「学生時代の友人たちが結婚ラッシュ!次々と女性側の姓が変わる…」「結局男性は育休取れないし…子どもを生んだら女性がワンオペ育児をするのかな」最近私が感じていることです。
あなたもこうしたジェンダーの話題についてモヤモヤしたことはありませんか?
これらはすべて「社会問題」です。では、変えていくために必要不可欠なのは?
それは政治!
世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では、去年、日本は156か国中120位。その中でも政治分野では147位。国際社会に大きく遅れを取っています。
3月8日は、国連が定めた「国際女性デー」。
みなさんもこの日にあわせて、私たちの住んでいる千葉県の政治分野のジェンダーの現状について少し考えてみませんか?
突然ですが、こんな質問を県内の現職女性市議会議員に聞いてみました。
近藤美保 流山市議会議員「子育ての現場のリアルを伝えることで、市議会では子育て政策に対する理解者が増えました。上意下達、先輩の発言が強い組織の中で、フラットに意見しあえる風土に変わりつつあります」
崎山華英 旭市議会議員「2月に断水が発生したときには、公立保育園が開園するのか当日の朝になっても連絡がなく、対応に困った周囲の親たちの声を担当課に伝えて今後災害があったときには事前に周知するということになりました。こうした子育て世代だからこそ気づける課題を市に伝える役割を担えていると思います」
まず、私たちの生活に一番密接に関わっているともいえる市町村議会を見てみましょう。
千葉県内の市町村議会議員1133人中、女性は212人で18.7%です(2022年3月2日時点)。
全国平均は市区議会議員が16.8%、町村議会で11.3%です(2020年12月末時点)。
割合が一番高いのは白井市と浦安市で40%、一番低いのは長生村で0%です(2022年3月4日時点)。
「冒頭に紹介した2人の市議は、子育て世代の女性が議会に入ることで同世代だからこそわかる課題を議会で共有できると話していましたが、全国の市議会議員の平均年齢は59.3歳で、特に子育て世代の女性議員は少数派です(2020年7月の全国市議会議長会調査)」
みなさんのお住まいの市町村議会はどうでしょうか?
割合の多い順に並べてみました(2022年3月4日時点)。
1 白井市 20人中 8人(40.0%)
1 浦安市 20人中 8人(40.0%)
3 佐倉市 28人中 10人(35.7%)
4 印西市 22人中 7人(31.8%)
5 木更津市 24人中 7人(29.1%)
6 多古町 14人中 4人(28.5%)
6 九十九里町 14人中 4人(28.5%)
8 船橋市 50人中 13人(26.0%)
9 柏市 35人中 9人(25.7%)
10 松戸市 44人中 11人(25.0%)
10 四街道市 20人中 5人(25.0%)
10 酒々井町 16人中 4人(25.0%)
13 袖ケ浦市 22人中 5人(22.7%)
14 富里市 18人中 4人(22.2%)
14 銚子市 18人中 4人(22.2%)
16 千葉市 50人中 11人(22.0%)
17 流山市 28人中 6人(21.4%)
17 栄町 14人中 3人(21.4%)
19 我孫子市 24人中 5人(20.8%)
20 勝浦市 15人中 3人(20.0%)
20 八街市 20人中 4人(20.0%)
20 旭市 20人中 4人(20.0%)
23 市原市 32人中 6人(18.7%)
24 茂原市 22人中 4人(18.1%)
24 長柄町 11人中 2人(18.1%)
24 御宿町 11人中 2人(18.1%)
24 鋸南町 11人中 2人(18.1%)
28 習志野市 30人中 5人(16.6%)
28 大網白里市 18人中 3人(16.6%)
28 館山市 18人中 3人(16.6%)
31 東金市 20人中 3人(15.0%)
32 野田市 27人中 4人(14.8%)
33 市川市 41人中 6人(14.6%)
34 八千代市 28人中 4人(14.2%)
34 君津市 21人中 3人(14.2%)
36 鴨川市 16人中 2人(12.5%)
36 富津市 16人中 2人(12.5%)
36 横芝光町 16人中 2人(12.5%)
39 いすみ市 17人中 2人(11.7%)
39 匝瑳市 17人中 2人(11.7%)
