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魅力度ランキング最下位から脱出を 千葉県山武市

  • 2021年09月21日

取材のきっかけは、私の携帯にかかってきた1本の電話でした。以前、地元の海岸が美しいビーチとして国際的な認証を得たという明るい話題でお世話になった千葉県山武市の職員の方からでした。しかし今回の電話は一転して・・・・「実は、山武市が魅力度ランキングで最下位になったんです」。どういうことなのか、取材することにしました。
「山武市」、あなたは読めますか?

「魅力度ランキングで最下位になったんです」

取材のきっかけは、私の携帯にかかってきた1本の電話でした。

「山武市商工観光課の木村と申します。新たなプロジェクトを始めるので取材していただけませんか」

山武市商工観光課 木村治雄さん

私は2年前、山武市の海岸が質の高い美しいビーチとして国際的な認証を得たというニュースを取材しました。その縁で、当時の担当者の後任となった木村さんが連絡をくれたのです。

木村さん

「実は、山武市が魅力度ランキングで最下位になったんです」

金子記者

「どういうことなんでしょうか?」

民間の調査会社「ブランド総合研究所」が全国1000の都市を対象に認知度や地域のイメージなど84項目についてインターネットで調査を実施。その「魅力度ランキング」の去年の調査で、山武市は初めて最下位に転落したというのです。

木村さん

「実は山武市はおととしまで2年連続999位だったんですがとうとうワースト1位になったんです。最下位からの脱出を目指して、街の魅力を動画で発信するプロジェクトを開始します。コロナ禍で観光客減に悩む市内の商工業者のほか、近くの成田空港を拠点とする客室乗務員や高校生にも参加してもらう予定なんです」

電話しながら私は「面白い!」と思い、まだデスクにも相談しない段階で、即答しました。

金子記者

「木村さん、ぜひ取り上げたいと思うので、よろしくお願いします」

さん「ぶ」しと言ってしまうことも

山武市 公式YouTubeより

ご紹介したように大平洋に面した浜は「美しいビーチ」として国際的に認められ、サーファーも多く訪れます。内陸部には田園風景が広がる自然豊かな街です。そんなまちがなぜ最下位なのか。

そんな山武市のことを取り上げるにあたり、市民のみなさんに話を聞いてみました。

「最下位なのはPRが下手なんじゃないですか。住んでる俺でも「さんぶし」って言っちゃうことあるもん。昔、「さんぶぐん」だったから、ややこしいの。でも穏やかで住みやすいところだよ」

山武市(さんむし)は山武郡(さんぶぐん)の一部だった4つの町と村が合併して生まれた市。「ぶ」が「む」に変わったのは、住んでいる人たちにとっても紛らわしいようです。「やまたけし」と間違えられることもあるそうです。

「私は隣の市から嫁にきて山武市に入ったんですけど、緑は多いし、人情もあるし、最下位というのはちょっと許せない。交通は不便だけど、近所に一声かければ助けてくれるし、朝、小鳥の声で目が覚める。いいところですよ」

山武市の魅力をPRする動画を撮影

案内役を務めるのは客室乗務員の前川優帆さん

市内の乗馬クラブやランチスポットを紹介する動画の撮影日。木村さんが紹介役として依頼したのは、近くの成田空港に拠点があり、フライトの回数が減った日本航空の客室乗務員でした。ふだんは国際線などで乗務している前川優帆さんが、オーナーの手ほどきを受けながら、馬のえさやりや手入れ、そして乗馬を楽しみました。馬の鼻に手をあててあげることが最初のあいさつになること、ここの牧草は少し甘みがあって、馬たちがよく食べることなど、興味深そうに聞いていました。

地元で活動するカメラマンが撮影

ほどよく体を動かした後には、新鮮な魚介類がうりのレストランで、ランチを堪能している様子を撮影していました。撮影を担当しているのも市内を拠点に活動するカメラマンです。

