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千葉台風15号から2年「停電で熱中症」遺族が語る

  • 2021年09月13日

千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号から2年。当時、千葉県内では停電が2週間以上続きました。市原市でビジネスホテルを経営していた男性(当時66)が熱中症の疑いで亡くなりました。夫が守ってきたホテルを残そうと、経営を引き継いだ妻の思いを取材しました。

停電による熱中症の疑いで亡くなる

亡くなった大浜芳満さん(当時66)

2年前の台風で亡くなった大浜芳満さん(当時66)です。長期の停電による、熱中症とみられています。自宅で3回忌が執り行われました。妻のうのさん(51)は、2年経った今でも悔しい思いを抱えています。

妻のうのさん(51)
「まさか、こういうことで亡くなるなんて考えたこともなかったです。急なことだったので本当にショックでした」

クーラー使えず トイレで倒れる

台風によって市原市でも多くの住宅が停電しました。大浜さん夫婦の自宅も、クーラーが使えなくなり、翌日の朝、室内は30度以上になっていました。芳満さんには、心臓の病気やぜんそくの持病があり、ベッドの上でつらそうにしていたといいます。

自宅の隣で経営していたビジネスホテルの電気も止まりました。芳満さんは、自治体からの防災無線で「停電はまもなく解消する」というアナウンスを聞き、うのさんにこう話したといいます。

大浜芳満さん(当時66)
「頑張るから大丈夫だよ、俺は自宅にいるからお客さんの対応して」

うのさんは、ホテルに向かい、40人ほどの宿泊客の対応に追われました。夕方すぎ、帰宅して、懐中電灯をつけて家に入ったところ、芳満さんはトイレで倒れていました。搬送先の病院で、まもなく死亡が確認されました。

妻のうのさん(51)
「ずっと悩んでいて、ホテルのことなんか全部投げて、夫のことを対応すればよかったです。両方やろうと思った私が、悪かったのかなとも思います」

ホテルをなんとか残したい

うのさんに残されたのは、およそ20人の従業員の生活と、ホテルをリニューアルさせた時の借金。それらをすべてひとりで背負うことになりました。

20年以上、夫婦で切り盛りしてきたホテルをなんとか残したい。台風で壊れた設備を修理し、経営が軌道に乗ってきた矢先。新型コロナウイルスが猛威を振るいました。ホテルの客足は、通常時の3割にまで落ち込みました。それでも、うのさんは、芳満さんが残したホテルを守り抜きたいと考えています。

妻のうのさん(51)
「ホテルは、今コロナがあって大変な時ですが、それはまた乗り越えて頑張って、私が死ぬまでちゃんとやろうと思っています」

取材後記

妻のうのさんはこの2年、涙ながらに夫の芳満さんのお話をしてくださったのですが、その中でも、「停電による熱中症で亡くなるとは想定していなかった」という言葉が、非常に印象的でした。台風というと、風や雨などの被害を思い浮かべる人も多いと思います。しかし、台風15号で、長期の停電でも、体が弱い人などが命を失うような事態になることを思い知らされました。うのさんは、多くの人に熱中症の怖さを知ってもらい、災害があったときはなるべく暑さを避けるようにして、芳満さんと同じように命を落とすことがないようにしてほしいと話していました。

  • 松尾愛

    千葉放送局 記者

    松尾愛

    2013年入局 宇都宮、金沢をへて、現在は千葉局で警察担当。 ALSなどの難病問題のほか、コロナ関連では医療従事者なども取材。2013年入局 宇都宮、金沢をへて、現在は千葉局で警察担当。 ALSなどの難病問題のほか、コロナ関連では医療従事者なども取材

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