「清見」
旬:3月中旬~4月頃
みかんの収穫量全国2位を誇る静岡県では、様々な品種も生まれています。
その1つが「清見」です 。
戦後間もない、昭和23年。
興津にある園芸試験場(現在の国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)で
「輸入の果物に負けない、おいしい品種を作ろう」と、
みかんとオレンジそれぞれの良いところを持った品種を作る挑戦が始まりました。
みかんのめしべにオレンジの花粉をつけて受粉させ、
実がなったら、種の中の「胚(はい)」を取り出します。
種の中には複数の胚が入っていますが、味や見た目など、それぞれ性質が異なります。
必ず希望通りの胚ができるわけではないため、研究者はたくさん胚を作り、
育て、良いものを探し出さなくてはなりません。
「桃栗三年柿八年」といいますが、かんきつの場合は10年以上かかるのが一般的です。
さまざまな困難を乗り越え、初めて実をつけたのは、13年後でした。
濃く鮮やかな色とオレンジの香り、そして、したたる果汁と甘さに、
研究者は歓喜したといいます。
品種として認められたのは、研究が始まってから30年以上経った、昭和54年でした。
研究所近くにある清見寺(せいけんじ)のように「長く伝えられてほしい」という願いから
「清見(きよみ)」と名付けられました。
「かんきつの歴史を変えた」清見
不知火(デコポン)やはるみをはじめ、現在の品種の多くが、清見を親にして育成されました。
「もし、清見が生まれていなければ、
今の日本のバラエティに富んだかんきつの品種群は、形成されていなかった」といいます。
清見の原木は、樹齢72年となり、現在も研究所内で大切に育てられています。