首都圏情報ネタドリ!

  • 2024年6月7日

晴海フラッグの分譲マンション 法人が多数購入 なぜ?7回落選した夫婦“ファミリー向けと聞いていたのに”

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東京・中央区の湾岸エリアにある晴海フラッグ。

もともと、東京オリンピック・パラリンピックの選手村で使用された建物を、主にファミリー向けの分譲マンションに改修しました。

その土地は東京都の公有地で、道路などの整備に都はおよそ540億円の公費を投じてきました。

ところが、NHKがあるエリアの登記簿を調べたところ、その4分の1以上が法人によって購入されていたことがわかりました。

ファミリー向けだったはずが、なぜこうした事態に?
 

「晴海フラッグ」の購入実態に迫る「首都圏情報ネタドリ!」はNHKプラスで配信します。 
 

配信期間:6/7(金) 午後7:30~6/14(金) 午後7:57

7回落選した夫婦“当初から違和感”

「晴海フラッグ」

60代の夫婦は、晴海フラッグをついの住みかにしようと、購入を申し込みましたが、すでに7回、抽選に落ちました。

実はこの夫婦、申し込みの際に配られた資料を見て、ある違和感を抱いていました。

ファミリー向けをうたいながら、複数の部屋の購入を前提にしている記載があったからです。

 
「ウェブで申し込めるのは3戸まで、4戸以上申し込むときは対面で申し込んでくださいと書いてあり、『あれっ?4戸以上申し込むってどういう意味なんだろう』と思いました」

さらに、申し込み会場で目にした光景にも、疑問を抱いたといいます。

 
「土曜日に行くと、スーツを着て、ビジネスバッグを持って、晴海フラッグの人と名刺交換をしている人たちを3、4人見ました。ファミリー向けと聞いていたのに、そのときはすごく不思議に思いました」

その後、法人による投資目的の購入が相次いでいたことを知りました。

 
「そういうことだったのかなと。私のような本当に住みたい人が1人1戸ずつ申し込めるということであれば納得いくんですけど」

 
「ファミリー向けとか、一般人に購入しやすくとか、言わなきゃいいのになというのが感想ですね。法人は資金がありますからね。私たちにはどうにもならなかったんですね。本当、滑稽です」

法人の購入が相次いだ理由とは

NHKが「晴海フラッグ」ですでに入居が始まった1089戸の登記簿を調べたところ、法人が取得した物件は、4分の1以上にのぼることが明らかになりました(実態調査の詳細はこちら)。 

5年前から段階的に始まった晴海フラッグの販売。 

大きな変化があったのは2年ほど前。抽選の倍率が急激に上がったのです。

複数の部屋を取得した法人を取材したところ、「数十戸単位で申し込んだ」という証言が相次ぎました。 

中には、「部屋を手に入れるため、一度に200以上申し込んだ」と話す、法人の代表もいました。 

なぜ、それほどこの物件を手に入れたかったのか。 

晴海フラッグで5部屋以上購入した、法人の代表です。

今、所有するすべての部屋を賃貸に出しています。 

ここは投資の対象として極めて条件がよかったといいます。

部屋を5戸以上所有する法人の代表 
「一番の原因は、物件の値段がリーズナブル。それと同時に、やはり物件の質がよいということと、環境に恵まれている都心立地ということです。利回り的には非常に高いというのは間違いないですね」

晴海フラッグで最も多く分譲されたのは85平米の部屋。平均価格は8000万円と、周辺相場よりも安く設定されていました。

そうした中、都心の新築マンションは価格が高騰。 

この差に目をつけた投資家たちは、晴海フラッグの部屋を転売したり賃貸に出したりすることで、利益を得られると見込んだのです。 

事実、部屋の抽選倍率は高騰するマンション価格に反応して跳ね上がっていました。

「ここのマンションに関してはどの部屋を買っても大正解です。今が頂点ではなく、これからもちょっと上がっていく。そのときにまたよりよい購入者が現れたり、入居者が現れたりすると、非常にいい展開になるかな」

投資の対象として人気が過熱した、晴海フラッグ。 

もともと分譲マンションとして供給された2690戸のうち転売や賃貸に出されている部屋が少なくとも491、全体の2割近くにのぼることも明らかになりました。 

早々に売却された部屋を、どんな人が買っているのか。晴海フラッグの物件を専門に扱っているという仲介業者を訪ねました。

もともと、8000万円ほどで販売されていた部屋は、この春、1億5000万円台で売れました。 

この会社ではどこよりも詳しく物件の案内ができるよう、社員を晴海フラッグ内に住まわせています。

不動産仲介会社社員 
「まちづくりも始まったばかりで、晴海フラッグに住んでいると、犬の散歩などで周辺を毎日歩くので、新規でオープンしたお店など、周辺の環境には詳しくなりますね」

すでに10部屋以上の売買を仲介。そのうち3件は外国人の富裕層でした。 

先週も中国から、2億円近い部屋の内覧に訪れたといいます。

株式会社FLAGSHIPS 谷貝亮代表取締役 
「この立地、この規模、この眺望。なおかつ近隣と比較してもまだまだリーズナブル。『いい部屋が出たらすぐに教えてくれ、資金の用意はできている』と言われる状況ですね」

晴海フラッグが投資の対象に 影響は?

不動産投資自体はよくある取引で、購入した人たちに問題があるわけではありません。 

ただ、晴海フラッグがあるエリアは、東京都が巨額の公費を投じた公有地であり、住宅を求めるファミリー層向けに分譲されたマンションです。 

現状について、都市政策の専門家は次のように指摘しています。

明治大学政治経済学部 野澤千絵教授 
「非常に残念です。東京では住宅価格が高騰しており、一般的な世帯にはもう手が出ない状況になっています。 

晴海フラッグは、都が持っていた土地を活用して、都心に近い立地で、ファミリー向けの広めの住戸を大量に供給されるという希少な開発だったと言えます。都心で働きながら子供を育てたいという世帯に手が届く、いわば、“アフォーダブル住宅”(手ごろな価格の住宅)として期待される存在でした。 

それが過度に投資対象になってしまったことで、この街に本当に住みたいというファミリー層が締め出されてしまうという結果になってしまいました。開発計画当時とは住宅市場の状況は大幅に異なっているものの、やはり大きな機会の損失といえます 」

投資を目的とした所有者の占める割合が高くなった晴海フラッグでは、今後、マンション管理の合意形成が難しくなることも懸念されるといいます。

「住んでいる人の目線と、投資家の目線は異なります。たとえば、今後、修繕積立金を増額する必要が生じた場合、住んでいる人の多くは将来の自分たちのために必要なら受け入れざるを得ないと考えます。一方、転売目的の投資家は自分が売却するまでは保有コストが増えてほしくない、賃貸経営目的の投資家は利回りが悪化してしまうと考える方も出てくるでしょう。 

こうした意識のずれによって反対する所有者の割合が多くなればなるほど、マンション管理に向けた合意形成が難しくなってしまう可能性もあります」

晴海フラッグの販売方法は適切だったのか。投資目的の法人が複数の部屋を買い占めた状況について、東京都はどう見ているのか。後編の記事で詳しくお伝えします。 

<後編の記事>
追跡 晴海フラッグ ファミリー向けマンションがなぜ投資の舞台に 東京都の回答は

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