41 南房総市 18人中 2人(11.1%)
42 山武市 19人中 2人(10.5%)
43 成田市 29人中 3人(10.3%)
44 神崎町 10人中 1人(10.0%)
45 鎌ケ谷市 22人中 2人( 9.0%)
46 大多喜町 12人中 1人( 8.3%)
46 芝山町 12人中 1人( 8.3%)
46 長南町 12人中 1人( 8.3%)
49 白子町 13人中 1人( 7.6%)
49 一宮町 13人中 1人( 7.6%)
51 東庄町 14人中 1人( 7.1%)
51 睦沢町 14人中 1人( 7.1%)
53 香取市 22人中 1人( 4.5%)
54 長生村 15人中 0人( 0.0%)
近藤美保 流山市議会議員「議員になってよかったことは、直接ユーザーの声を拾って政策提言し直接ユーザーからフィードバックを得られるダイナミックな仕事を経験できることです。具体的には、子どもが増え続ける流山市で、施設整備の見通しを立てるために、国の基準である3年の児童推計だけでなく6年の推計を作るべきだと提言しました。そして、娘にママが議員になってよかった!と言われたこともうれしかったです。
流山市議会では新人でも活躍できるような仕組みが整いつつあります。そういう仕組みや風土がない場合は自治体の議員同士がつながってノウハウを共有していくことも重要だと思っています」
崎山華英 旭市議会議員「旭市では不審者情報メールがなぜか3大キャリアのメールアドレスでしか受信できなかったので、担当課に伝え、PCメールでも受信できるようになりました。小さい子どもを持つ親は気になる情報だと思います。30代の女性議員は私1人で、ロールモデルは身近にいないのですが、オンラインで他自治体の同世代の女性議員とつながって、議員としての仕事を学ぶようにしています」
中央学院大学 皆川満寿美准教授「政府の世論調査の結果を見ると、男女で力を入れるべきだと思う政策に違いがあり、女性議員が少ないと、女性が求める政策の優先度が下がると考えられます」
では、首長はどうでしょうか。
54人中、女性は4人です(君津市、鎌ケ谷市、柏市、多古町)。
去年から今年にかけて立て続けに3人の女性首長が誕生しました(2022年3月2日時点)。
千葉県議会の女性は89人中12人で割合は13.4%です。(2022年3月2日時点)
これは全国平均の11.6%(2021年8月時点)と比べると少し高いですが、依然低い水準です。
ちなみに一番割合が高いのが東京都議会で32.3%、一番低いのが山梨県議会で2.8%です。(2021年8月時点)
それでは、千葉県選出の国会議員はどうでしょうか。
「去年の秋に衆議院議員選挙がありましたが、県内13の小選挙区と比例代表の南関東ブロックともに、女性衆議院議員は誕生しませんでした。
13の小選挙区にはあわせて39人が立候補しましたが、そのうち女性は3人しかおらず、立候補者の段階から女性の数が少なかったことがわかります。
参議院議員も、千葉県選挙区では6人中1人です」
「そうなんです。このため2018年に、国政選挙などで男女の候補者の数ができる限り『均等』になることを目指す法律(政治分野における男女共同参画の推進に関する法律)ができました。
去年は、この法律ができてから初めての衆議院選挙だったわけです」
去年の選挙のあと、私は自民党県連と立憲民主党県連に聞いてみました。それぞれの回答がこちらです。
自民党県連「女性議員が活躍しやすい環境の整備の遅れ、また女性議員や候補者に対するハラスメントが存在し、政治への女性参画にとって障壁の一つとなっているという認識はある」
立憲民主党県連「性差にかかわらず、立候補する際のハードルが、収入源を確保しながらの政治活動を続けるという意味で高い。また当選後の国会活動や地元活動と、特に子育て中の女性には、家庭との両立がハードである。本来ならそのようなことについて社会全体で支える仕組みがうまく働けば良いのだが、男性の育児休暇の取得率が直近でおよそ12%にとどまるなど、うまく働いているとは言いがたい」
先に紹介した政治分野における男女共同参画の推進に関する法律の第4条には、政党その他政治団体が、
▽男女の候補者数の目標設定
▽候補者の選定方法の改善
▽候補者となるにふさわしい人材の育成
▽セクハラ・マタハラ等への対策
に自主的に取り組むように努めることが明記されています。
「あくまで努力目標のこの法律。どの程度取り組まれているのでしょうか?
