルールなどを考えるべきだなどといった指摘が出されました。

委員会は今後、おおむね週1回のペースで議論を重ね、年内までに安全対策を取りまとめたいとしています。

ページトップに戻る