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シュモクザメでシューマイを 大原漁港の新土産 千葉・いすみ市

  • 2022年01月28日

「ハンマーヘッドシャークって分かります?たくさんゴミになっちゃってるらしくて。それでシューマイを作ろうとしてるんです」
以前お世話になった取材先から連絡が来て、耳に入ってきた強烈なことばたち。ハンマーヘッドシャーク・・・頭の形が特徴的なあのサメか。それがゴミになってて、シューマイをつくる?何が何だかさっぱりだが、なんとなく面白そうだと直感が働く。
捨てられてしまっているサメを地域の新しいお土産に。民間団体と地元の人たちが協力して開発に取り組む様子を取材しました。

漁港のやっかい者 シュモクザメ

舞台は、千葉県南東部の太平洋側にある、いすみ市の大原漁港です。伊勢エビやマダコなど、たくさんの海の幸が水揚げされます。11月のこの日は網いっぱいのフグが港に。てっちりやてっさにしたらおいしそうだな~と、記者の私は思わずジュルリ。

おっと、取材の目的を忘れてしまいそうでした。今回の主役はこちらです。

トンカチのように横に伸びた頭が特徴の、シュモクザメです。その頭の形から、ついた英名は「ハンマーヘッドシャーク」。恥ずかしながら私、生のサメは水族館以外で初めて見ました。よく見ると意外にかわいい顔をしていますが、触るとさめ肌と言われるだけあってざらざらしています。

このシュモクザメ、この大原漁港で「やっかい者」として扱われているというのです。なぜなのでしょうか?

大原漁港では、市場で買い手がつかない魚、いわゆる「未利用魚」と呼ばれる魚も一緒にあがりますが、このシュモクザメもその一つだそうです。網にかかるとタイやヒラメなど、他の魚にかみついたり、そのざらざらとした肌で傷をつけてしまって商品価値を下げてしまうということなのです。また、サメの廃棄処分のため、専門業者へ依頼するにも費用がかかります。こういうことから「やっかい者」となってしまっているということなのです。

地元の女性たちがサメを活用

しかしこのシュモクザメ、実は網にかかる未利用魚のサメの中でも一番臭みが少なく、食感もよいそうなのです。地元の女性たちは、この捨てられてしまうシュモクザメをなんとか活用できないか?という思いから、シュモクザメを使ったある加工品を作っています。

「じあじあ」

それがこの「じあじあ」です。シュモクザメのすり身に野菜や味噌、醤油、ダシを混ぜて練り、油であげたさつま揚げのようなもの。地元の食堂や、週に1度開かれる港の朝市で販売するなど、地元の人たちにも好評です。

しかし、じあじあに使われつつも、依然処分されることもあるシュモクザメ。さらなる活用の道として、何かないだろうか。
この現状に目をつけたのが、地域の課題解決に取り組む東京の民間団体です。この団体の発案で、地元の女性たちや市と協力し、今回の取材の目的である、シュモクザメを使った新たなお土産作りが始まりました。

シュモクザメでシューマイを

そのお土産として選ばれたのが・・・

シューマイです。
「シューマイの具を包むという行為を通じて、子どもたちから老若男女まで、地元の多くの人の輪が広がってほしい」という願いを込めて民間団体が考案しました。
初めての試作会に取材に行くと、漁港には民間団体のスタッフや地元の女性たち、それに市の職員も集まっていました。サメの調理方法を熟知している地元の女性たちのアドバイスを受けながら、みんなで協力して調理していきます。

地元の女性たちが長年の経験から、シュモクザメをおいしく調理するために様々な食材をそろえました。

「油と卵が入ったマヨネーズは、シュモクザメのすり身に混ぜ込むと、コクが出ます。あとはタマネギは甘みをだすとか、ショウガで臭みを取るとか、それぞれの役目があって。長芋は、タネがバラバラにならないようにつなぎにするんです」

そして今回のお土産作りは、地元に根付いたものでかつ、これまでにないシューマイを目指して、チャレンジ精神満載な食材が使われます。「千葉ならでは」を具材に使うのはどうだろう、ということで選ばれたのは・・・

千葉の特産品、落花生です!これこそ海と大地のコラボレーション!

