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千葉県銚子市沖で進む洋上風力発電計画 “景観一変”の指摘も

  • 2021年06月22日

再生可能エネルギーとして国が普及を進めている「洋上風力発電」。関東地方では漁業のまち、千葉県銚子市が、地域の活性化のため誘致に乗り出しています。しかし、沖合に風力発電の施設が林立することが予想される中、大切な観光資源の「景観」に大きな影響を与えかねないことも明らかになってきました。                        

  (千葉放送局/記者 岩澤千太朗)

電力消費地に近い「銚子市沖」 関東で唯一の促進区域 

銚子市沖の洋上風力発電

再生可能エネルギーとして国が普及を進めている「洋上風力発電」。
政府は、秋田県、千葉県、長崎県の沖合にある合わせて5つの区域を「促進区域」に指定して洋上風力発電の整備を支援しています。公募で事業者に選ばれると30年間、その海域を使うことができます。首都圏の電力消費地からほど近い「銚子市沖」は、関東地方で唯一、「促進区域」に指定されています。「銚子市沖」の事業には、東京電力のグループ企業が応募したことを表明しています。
8年前(2013年)には、風力発電の風車1基を実証的に設置し、現在、およそ2000世帯をまかなう電力を供給しています。

水揚げ量日本一のまち なぜ誘致?

水揚げ量が10年連続日本一の銚子市が、なぜ洋上風力発電の誘致に乗り出したのでしょうか。
人口がおよそ6万人と年々減少が続き、地域の衰退に直面しているからです。
銚子市や地元の漁協、商工会議所などは、脱炭素社会の実現に貢献するとともに、風力発電の収益をもとに基金を作り、地域の活性化を目指そうとしています。

銚子商工会議所 岡田知益会頭
「銚子市の人口減少はかなり早く進み、閉塞感、危機感があるので、洋上風力発電と共生していきたいと思っています」

台風など自然災害に耐えられるのか

この洋上風力発電、最近、相次ぐ台風や地震などの自然災害には耐えられるのでしょうか。
千葉県では、おととしの台風で各地の電線が被害を受け、大規模停電が発生しました。

おととし台風15号 千葉県内の電線被害

東京電力のグループ企業が運転する銚子市沖の実証機では、これまでの台風で50メートルを超える最大瞬間風速が観測されましたが被害は出ていないということです。
経済産業省によりますと、日本の洋上風力発電は、自然災害に耐えられるよう、海外より強度のある風車を導入し、より高い安全基準が求められているとしています。

東京電力リニューアブルパワー 福本幸成技術士
「50年に1回程度の強風にも耐えられる設計になっています。安全な洋上風力発電を建設したいと考えています」

景観に与える影響も…

さらに、洋上風力発電が景観に与える影響が明らかになってきました。

国指定の名勝「屏風ケ浦」(千葉県銚子市)

写真は、銚子市の海岸にある国指定の名勝「屏風ケ浦」です。
富士山を一緒に眺めることができる場所として多くの観光客が訪れます。

「屏風ケ浦」と富士山

国の想定では、40平方キロメートルの沖合に、高さ200メートルから250メートルほどの風車が30基から40基程度、新たに設置されるとしています。
文化遺産の提言を行う日本イコモス国内委員会のメンバーで、千葉大学の赤坂信名誉教授は沖合に数多くの巨大な風車ができれば景観が一変してしまうと指摘します。

日本イコモス国内委員会メンバー 千葉大学 赤坂信名誉教授
「東京タワーが333メートルだとすると、風車の高さはその4分の3ぐらいですね。景観にけっこう影響を与えると思います」

”計画進む前に住民にイメージを”

まだ、国や事業者からは、実際に風車が並んだ景観予想図が示されていません。このため、赤坂教授らは予想図を作成し、計画が進む前に景観への影響を住民にイメージして欲しいと考えています。

赤坂名誉教授
「もともとの風景がなくなってしまってから、あとから『あれが良かった』という話はたくさん聞いています。風力発電の計画が進む前に、シミュレーションした予想図を使ってもらって、将来の銚子沖について地元の人たちにじっくり議論して欲しいです」

銚子市沖の洋上風力発電は、国がことし秋に事業者を選ぶ予定です。銚子市では事業者に対して、屏風ケ浦を含む景観の予想図を提出するよう求めることにしています。

取材の現場から

リポートの取材で、漁業のまち銚子市を歩きました。商店街でシャッターを閉めたままの店が増えていて、まちの活性化をかけるのが、洋上風力の誘致だといいます。政府は、脱炭素社会に向けた切り札の1つとして、洋上風力発電の推進を打ち出しています。しかし、銚子市の住民からは、発電所を誘致するにあたって、どのようなメリットやデメリットがあるのか、地元への経済効果や影響などを十分見通すことができないという意見が聞かれました。
今のところ発電事業者が決まる前の段階で、まだ景観の予想図が示されていないうえ、発電所をメンテナンスする港の整備など、具体的な計画は決まっていません。政府には、洋上風力発電を推進する意志表明とともに、誘致を目指す自治体や住民に、そのメリットやデメリットをより早く、丁寧に説明する姿勢が求められています。

  • 岩澤千太朗

    千葉放送局 成田支局 記者

    岩澤千太朗

    平成28年入局
    大阪局を経て現所属
    成田空港の航空取材や地域の漁業・農業の取材にあたる

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