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静岡浜松 “ちまた公民館” もうひとつの居場所

つかず離れず、の距離感がもたらす心地よさ
  • 2024年05月24日

「ふだんと違う場所で、誰かと楽しく過ごしてみたい」
「1人で好きなことをしていたい。だけど、1人でいるのはさびしい」

1人暮らしか、家族などと暮らしているかにかかわらず、
ふとした瞬間にそんな気持ちになること、ありませんか?

浜松市中央区にある「ちまた公民館」は、そんな気持ちを満たしてくれる場所です。
誰でも受け入れてもらえて、何をしていてもいい。
特別なことはないけど、ただいるだけで落ち着ける“もうひとつの居場所”
どんな人たちが集まって、どんな空気が流れているんだろう?
そんなことが気になって「居場所デビュー」、してきました。

何をしてもいい自由な空間

"人が集まる交差点"をイメージして2022年10月に始まった、ちまた公民館。「公民館」とはいっても、市町村が設置する通常の公民館ではありません。まちづくりや文化事業、障害福祉サービスを中心に活動している地元のNPO法人が実験的に始めたもので、家や学校、職場とは違う、もうひとつの居場所を作ることで少しでも日常を豊かにしてほしいという願いが込められています。

「ちまた公民館」の外観(浜松市中央区)

中に入ってみると広々とした空間が広がっていて、来た人はここで会話を楽しんだり、何か作業をしたりと自由に個々の時間を過ごすことができます。いまここを訪れている人たちの年齢層は小学生から60代と幅広く、世代を超えてお互いに趣味の話をしたり悩みを相談したりと人々の憩いの場になっています。

バラバラに集まって来た人たちの間に会話が生まれる。
近すぎず、遠すぎずの距離感。
それぞれのやりたいことをやっていてもいい。でも近くに誰かいてくれる。
そんな感じが心地いい。

ボードゲームや本など、楽しい時間を過ごすためのアイテムも充実しています。

いろんな人とつながりを持てる場所にしたい

ちまた公民館の運営スタッフの1人、認定NPO法人「クリエイティブサポートレッツ」の杉田可縫さん(27)です。杉田さんはオープン当初から運営に携わっていて、公民館でのイベントの考案なども行っています。大学時代に、ろう学校や在日コリアンの方など地域に住むさまざまな人と触れあう機会があり、そうしたつながりから生まれる新しいコミュニティに感動したという杉田さん。そのときの経験が今につながっているといいます。

杉田可縫(かぬい)さん

(杉田可縫さん)
「大学時代に参加したワークショップでの経験から、もっと人とつながりたいという思いを
 持つようになり、NPOのスタッフになりました。そして現在は、ちまた公民館でさまざまな
 方とふれあう機会を持てています。ここを訪れる人たちにも、同じようにいろんな人と
 交流をしてほしいという気持ちがあります。
 また、生きづらさを抱えている人、例えば外に出たいけど勇気が出ないとか、そんな人には
 ここを練習の場にもしてほしい、そういった気持ちもあります」

それぞれの「居場所」

この場所にひかれて集まってくる人たちにも話を聞いてみました。

田村迅(しゅん)さん(40代)
田村さん

近所に住んでいてよく訪れています。実は20代から精神的な病に悩まされていて、家から1歩も出られない時期もありました。最近は不眠症で夜寝れずに昼に眠くなってしまうため、そうした生活リズムを整えようと日中はここを訪れて、人と話したり好きなギターを弾くなどして眠くならないように工夫しています。

田村さん

不眠症改善のために訪れているという理由はありますが、みなさん接しやすい方たちばかりですし、1つのことに集中するなど自分と似たタイプの人が多くて過ごしやすいと感じています。私にとってはなくてはならない、好きな場所です。

杉田さん

のんびりとした雰囲気の田村さんですが、ここでは積極的にほかの方とコミュニケーションしているときもあります。ギターが好きな杉田さんは、よくみんなに音楽の話をしてくれます!