どさっと入れて混ぜ込んで、皮で包んで、蒸し器に入れて。火にかけたら、後はしばらく待つのみです。時間もお昼時で、皆さんおなかを空かせています。
「そろそろできあがりますよ!」と声がかかり、カメラマンと一緒に調理場へ。試作品との初対面です。

美しい、つやつやのシューマイです。付け合わせのパプリカも映えます。
しかし気になるのはその味。いくら見栄えが良くてもおいしくなければ意味がありません。ということで、シュモクザメの特性シューマイ、私がいただいてみることにしました!食べてみると・・・

シューマイを食べる坂本記者

ん~!山芋やマヨネーズのおかげか、具の食感もなめらかで、味もしっかりついています。落花生のつぶつぶとした食感がアクセントにもなって、とてもおいしいです。止まらず、何個も食べてしまいました。皆さんの反応は?

「落花生入れると食感がまた違いますね。サメ自体が後味としてしっかり残るというか、臭みがなく、すっきりほわっと消えていく。非常においしいです」

「薄味でおいしい、ダシもでてます。この魚(シュモクザメ)を使ってみて、本当に大正解だったと思いますよ。崎陽軒にも負けねえと思います」

大好評だった落花生入りのサメシューマイ。次に抜擢された食材は、地元でとれたタコとのりです。材料を変えて、試行錯誤していきます。蒸し上がったシューマイがこちら。

てっぺんに乗ったタコがかわいいですね。さて味の方は…。

「ふわっという食感のあとにくる、たこの歯ごたえがアクセントになっておいしいです。のりの香りがあとからフワッときて、食べてて変化があるから面白い」

「ふわふわしておいしいけど、香りが強いのりがあればもっと入れてもいいかも。ガツンとのりの風味が来たら、もっとおいしくなりそう」

どうすればもっとおいしくなるかで話し合いながら、参加者みんなで試作会での食事を楽しんでいました。私は結局、シューマイを20個ぐらいいただきました。

いすみ市は大歓迎

いすみ市の担当者は好意的に受け止めています。今後の完成度によっては、いすみ市で漁獲、生産された優良な加工品として、「いすみブランド」の認定も考えたいとしています。

いすみ市水産商工観光課 荘司義弘 課長

荘司課長「元々捨てられていた魚を有効活用して、新たに加工品として生まれ変わらせる意味は、市にとって非常に大きいと思っています。今後、この地で商品を作っていただくようなことがあれば、市としても応援をしていきたいと考えています。初めて食べさせてもらったんですけど、サメってわかんないですね。あっさりしてて、非常においしかったです」

シューマイに込めた想い

今回シューマイ作りを提案した一般社団法人「Tsumugi」の代表、石和田直孝さんは、次のように話します。

石和田さん「たまたま網にかかったサメが捨てられちゃって、そのまま命が無駄になっていると聞いたので、そこでなんとかできないかと思いました。せっかくなら、新しく地域のお土産を作り、地元の人たちのもとに還元していくという流れが一番良いと思ったので、今回のシューマイ作りに繋がりました。調理方法など、やはり自分たちだけでは気づかないところがたくさんあるので、地元の人たちに話を聞きながら取り組みましたが、100年続くようなお土産、自分たちで作ったブランドにしていただきたいと思います」

石和田さんは全国の子ども食堂の運営にも携わっていて、ゆくゆくはこのシューマイを全国の子どもたちに食べてもらうなど、子どもたちへの支援にもつなげていきたいとしています。

一般社団法人「Tsumugi」代表 石和田直孝さん

石和田さん「もし商品化が決まれば、売り上げの一部を全国の子ども食堂や、そういった支援を必要としている場所に回したいです。地域の課題を解決すると同時に、これから生まれてくる子どもたちや、地元の未来のためにどういう風に想いをつなげていくかっていうのが、僕たちの役割かなと思っています。シューマイを通していろんな輪が広がっていってほしいと、心から願っています」

来月2月には、いすみ市でシューマイの試験販売が行われる予定だということです。

取材後記

「やっかい物」とされている魚でも、その魅力を引き出して知ってもらえば、地域の宝になる。アイデアや工夫次第で、ゼロがいくらでも1になるということを強く感じた取材でした。何より、民間団体や地域の人たちが一緒になって、みんな仲良く笑顔でシューマイを作っている姿が印象的でした。「シューマイを包むという行為を通じて、人の輪が広がってほしい」という思いがまさに形になったのではないでしょうか。コロナ禍で暗いニュースも多いですが、今回のようなほっこりとしたニュースもどんどん発信していきたいと思います。シュモクザメシューマイ、機会があればぜひ食べてみてください。

  • 坂本譲

    千葉放送局 記者

    坂本譲

    2020年入局。警察・司法を経て現在、千葉県政を担当。好きな海産物はホタテ。

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