3年ぶりに行動制限がなかった大型連休。久しぶりに家族旅行や外食を楽しんだ人も多かったのではないでしょうか。NHKの分析では、都道府県をまたいで移動した人は全国平均で、去年の大型連休より34%増えました。新型コロナの影響で中止や延期になっていたイベントも開催されました。人の流れが戻りつつある県内各地の様子を取材しました。
千葉放送局銚子支局記者 岡根正貢
まず最初に取材したのは、旭市の田植え体験会。5月1日、江戸時代後期に農業の技術改革や農村生活の改善に尽くした大原幽学にゆかりのある国指定の史跡になっている田んぼで行われました。米づくりを体験することで、地元住民と交流を図りながら、農業の大切さや自然の豊かさを学んでもらうのが狙いです。
3年ぶりの開催となった体験会には都内や千葉県内などから親子連れなど100人あまりが参加。感染対策のため定員を例年の半数に絞りました。
まず、県の農業事務所の山口結香さんから、イネとイネの適切な間隔は20センチから30センチ。植える深さは2センチで、3本から4本の苗を一緒に植えるよう説明を受けました。田植えは初めてだという人も多くぬかるみに足をとられないように15センチまで育ったイネを広さ1000平方メートルの田んぼに丁寧に植えていきました。
「まっすぐ植えるのは難しかったけど楽しかったです。後ろに下がろうとしたら転びそうになりました。植えた列が斜めになってしまって難しかったです」
「楽しかったです。田んぼでうまく歩くコツはつま先から足を入れるようにすると聞きました」
次に取材をしたのは新型コロナの影響で中止になった成人式にかわって開催された「成人のつどい」。
千葉県銚子市では、去年1月の成人式が緊急事態宣言で中止となり、その後、ことし3月に予定されましたが、今度はまん延防止等重点措置のために延期となりました。当初の予定から1年4か月たった5月3日、大型連休にあわせて「成人のつどい」が開かれ、去年、式に参加する対象だったおよそ530人のうち57人が出席しました。
対象者に送った案内状には体調などを書き込んでもらう通信欄を設け、出席した際に案内状や連絡先を書いたカードを提出してもらい、いすの間隔を1メートルとるなど、感染対策を行ったうえでの開催です。
しかし、すでに晴れ着の写真を撮影してしまったため欠席した人もいるということです。また、中には成人式のために高校生のころから髪を伸ばしていましたが、就職活動が始まってしまったためやむなく短く切ってしまった人もいました。
越川信一 市長は「1年4か月ぶりの祝賀行事となりますが、改めて、ご成人おめでとうございます。皆さんが銚子を愛し、応援してくれることが、銚子の力になります」とお祝いの言葉を贈りました。
「自分たちの年だけ中止になっていたので、寂しい気持ちがあり、ちゃんとお祝いがしたかったです。友だちと積もる話をしたいです」
NHKは、NTTドコモが携帯電話の基地局からプライバシーを保護した形で集めたデータを使い、ことしの大型連休に都道府県をまたいで移動した人の数を分析しました。
その結果、都道府県をまたいで移動した人は全国平均で、東京や大阪など4都府県に緊急事態宣言が出されていた去年の大型連休より34%増えました。
そして、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の3年前、2019年の大型連休と比べると、82%まで戻ったことがわかりました。
東京都からほかの道府県への移動は去年より24%増え、3年前の85%まで戻っていました。移動先を道府県別に見ますと、沖縄県は108%で感染拡大前を上回り、千葉県は90%でした。
では、より「人が戻ってきた」都道府県はどこだったのか。ほかの地域から訪れた人の数を感染拡大前と比べると東京都が95%、神奈川県と埼玉県がそれぞれ92%で、千葉県は86%でした。
一方、大型連休を前に北海道知床半島の沖合で観光船が遭難する事故がありました。この事故を受けて、銚子市の沖合でイルカやクジラを観察する観光船の安全点検が行われました。
銚子海洋研究所では、イルカやクジラの観察を楽しめる定員40人の船を条件が良ければほぼ毎日、運航しています。
船の船長も務める宮内幸雄所長は、安全な運航のため、エンジンや救命胴衣などの道具の点検を運航のたびに、欠かさず行っています。
また、1週間前から天気予報を確認し、一定以上の風速が予想された場合は、その日の運航の中止を検討することにしているということです。
さらに、漁に出ていた漁業者から運航中止を勧められたときや海上で風や波が危険だと感じた場合は、乗客に説明した上で引き返すということです。
連休前には連日満席の予約が入っていましたが、このうち20人がキャンセルになりました。それでも、キャンセル待ちもあって1日2便の運航は満席状態でした。ところが、天候が悪く海の状況がよくありませんでした。出港の目安になる安全基準を順守したことで連休の10日間で運航できたのは2回だけだったということです。
「出航できるかできないか、気象とのやりとりは20年。この仕事は気象が大きくかかわります。知床半島の事故を受けて、無線機や携帯電話など沖合との通信手段の管理が厳しくなるのではないでしょうか」
田植え体験や成人のつどいなど、人が集まる催しを取材するにあたり気になるのがお天気です。初夏を思わせる晴天と思って取材を進めていても、海上では風が強く観光船は出航を見合わせていたことを知りました。宮内船長の「この仕事は気象で大きく変わる」という言葉が印象的でした。