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コロナでICU満床 千葉大病院 患者に優先順位つけ「災害対応」

  • 2021年08月24日

新型コロナウイルスの感染急拡大で、千葉大学病院では、ICU=集中治療室を重症患者専用にしましたが病床も人手も追いつかない状況です。交通事故や心筋梗塞など一般の救急患者はほぼ受け入れできなくなっているうえ、災害現場のように患者に優先順位をつけて治療せざるを得ない状況になっています。対応にあたる医師は「多くの命が危機にさらされているまさに災害対応だ」と話しています。

重症病床増やしてもすぐに満床に

千葉大学病院では新型コロナの重症患者を中心に受け入れています。県内各地から症状の悪化した新型コロナの患者が運ばれてきます。

千葉大学医学部附属病院

8月中旬からは1フロアに18床あったICU=集中治療室をすべて重症患者専用にしました。これまでは重症患者用の病床は4床でしたが、10床にまで増やしました。
一方で、医療スタッフを確保するため、▼一般の救急患者の受け入れがほぼできなくなっているうえ、▼がんや心臓などの経過観察が必要な手術は制限せざるを得なくなっています。

こうして重症病床を確保したものの、ほぼ満床の状態が続いています。この日、病院内で行われた会議では、一般のコロナ病棟で60代の患者が重症化したことが報告されました。

医師
「今週月曜日に来た方で型どおり治療しても肺炎が落ち着かない。通常なら人工呼吸器の挿管の適応になる方かなと」

しかし重症病床に空きはありません。男性には一般病棟にとどまってもらい、そのまま人工呼吸器をつける緊急の対応を決めました。

会議では一般病棟にまで患者があふれ出している実態に懸念の声もあがりました。

医師
「一昨日みたいに千葉市内でも何時間もどこも行き場ない、呼吸状態ギリギリの人みたいな人が出たら・・・」

患者に優先順位つけ治療も

病院では現在災害現場のように重症患者の治療も優先順位をつけて行わざるをえない状況になっているということです。

千葉大病院救急科長 中田孝明医師

中田孝明医師
「やはり数が多いので、いつもの通りの質の医療を全員にやることはできない。多くの患者さんにできるだけの治療を、数をこなすということが求められています。なのでまさに災害そのものです」

腹臥位療法

病院では患者をうつぶせにして背中側の肺の負担を減らす「腹臥位療法」が行われています。
体のむきをかえるには1度に医療スタッフ4人以上の人手が必要です。

40代の男性は、自宅療養中に症状が悪化し、2回転院して千葉大病院に収容されました。
この治療法を受けると効果が出ることが確認されていますが夜間や週末に対応できるのは2人までが限界です。そのためより症状の重い持病のある患者への対応を優先さざるをえないということです。

また1週間重症だった60代の男性は、ようやく人工呼吸器を外せるまで回復しました。通常ならこのまま集中治療室で経過をみるところ、病床をあけるために翌日すぐに新型コロナの一般病棟に移ってもらうことになりました。

別の日には50代の患者が3人同時に重症化したもののの、1人分しか集中治療室に空きがない状況もありました。1人にしか人工呼吸器が使えないため、病状や薬の反応などをみて最も必要だと判断した患者1人を選ばざるを得なかったということです。

病院では、重症患者以外にも重症リスクの高い患者を30人ほど受け入れていて、状態が悪化した場合、ECMO(エクモ)=人工心肺装置の使用も考えなければなりませんが、その場合、多くの医療スタッフが必要になり、ECMOの使用制限も検討せざるを得ないということです。

中田孝明医師
「患者数が多いのでいつも通りの質の医療を全員に提供できず、まさに災害そのものだ。多くの命が危機にさらされていると、現場にいる私たちはひしひしと感じていて、災害時の対応としてこれが適切かどうか、常に考えながら対応するしかない」

治療の遅れで重症患者が増える事態も

千葉大学病院によりますと、救急車を呼んでも現場で搬送先が見つからず2時間から4時間待機する事態は常態化しているということです。中には20代で持病がない患者が重症化するなど治療の遅れにつながるケースも出てきてしまっているということです。

感染症が専門の千葉大学病院の谷口俊文医師は、治療が遅れることでより症状の重い患者が増える悪循環に入り始めていると分析しています。

千葉大学病院 感染症内科 谷口俊文医師

谷口俊文医師
「本来ならば肺炎を発症して酸素が必要になる前に抗ウイルス薬を投与することが望ましい。しかしそういった対応ができないような現状で、治療が後手後手に回っている。早い段階で入院させることができない。それがやっぱり今の課題だと思ってます」

さらに血液中の酸素の濃度が80%台を下回るような症状の悪化した患者が入院できないような事態にまで陥れば、亡くなる人も増えてくる可能性があると懸念しています。

谷口俊文医師
「重症の患者は、もし病院に入院できていなかったら全員死んでいる。病院に入って適切な治療を受けることによって、なんとか生き延びることができている。今後重症患者が病院に入院できないとか、少し遅れて入院するということが増えてくると、死亡者はさらに増えてくると思います。今のところは満床になっていながらでも、何とか綱渡りの状態でやりくりしてきています」

取材後記

「ここにくれば危機感が伝わるんですけどね。分からないですよね」と諦めたように言う集中治療室の看護師の言葉が印象に残りました。現場には、人工呼吸器につながれた若い患者の姿があり、治療にあたる医師の真剣な表情があり、関係部署と病床の調整を続ける看護師の姿がありました。第5波は「見えない災害」とも言われますが、患者や医師、看護師の姿からは、ひしひしと危機感が伝わってきて辛い気持ちになりました。少しでもこの厳しい現状を伝えたい、医師や看護師の気持ちをほんの少しでも想像してもらいたいと今回の原稿を書きました。今後も現場の危機感を伝えるため、取材を続けたいと思います。(千葉放送局/記者 櫻井慎太郎)

  • 櫻井 慎太郎

    千葉放送局 記者

    櫻井 慎太郎

    2015年入局。長崎局、佐世保支局を経て千葉局。医療問題を取材。

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