日本航空 前川優帆さん

前川優帆さん
「客室乗務員になったときには、まさかこんなことするとは思っていなくて、今も不思議なふわふわした気持ちもあります。フライトは減っているんですけれど、新たな挑戦ができ、ありがたいです。もともと山武市のことは名前しか知らなかったのですが、魅力度ランキング最下位と聞いて、逆にどんな街なのだろうと興味を持ちました。非日常と癒やしがあって、暖かい街なので、ぜひいつか行ってみたいと思ってもらえるよう動画を通して伝えていきたいです」

乗馬とランチシーンの撮影風景を取材したあとは市役所で、発案者の思いを聞くべく、私に電話をくれた木村さんを取材しました。これまでの取り組みについて話を聞いたあと、山武市民でもある木村さんに心の内をたずねました。

金子記者

「最下位という結果知って本当のところどうでしたか?」

木村さん

「ひとつのチャンスと前向きにとらえていて、逆に今までそういったPRというのは積極的にしてこなかったので、ちょうどいい機会だというところで、PRをうまくできるようにしていかなくてはいけないなと」

金子記者

「住んでいる木村さんからもPRをお願いします」

木村さん
「ええっと・・・・う~ん・・・」

よりよいことを言おうと考え込む木村さん。木村さん、そこ、即答するところですよ!と心の中で思いながらしばらく待った末、出てきたのは・・・。

木村さん

「何より自然ですね。東京から遠くないんですが、自然がそろっていて野菜がすごくおいしい。海のものもすごくおいしい。土がいいんですよねー、味が濃いんです。普段食べててもそれは違いがわかりますので、ほかのと食べて、違うなあと実感するから、たまたま来て食されるとインパクトがあると思います」

「土か!」と心の中で突っ込みながらも、実感のこもったコメントだな、山武の野菜、食べたいなと思いました。

地元の高校生たちが演奏

県立成東高校 吹奏楽部

動画の中で流れる音楽は演奏を披露する機会が減った市内にある県立成東高校の吹奏楽部が担当しました。ちなみに、木村さんの母校です。動画を見てイメージを膨らませてから、演奏する部員たち。息の合ったパワフルな演奏が華を添えています。

淺野和音さん

淺野和音さん
「コンクールとかコンサートとか演奏の機会が減って残念な思いをしている中で、楽曲提供という形で山武市に貢献できるのはすごくうれしいことです。素敵なところがいっぱいあるのでその風景が映える演奏を意識しました」

最下位から脱出し、次に目指すのは?

この動画プロジェクトのお披露目会には、松下浩明市長も出席しました。

山武市 松下浩明市長

山武市 松下浩明市長
「おととしの台風の打撃から前を進み始めた矢先に新型コロナがあり、さらに魅力度ランキング最下位という不名誉な発表で心を痛めるという雰囲気になっている中で、市民が誇りを持てる動画になっていると思う。ひとりでも多くの方に魅力を感じてほしい」

最後に、今年度の魅力度ランキング、目指す順位を市長に質問してみたところ・・・

松下市長

「1番と言いたいけれど強気と思われても・・これ以上、下はないですから」

えっ。「もちろん1位です」という回答が返ってくるのかと思っていたら、なんと控えめな回答なのでしょう。会場は笑いに包まれました。こういうところが魅力なのかなと取材しながら感じました。みんなが市のことを応援したくなる、そんなプロジェクトであり、山武市の人たちでした。

取材後記

この話は、9月15日のNHKの総合テレビ・首都圏ネットワークで放送しました。木村さんはじめ、取材でお世話になったみなさんが、放送当日、新聞のテレビ欄に予告として出ているのを私よりも早く見つけて盛り上がってくれ、放送後にもとても喜んでくれました。その姿を見て、私も少し街おこしの役に立てただろうか、とうれしかったです。がんばっている千葉県内の人たちをこれからも探したいと思います。(千葉放送局 記者/金子 ひとみ)

  • 金子 ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子 ひとみ

    千葉県政などを担当。新型コロナ収束後、山武市に家族でイチゴ狩りに行き、野菜を買って帰るのを楽しみにしています。

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