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新型コロナ 第5波 保健所の教訓 第6波への備えは 千葉・松戸

  • 2021年12月17日

新型コロナウイルスの第5波。千葉県では一時、自宅療養者が1万人を超え、8月と9月に6人が亡くなりました。当時、患者の健康状態を確認する保健所は業務がひっ迫し、最大で一週間、患者に連絡できない事態になっていました。保健所で何が起きていたのか、第6波に向けてどう備えようとしているのか、取材しました。

自宅療養した男性は

ことし8月、新型コロナに感染し、自宅療養をしていた松戸市の43歳の男性です。

息子たちの寝室に自らを隔離し、一人、息苦しさに耐えていました。これまでに経験したことのないような、肋骨が内臓を刺すような体の痛みがあったといいます。

保健所が毎日、自宅療養者に体調の確認を行う「健康観察」。連絡が来なかった日もあったといいます。

男性「基本的には毎日来てましたけれども1日2日は来ていないと思います。私は苦しんでいるからそういう余裕はないけど家族は連絡来ないねという話はしてましたね」

血液中の酸素の数値が一時88%まで下がったとき、救急車を呼びたいと保健所に電話をしましたが、「常に数値が90%を下回っていないと呼べない」と言われ、かないませんでした。

男性「自宅療養は、急変したら手遅れになるというリスクと隣り合わせだと思います。病床が足りないのは仕方ないと思うので、入院ができないまでも息苦しくなったりつらい症状になったりしたときには、病院の先生に見てもらえるようになったほうがいいと思いました」

結局、男性は入院できず、14日間、自宅で療養生活を送りました。

そのとき、保健所は・・・

健康観察を行っていた会議室

第5波当時、保健所はどのような状況だったのでしょうか。
県内でも感染者が多かった東葛地域の松戸市、流山市、我孫子市を管轄する松戸保健所が取材に応じました。

当時松戸保健所では、濃厚接触者調査や健康観察にあたっていましたが、増加する感染者への対応業務は日ごとにかさんでいきました。終電まで働く職員も多く、残業時間が月に80時間を超えた職員は、8月はおよそ80人の職員のうち、23人に上りました。

壁に貼られた「発生届」(松戸保健所提供)

医療機関で陽性者が確認されると、保健所に送られる「発生届」。
ピーク時は連日300人近く、夜9時を過ぎてから届くこともありました。

夜遅くまで、重症化リスクのある人がいないか見落としがないよう、1枚1枚壁に貼って連絡の優先順位を決めていました。

保健所は通常、発生届が届くと患者に連絡し、行動歴や濃厚接触者調査などの「積極的疫学調査」を行います。勤務先や過去の病気など調査項目が多く、その日のうちにすべての調査を終えて全員の健康観察に入るのは難しかったといいます。

保健所は患者全員と1回目の連絡「ファーストタッチ」を取ることを最優先しましたが、患者の数が急増したピーク時には、2回目の連絡が4、5日できないケースもありました。

池田紀子 松戸保健所次長

池田次長「急激な患者さんの数が増えたために、調査はもちろんですけど、健康観察ですとか、患者さんの入院調整ですとか、外来調整、患者さんの搬送、そういったものが一気に膨れ上がってしまったので、なかなかすべて即日にというわけには、いかないのが現状でした。皆さん不安で待っていますので、少しでも早く連絡をして安心感を与えたいと業務にあたっていました」

応援の遅れ

また松戸保健所では、日に日に増える感染者に対応するため、県や市から応援職員に来てもらっていましたが、これまでに経験したことのない感染者の急増を想定できず、今振り返ると応援態勢には遅れが生じていたといいます。

松戸保健所では、ことし始めの第3波の経験から、1日に届く発生届が30人分を超えると、保健所だけのマンパワーでは対応できないため、応援職員に来てもらうことになっていました。

記録によると、 

【1日あたりの発生届】
7月13日  30人を超える 
   27日  100人を超える
8月10日  256人に

一方、 

【千葉県からの応援職員態勢】
8月 1日  18人 
     14日  31人 
     20日  47人

態勢が整えられたのは、ピークを超えてからでした。

このため、千葉県では、あらかじめ保健所がひっ迫したときに応援職員を迅速に派遣できるよう、今月から応援に派遣する職員を対象に、保健所業務の研修会を行っています。

第6波への対応は

千葉県は、第6波に備えて独自の対応策を打ち出しました。

まず、新型コロナの検査を受けた人に緊急連絡先や持病などの情報をインターネットで自ら登録してもらうシステム「イマビス」をつくりました。

服用薬や基礎疾患などの情報を、医療職ではない応援職員が聞き取るのに時間がかかっていたといいます。このため、検査を受けた本人にスマホなどでそうした情報を入力してもらうことにしました。これらのデータは保健所に送られ、これまで聞き取りに費やしていた時間を短縮できます。

保健所では、連絡がつかない人には、保健所職員が患者のもとに安否確認のために訪問することも行っていました。連絡がつきやすいように、イマビスには複数の連絡先を登録してもらえるようにしました。

パソコンやスマートフォンに詳しくない人もいるため、これまでどおり保健所が電話で聞き取ることもするということですが、千葉県はこのシステムを患者自身にあらかじめ入力してもらうことで、保健所の業務の負担軽減につなげていきたいとしています。

また、「自宅療養者フォローアップセンター」を新たにつくりました。
ここでは専門のスタッフを雇って、軽症患者の健康観察を行います。

それ以上に容体が急変するリスクの高い患者については、専門性の高い保健所の職員が対応に集中できる体制を作りました

千葉県 健康福祉政策課 岡田慎太郎課長

岡田課長「この夏の経験を踏まえて県としては、保健所が患者に連絡を取れる体制を作り、必要な方については、入院もしくは宿泊療養施設に入れるような体制をしっかりとつくっていかなくてはいけない」

取材後記

当時、直接患者に連絡をしていた保健所次長の「少しでも早く患者に連絡を取りたい、症状の悪い方を医療につなげたい、命を守りたいとふんばった」という言葉が印象に残っています。
第5波のように感染者が急拡大した場合、保健所で対応できる業務量は限られているため、事前に応援職員の態勢や、自宅療養者が増えたときの往診の体制を確認しておくことが必要です。
また、県全体の新型コロナ体制を適切に運用していくためには1人1人の協力も欠かせないと感じました。症状が出ている時は大変ですが、県が今回導入したシステムに事前に基礎情報を入力しておくことで、電話で説明する手間も省け、保健所業務のひっ迫をおさえることにもつながります。感染状況が落ち着いている今、第5波の教訓を学ぶことが大切だと思いました。

  • 杉山加奈

    千葉放送局 記者

    杉山加奈

    松戸市など東葛地域の課題を取材

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