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静岡富士宮 特産のニジマスをピザでご当地グルメへ!地域活性化・インバウンド戦略も 

  • 2024年05月18日

ニジマス養殖日本一を誇る静岡県。富士山の豊かな湧水(ゆうすい)を使って日本で初めて民間の養殖が始まった富士宮市は、「にじます」を市の魚に指定しています。地元での消費が伸び悩む中、新たな特産品にしようという動きが始まりました。コロナ禍後、インバウンド戦略も視野に登場したのがニジマスのピザ!どんな狙いがあるのでしょうか?

富士宮市が誇るニジマス

明治時代にアメリカから輸入されたニジマス。公設のニジマスの養殖場が各地に設けられ、富士宮市でも県の養鱒場(ようそんじょう)がニジマスの供給を始めました。昭和9年には全国で初めて淀師地区に民間の養殖業者が誕生したそうです。

静岡県の富士養鱒場

国内向けへの転換

県の富士養鱒場などによると、太平洋戦争後の復興期に、1キロ前後のニジマスをムニエル用などとして海外に輸出。養殖業者も増え、地域の産業へと育っていったそうです。ところが昭和48年の第1次オイルショック後に輸出は激減。国内向けへの転換を迫られました。

“食べる文化 根づかず”

そこで主流となったのが、日本人の食生活にあわせた100グラム程度の塩焼きサイズ。ところが昭和50年代後半をピークに出荷量は減っています。漁協によると、産地にも関わらず、静岡県内の出荷量は全国の年間158トンに対し、わずか3トン。ニジマスを食べる文化が根づいていないといいます。

富士養鱒漁協 栗田岳志さん

(富士養鱒漁協 栗田岳志さん)「以前は海外向けに生産されていたので、なじみが薄いのかもしれませんが、静岡は海の魚がおいしいので、その競争にはなかなか勝てません。富士宮市内にはニジマスを日常的に売る店もほとんどないため、あまり食べられていないんです。なんとかアピールしないと生産地だけにもったいないと思っています」

焼きそばに負けないソウルフードへ!

そのニジマスを新たなご当地グルメにしたいと考えたのが、市内の海鮮料理店です。

特産のニジマスを地元で当たり前に食べる文化を根づかせ、富士山などの美しい自然を目当てに訪れる観光客をターゲットにしたインバウンド戦略も視野に入れています。

ニジマスのピザに挑戦する望月和也さん

(望月和也さん)「ニジマスは富士宮市を代表する食材です。市民にとっては昔からあって当然のもの。ニジマスで地域に恩返しできたらと65歳で新しい挑戦をするこにしました。富士山を見ながら食べるピザはきっと格別ですよ」

なぜニジマスのピザ?

ピザは世界で愛され、味や見た目は、その国、その土地の特色を生かしたものも少なくないからだといいいます。4年前にきっかけとなる出来事もありました。海鮮料理店に来た地元の客がニジマスを使ってくれないかと持ってきたそうです。

(望月和也さん)「その客はニジマスの養殖をやっていて、子どもがおいしいと食べてくれるとうれしそうに話していました。そのときには養殖物は扱っていなかったので断ったんですが、後日、こんな食べ方もあると、ピザにして渡したんです。なぜかその客のニジマスへの思いが忘れられなかったんです」

ピザとの調和で奮闘!

ピザとニジマスを融合させておいしくするのは大変だったそうです。ピザは完成された料理だけに、ニジマスの大きさや味付けなど何度も試行錯誤を繰り返しました。

特殊な保水処理をしたニジマス

(望月和也さん)「ニジマスは味の主張が少ない魚ですが、ピザの邪魔にならないよう調和させるのはすごく難しいです。魚の身質を大切にするよう工夫し、ピザの具ではなく、ニジマスをピザで食べるというイメージで仕上げています」

独自の保水処理でうまみを!

工夫の結果、ニジマスは、これまでの和食の技術を生かして、ジューシーさが残るよう特殊な保水処理をしています。かたくり粉をまぶして揚げたものを使用することにしました。しっとりして、ふわふわとした食感とこうばしさが出るといいます。

試食会 “こうばしい香り”

この日、試食会が行われました。事業をサポートする富士宮市や富士宮商工会議所、富士宮信用金庫。それに養鱒場の関係者ら10人余りが集まりました。

ピザを焼くのは望月さんの次男の妻で指導役の千晶さんです。市内の農産物直売所で自前のナポリピザを焼いています。

指導役の望月千晶さん

(望月千晶さん)「ピザには大きな魚の具材を載せるのはあまりないので、難しいです。試食会はちょっと緊張しますが、しっとりしたニジマスはピザに合うと思います」

真剣ながらも楽しそうに焼いています

提供されたのは、ニジマスの切り身が乗ったマルゲリータと切り身を包み込んだカルツォーネ。次々に焼き上がっています。

マルゲリータ
カルツォーネ ニジマスの身を包んでいます

参加したみなさんは、笑顔でほおばっていました。

(漁協の栗田岳志さん)「ニジマスは身はあっさりで、皮やヒレの香りがこうばしいです。ピザも、もっちりしておいしいです」
(信用金庫の萩原遼さん)「望月さんのソウルフードにしたいという熱い思いを感じます。もちもちサクサクで食感もすごくいいです」

“ニジマスで地域を循環させたい”

ニジマスのピザは、この店のほか、キッチンカーや農産物の直売所で来月1日から提供される予定で、独自の保水処理を施したニジマスの利用をさらに広げようとしています。

望月和也さん

(望月和也さん)「焼きそばに続くソウルフードとして地元の店だけでなく、移住者にも参加しやすいものにしたいと考えています。将来的には観光に寄与できるような仕組みをつくって、ニジマスを軸に人や金を循環させることができたらうれしいです」

地域でニジマスPRへ

富士宮市はニジマスの生産量が多いことをPRしています。小中学校でも食育の一環として給食にニジマスの竜田揚げなどを提供し、地元の食材として愛着を持ってもらおうとしています。

ニジマスの子ども

漁協は、毎年3月に開催される「にじます祭」で、ニジマス料理のコンテストを開きたいと検討しています。富士宮市のニジマスは、3キロを超える大型の刺身用のものが人気を集め、ロシアによるウクライナ侵攻以来、国内の市場で高値で取り引きされているそうです。

大型のニジマスの刺身

刺身やピザはもちろん、ニジマスを使ったさまざまな料理が登場することで、多くの人が関わり広がりを見せるのかも知れません。豊かな自然が育んだ地元の食材が観光はもちろん、地域に根づくことを願っています。

  • 長尾吉郎

    静岡局 ニュースデスク

    長尾吉郎

    1992年NHK入局
    初任地大分局で釣り覚える
    報道局社会部・広報局など
    ヤエンによるイカ釣り好き

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