  小幡結子さん(小学4年生)
小幡さん

学校が終わったあと、週に1度は宿題やお絵かきをするために来ています。
みんないい人ですごく楽しい!

宿題をする小幡さん
小幡さん

私も将来は自分で公民館を作りたいなぁと思っています。壁紙はピンクのハート柄!いろんなことができる場所を作りたい!

杉田さん

元気で活発な小幡さん。オープン当初からずっと来てくれています。大人に囲まれながらも堂々と話している姿が印象的です!

早津基広さん(60代)
早津さん

ここのうわさを聞いて去年の夏に初めて訪れてからは、月に2回ほど遊びにくるようになりました。ずっと浜松に住んでいますが、阪神ファンです。

フリースペースでくつろぐ早津さん
早津さん

これまでホテルマンや保険会社などいろんな仕事を転々としてきて、心身が衰弱した時期もありました。ここは自分にとって家に帰る途中に休憩できて、いろんな人と触れ合える楽しい場所。こういう、どんな人でも集まれる気軽な居場所ってすごく大事だと思います

杉田さん

人と話すのが好きで子どもから大人までいろんなかたとコミュニケーションを取っている早津さん。近所のおじちゃんのような存在です!

交流を深めるイベントも

やってくる人たちの交流を深めようと、ちまた公民館ではさまざまなイベントが開かれています。杉田さんたちスタッフが企画することもあれば、ここを利用する人から提案されたものもあるそうです。

イベント予定が書かれた黒板

月に1度開催されている「語りのヴぁ」というイベント。
「人生」「言葉にする」「おじさん」など、一つのテーマについて参加者が自由に語り合います。約束事は、相手の話を最後まで聞くこと。そのおかげで、誰もが安心して自分の言葉で相手に伝えられる場になっているということです。

「語りのヴぁ」の様子(画像提供:ちまた公民館)

赤・青・黄の3色のパステルを使い自由な発想で絵を描く「3色パステルアート講座」です。絵が苦手な人も大歓迎、「みんなで楽しむ」がモットーなのだそうです。

「3色パステルアート講座」の様子(画像提供:ちまた公民館)
(画像提供:ちまた公民館)

みんなを受け入れる場所でありたい

老若男女を問わず親しまれている「ちまた公民館」。スタッフの杉田さんはもっと居心地のいい環境にしていきたいといいます。

(杉田可縫さん)
誰でも受け入れて誰でも利用できるような場所というのは学校や職場以外にまだまだ少ないと思います。だからこそ、この場所をもっと幅広い世代の人に知ってもらいたいですし、本当に誰でも立ち寄れる安心感を与えられるような、また来たいと思ってもらえるような居心地のいい環境作りをもっと頑張っていきたいです。「ちまた公民館」はこれからもみんなを受け入れる場所でありたいと思っています。

ふとしたときに立ち寄ることができる「ちまた公民館」。そして優しい雰囲気で迎え入れてくれるスタッフの方たち。初めて行くときは空気感になじめるかなとちょっと緊張していましたが、実際訪れてみるととても温かく迎え入れてもらえて、取材者の私も不思議と肩の力が抜けた状態でみなさんにお話を聞くことができました。ここで過ごすみなさんは会話を楽しむ方もいれば、リラックスしている方もいたりと、それぞれが好きなことをしてゆっくりとした時を過ごしていました。そんなみなさんを見ていて私も、忙しいときでもときどき立ち止まって、この場所にまた来たいと思いました。家や会社とは違う、もう1つの居場所。これからも地域の人たちの心のよりどころであり続けてほしいです。

※「ちまた公民館」は6月に浜松市中央区の紺屋町から田町に移転予定

  • 木原奏人

    静岡局・カメラマン

    木原奏人

    令和3年度に中途採用で入局。
    レンズを通してさまざまな思いを映します。    

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