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新型コロナ 自宅療養者から要請急増で救急ひっ迫 千葉・船橋

  • 2021年09月07日

新型コロナウイルスで、自宅で療養する人の症状が悪化し、搬送する医療機関がすぐに決まらないケースが相次いでいます。その間、代わりに救急車の車内で長時間にわたって酸素吸入を行うなど、消防の救急隊にかかる負担は深刻になっていて、救急隊員は「対応が遅れ、助かる命が助からなくなることもある」と懸念しています。千葉県船橋市の消防局を取材しました。

船橋市消防局 指令センター

8月中に船橋市消防局にあった実際の通報です。

指令「消防です、火事ですか、救急ですか?」

通報男性「コロナで9日間ずっと40度出てて、パルスオキシメーターで90切ってるんで(咳)。あと、たんに血が混ざってるんですよ」。

自宅療養中の30代男性からのものでした。
私が指令センターを取材した、9月1日の30分あまりの間にも、ひっきりなしに通報がかかってきていました。

先月25日までの1か月で、船橋市消防局にあった自宅療養者からの救急要請は213件と、前の月の4倍以上にのぼったといいます。

 

救急車内の担架

なかでも、搬送先がなかなか見つからず、救急車で待機する間、救急隊が長時間にわたって患者の処置にあたるケースが増えているといいます。

こちらも、8月中に自宅療養中の50代男性の家族からあった通報です。

指令「いつごろからどうされたんですか?」

家族「あまり食事もしないし、お水だけ飲んでるみたいな感じで」

指令「意識はあるんでしょうか?」

家族「どんどんなんか悪くなっていくような気がするので・・・息づかいはあんまりよくないですね」

夜10時ごろに救急隊が駆けつけると、男性は、39度をこえる発熱があり、血液中の酸素の値も70%台に低下していたそうです。

救急隊は、男性にすぐ酸素を投与しますが、なかなか受け入れ先が見つかりません。
用意していた酸素が足りなくなり、男性を乗せたまま、いったん消防署に戻って酸素を補充しました。

20か所の医療機関に照会した末、搬送先が決まったのはおよそ4時間後です。

その間つきっきりで患者の対応にあたる救急隊の負担は、深刻な状況になっています。
船橋市消防局の松岡救急課長は、次のように話してくれました。

松岡利満 救急課長「受けてくれる病院を見つけるまで10件20件、病院の問い合わせをする必要があるので、そこが今一番厳しい」

こちらは、指令センターのモニターです。赤い画面は、救急車が出動中であることを示しています。

この消防局では、17の救急隊が活動していますが、すべてが同時に出動し、市内に出動できる救急車が1台もない事態が、先月、25回発生したといいます。

消防局では、一時的に市内に出動できる救急車が1台もない状況で、通報があってもかけつけられないのではないかと懸念しています。

船橋市消防局 松岡利満 救急課長

松岡 救急課長
「時間との勝負の疾患でも遅れてしまって、助かる命も助からない、そういったこともあるのではないかということを非常に懸念しています。今、救急がひっ迫している状況を少しでも改善するには、感染者の数を減らしていくしかないと思います」

千葉県では、搬送先が見つからない患者に酸素吸入などを行う「入院待機ステーション」が、5日に千葉市内に1か所、開設されました。県では、感染者の多い地域にもう1か所、設置する予定です。救急隊の負担軽減にもつながることが期待されています。

取材後記

最近、家の近くの消防署の前を通るたび、子どもたちが「消防車とはしご車がいるね、救急車はいないね」と言っていました。「そうだね」と軽く返事をしていましたが、考えてみると、常に出動しているから署に止まっていることはなかったのです。感染者の急増で病院や保健所の危機的状況は認識していたつもりですが、現場で7時間も対応したり、30回も40回も病院に電話をしたり、救急隊のひっ迫度合いも相当でした。受け入れ先が見つからないなどで自宅に戻ってもらうこともあり、松岡課長は「救急隊は搬送を生業としているので、『目の前の患者さんを運ばず置いてくる』ということにかなりの葛藤を抱えている」と漏らしていました。今回、船橋市消防局は、「この大変な状況を市民にわかってもらう必要がある」と取材に応じてくれました。「5分で来い!」と通報電話越しに怒号を浴びせてくる人の相手をしたり、搬送を終えたら署に戻ることなくすぐ次の現場に向かったり、文字通りハードな仕事を淡々とこなすプロの姿に、船橋市民としても取材者としても感じるものがありました。「とにかく感染者を減らすしかない」、松岡課長のシンプルなひと言が重く響きます。

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    2006年入局。札幌局などを経て社会部。いったん退職し18年に4年ぶりに再入局。千葉県政などを担当。

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