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LGBTの子どもたちにも理解と支援を

~自分らしく生きるために~
  • 2021年1月28日

LGBT=性的マイノリティーの人たちの権利を認めようという施策が地方でも動き出しています。群馬県では去年12月、都道府県としては全国で3番目に同性のカップルを結婚に相当する関係と認める「パートナーシップ宣誓制度」が導入されました。ただ、国内では同性婚は認められていないなど、制度や社会の理解の深まりは、これからという状況です。
「LGBTなんて当たり前」そんな社会になってほしい。子どもの頃から悩みを抱えた人が活動を続けています。
(前橋局/記者 渡邉亜沙)

悩みは子どもの頃から 大人はきっと理解してくれない

間々田久渚さん(29)。前橋市で性的マイノリティーの人たちを支援する団体の代表を務めています。みずからも、体は女性として生まれましたが、心は男性のトランスジェンダーです。

間々田久渚さん

間々田さんの気づきは幼いころにさかのぼります。
物心ついた時からドレスやスカートなど女の子の服を着ることには違和感をおぼえる一方、ウルトラマンや戦隊ものが好きでした。小学校低学年の時に、転校生の女の子を好きになり、恋愛対象が同性であることに気づいたといいます。

中学生の頃の間々田さん

中学時代にはいじめにあいました。理由はわかっていませんが、すでに自分の心が男性であることはわかっていて、周囲がそうした性の違和感を感じ取っていたのではないかと考えていました。

間々田久渚さん
「(当時は)LGBTという言葉はなかったし、同性愛って言葉はわかっていたのですが、性同一性障害という言葉があまりよくわかっていなかった。恋愛対象が女の子だと周りに言ったら、おかしいって思われるのだろうなと。どうしてもしんどくなって親とか先生にいじめの事実は言えたのですが、根本的な悩みとしてのセクシャリティの問題っていうのは大人に言っても理解してもらえるとはとても思えなかった。『どんなことでも話してね』って安心できる言葉をかけてほしかった」

ストレスを感じやすい学校 寄り添う大人を増やしたい

子どもの頃から悩みを抱えた間々田さんは誰にも相談できず孤独感にさいなまれていました。特に学校は、制服をはじめ、男と女で分けられがちで、間々田さんにとってはストレスを感じる環境でした。

「10代は家と学校しかなくって打ち明けられる場所がない」

学校の中で、自分と同じように傷つき、悩む子どもをなくしたい。言葉をかけてあげられる大人を増やしたい。間々田さんは去年から、学校関係者を対象にした勉強会を始めました。

オンライン勉強会のページ

去年11月、オンラインで行った勉強会には、トランスジェンダーの当事者や県内外の教員など30人ほどが参加しました。当事者からは“男”と“女”で無意識に分けられがちな学校に当たり前のようにある慣習や何気ない一言で、傷ついたり悩んだりした経験が明かされました。間々田さんと同じような思いを抱えていたのは、ひとりではありませんでした。

オンライン勉強会に参加した人たち

LGBTの当事者
「集会で並ぶときには『男子』『女子』、家庭科で作るエプロンの柄は『女の子らしい』『男の子らしい』ものだけ。更衣室での着替えや制服にも違和感があって、周囲となじめなかった」

もうひとりのLGBTの当事者
「同性が好きだと気づいた時に『結婚できない』と孤独を感じた。私が教育を受けていたころは性同一性障害みたいな感じで、(教科書に)ちょろって載っているぐらいだったので、そういうものがあるっていうのを先生から生徒に教えていただけるとすごくいいなと思う」 

 

養護教諭
「いまリアルタイムでも小学生中学生でお話いただいたように感じている子が絶対いっぱいいるのだろうなと思うと胸がきゅっとなりました」

元教員
「先生が学校では当たり前だと思っている行動、活動が当事者の人たちにとっては、すごく傷ついていたり違和感を覚えていたり、居場所がないなと感じたり。学校の先生の理解は早急に必要だなと感じました」


行政の研修会に招かれても、多いのは「人権担当」として義務的に来る先生。別の場所では「子どもたちにはジェンダーなんてわからない」と話す先生にも出会いました。間々田さんはLGBTについて教育現場の理解は十分と言えない現実に直面してきました。
だからこそ、もっと学びたいという先生や、性的マイノリティーの教え子が身近にいる先生など、主体的に向き合おうとする学校関係者に当事者の経験や思いを伝えて、そこから理解を広げていこうと考えるようになりました。

間々田久渚さん
「理解しよう学ぼうと思ってくれている先生たちと直接つながりたい。やっぱりひとりでも子どもたちにプラスなメッセージを届けてくれる先生を増やしたい。学校で自分を隠さなければいけないと思う子どもが減ってほしいと思う」

悩みを抱えた人たちへ 地方だからこそ居場所を

交流スペース まちのほけんしつ

LGBTの人たちから話を聞いてきた間々田さん。性だけでなく、いじめや不登校など複合的な悩みを抱えている人が多いことにも気づきました。そうした人たちの生きづらさを少しでも解消できないか。今、ほかの団体と協力して、様々な理由で孤独や悩みを抱えた人たちが交流できるフリースペースの設置も進めています。

間々田久渚さん
「LGBTも不登校もひきこもりも、社会の中でそのことを話せないとか、悩みを自分で抱えているとか、生きづらさっていうことが共通のキーワードだと思うんですよ。しんどさを抱えていらっしゃる方もまだまだたくさんいます。群馬は、都内みたいにコミュニティーが豊富なところとは違うので、何を話してもいいし、自分を出せる場所であってほしい。家とか学校とか職場で自分らしさが出せていないなら、『ここがあって良かった』『ここだったら自分らしくいられる』そういう場所になっていったらいいなと思います」

まちのほけんしつ 完成予想図

前橋市に設けるこのスペースには、お茶を飲みながら談笑できるコーナーや、LGBTやひきこもりの関連書籍を集めたライブラリーなどをつくる予定です。クラウドファンディングで協力を呼びかけたところ、群馬県内にとどまらず全国から目標の120万円を超える200万円近くの寄付が集まったということで、間々田さんたちの取り組みへの理解と共感が少しずつ広がっています。

パートナーシップ制度 その先にある目標は

同性のカップルを結婚に相当する関係と認める「パートナーシップ宣誓制度」。去年12月、間々田さんはパートナーの田中沙織さんと群馬県の第一号のカップルとして宣誓しました。結婚に相当する関係として認められ、県営住宅への入居のほか、県立の医療機関で家族と同様の面会などが可能になります。

ただ、県の職員が新婚夫婦やパートナーシップの宣誓をしたカップルに交付する「ぐんま結婚応援パスポート」を渡そうとすると、2人は「法律で同性婚が認められ、本当の結婚ができたときにもらいたい」として受け取りませんでした。 

間々田久渚さん
「県が『ふたりを家族として認めます』と言ってもらえること、『結婚はできないけど、パートナーシップを結んでいます』と言えるのはとても大きなことで嬉しい。ただ、本当の結婚ではない。財産の相続や手術の同意は認められていない。理解してほしいから、マイノリティーががんばって、いつもがんばって、がんばって説明して、理解を得て勝ち取って、本当にずっとそれを繰り返してきた。そういう歴史だと思うんですよね。一番大きな理想は、この活動をしなくてもいいってことです。まだ社会に声が足りていないから活動していますが、まだまだ長い、この先長いなって思います」

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