東京電力管内 1日から無理のない範囲で節電要請へ 経産省

政府はこの夏の電力需給について、東京電力の管内では非常に厳しくなるおそれがあるとして、1日から無理のない範囲で節電要請を行います。

政府は、この夏の電力需給について供給の余力を示す「予備率」が、全国すべての地域で安定供給に最低限必要な3%を確保できる見通しだとしています。
ただ、東京電力の管内では来月の予備率が3.1%、8月は4.8%となる見通しで、想定外の暑さになるなどした場合、電力需給が非常に厳しくなるおそれがあります。
このため、政府は東京電力の管内で1日から8月31日までの2か月間、無理のない範囲で節電を呼びかけることにしています。
1日からの節電要請は冬に続いて数値目標は設定されておらず、経済産業省では家庭に対し、不要な照明を消すことや、リビングや寝室の照明の明るさを下げること、それに室内温度の設定を無理のない範囲で上げることなどを呼びかけます。
また企業に対しても可能な範囲でオフィスや店舗の照明を減らすことや、カーテンやブラインドを活用し、冷房の効率を高めることなどを呼びかけることにしています。
1日からの節電要請について西村経済産業大臣は30日の閣議のあとの会見で「体調を一番に考えて無理のない範囲で使っていない部屋や廊下の照明を消すなどさまざまな取り組みをお願いしたい。一つ一つ小さな取り組みが積み重なれば大きな効果になる」と述べました。

夏の節電要請にあわせて東京都内の印刷会社では、設備の稼働を一部休止するなどして、電気の使用を少なくする取り組みを進めています。
東京・千代田区に本社がある従業員およそ60人の印刷会社では、夏の電気代が去年までの3年間で50%近く増えました。
会社ではコストの削減にもつながるとして、節電に向けた対応を進めています。
これまで3つのフロアでそれぞれ印刷機を稼働させて納期に間に合わせていましたが、このうち一つのフロアでは原則稼働を休止し、作業を集約しました。
稼働を休止したフロアでは、空調や照明も使わずに済むということで、こうした工夫で電気の使用量を少なくしようとしています。
一部の印刷機の稼働を止める形となりますが、納期をこれまでより長めにするなど取引先の理解を得ながら節電に取り組みたいとしています。
またオフィスでは会議室のエアコンを運転開始から1時間たつと自動で消える設定にしたり、消し忘れ防止機能を活用したりして、余分な電気を使わないようにしています。
この会社では4年前に国の補助金を活用して省エネ性能の高い空調や照明設備に改修した結果、オフィスの電気の使用量が半分近く減ったということで、今後さらなる設備の更新も検討することにしています。
共立速記印刷の笹井靖夫社長は「エアコンや印刷機の稼働調整など、できることをひとつずつ確実に行って、省エネに貢献したいです。改修のための投資費用はかかりますが、国の補助金も活用しながら取り組みます」と話しています。

経済産業省によりますと、東京電力管内の1日から1週間の電力需給は、最も厳しい時でも予備率が12.3%と、安定供給に必要な水準は確保できる見通しとなっています。
一方で、想定を上回る気温の上昇が連日続いて、需要が急増すると需給が厳しくなるおそれがあるとしています。
資源エネルギー庁の迫田英晴電力供給室長は「日中の暑い時間帯はエアコンをしっかり使ってほしいが、夏場は夕方にかけて電力需給が厳しくなる傾向にあるので、午後5時以降の時間帯で無理のない範囲で節電に協力してほしい」と呼びかけました。

1日から8月31日まで政府は東京電力の管内で無理の無い範囲で節電を要請するとしていますが、例年、この期間は厳しい暑さとなり熱中症で搬送される人が急増する時期にも重なります。
東京・板橋区では民生委員が熱中症のリスクの高い高齢者を訪ねてエアコンを適切に使うなど必要な対策も呼びかけました。
東京・板橋区では夏の厳しい暑さが始まるこの時期に、熱中症のリスクが高くなる高齢者のうち75歳以上を対象に民生委員が自宅を訪問し、熱中症の対策を呼びかけています。
東京の都心の最高気温が33.8度と厳しい暑さとなった29日、担当者が地域のお年寄りの自宅を訪れました。
担当者は「体調は変わりないですか」などと声をかけ、エアコンを使っているかなどを確認していました。
そのうえで、この夏、政府が節電要請をする中でもエアコンや扇風機を併用して室内の温度が28度以下になるようにしたり、水を飲んだりするなど熱中症の対策を続けてほしいと呼びかけました。
これに対し、息子と暮らしている89歳の女性は「体調を崩さないように暑い日は我慢せずにエアコンを使いたいです」と応えていました。
板橋区の民生・児童委員の醍醐範暁さんは「この時期、熱中症への対策は最も重要なことです。地区の中から熱中症で運ばれる人が出ないように今後も取り組んでいきたい」と話しています。
熱中症に詳しい、医師で帝京大学医学部附属病院高度救命救急センターの三宅康史センター長は「7月下旬から8月上旬は医療機関にかかる熱中症患者が圧倒的に多い時期にあたる。特に高齢者や乳幼児、体に障害のある方など暑さに弱い人にとってエアコンは特効薬で、快適な室温になるよう我慢せずにエアコンを使ってほしい全員一律に同じように節電するのではなく、メリハリをつけることが必要だ」と話しています。