私は各政党の千葉県の組織に、候補者数の目標設定やセクハラ・マタハラ等への対策の有無について聞きました」
杉山記者「各政党の組織によって、取り組み状況にはばらつきがあることがわかりました。また、女性候補者を増やせない理由として『すでに選挙区に現職衆議院議員や選挙区支部長がいることから、現状で候補者を増やすことは考えていない』と答えた政党組織もありました」
「もちろん単純に増やせばよいという話ではないと思っています。性別にかかわらず資質がある人が議員になるべきだと思いますが、例えば世論調査の結果を見ると、社会保障や雇用対策については男性よりも女性の方が力を入れるべきと答えるなど、性別によって重視する政策の傾向が異なることもあり、女性議員の数が圧倒的に少ないと、人口のおよそ半分にあたる女性のニーズが反映されにくいという現状もあるのではないかと感じています」
杉山記者「去年の衆議院選挙に県内の選挙区で政党から立候補した2人に話を聞いてきました」
竹内千春さん(立憲民主党から立候補)「女性が立候補するのに3つ壁があると感じています。1つ目は現状、女性議員が少ないので、立候補しようとするとみな新人となり、知名度の低い新人が現職に挑むという壁があります。2つ目は、意思決定の場が男性ばかりという環境に、女性も含めて違和感を感じなくなっている部分があり、女性自身が立候補を考えにくいという問題があります。3つ目は、育児や介護はいまだに女性がやるのが普通と考える人が多く、政治活動で街頭に立つという時間が、男性に比べると少ない傾向にあります」
浅野史子さん(共産党から立候補)「政治家に限りませんが、育児介護など家庭的な責任が女性に重くのしかかっている現状がありますよね。子どもがまだ小さいとか、介護をしている親や親戚がいるとか、そういう女性は立候補しにくいですよね。私は3人の子どもを育てながらの選挙で、選挙中は、支援者の人たちが毎日手作りのおでんや豚汁、野菜炒めなどを持ってきて子どもたちに食べさせてくれましたので、なんとか乗り切れました。多様性の尊重と言われますがブームに終わらせるのではなく、政党がきちんと掲げるべきだと思います」
これまで千葉県の政治分野のジェンダーの現状を見てきましたが、まだまだ女性議員は少数派で、特に国政では女性候補者を増やす段階で大きなハードルがあることがわかりました。では、どうすればよいのでしょうか。ジェンダー研究の専門家に話を聞きました。
中央学院大学 皆川満寿美准教授
「過去の調査では、女性は男性よりも政治家になりたくないと考える人が多く、政治との接触も男性に比べて少ない。その結果、女性たちが知らない間に、男性の関心が高い政策が優先的に実現されてきたのではないかと思います。
政治や政治家への女性の忌避感が強いままだと、悪循環を断ち切れません。女性議員が今のように少ないままでは、女性議員自身が女性の困難を政治の課題として口にしづらいです。女性議員を増やすためには、今以上に女性たちがつながりあって、悩みを語り合い、共有することが必要です。
そして、女性が選好する政策は、社会保障、高齢社会施策、雇用・労働や教育など、毎日の暮らしに直結しているので、その効果は女性のみに及ぶものではないことも知られてほしいと思います」
前回の衆議院選挙のあと私が複数の政党に尋ねたところ、女性候補者数の目標設定や、セクシャルハラスメント・マタニティハラスメント等に対応する体制がない政党もあり、候補者均等法の努力目標が達成されていないことが分かりました。これは県の組織だけでなく、政党全体で考える課題だと思いますが、少しでもジェンダー平等を進めるために取り組んでいってほしいと思います。
また、ジェンダーに関する勉強会で出会った若い世代の女性から「女性は女性議員が増えてほしいと特に思っていない」と言われたことも心にひっかかっています。女性議員だからといって女性が求める政策を実現してくれるとは限りませんが、私が冒頭に書いたように日頃感じているモヤモヤが改善されるためには、まずは女性が抱える問題について取り組む政治家を増やすことが不可欠です。
私自身、ジェンダーの格差を意識し始めたのは記者になってDV問題などを取材し始めてからです。こうした身の回りの課題が、ジェンダーの格差が原因だと多くの人が認識し、政治にも反映されることが大事だと思います。