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静岡WEB特集

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  3. いま注目!新しい高校の授業 ”探究”学習って?

2022年度から全国の高校で必修化された「総合的な探究の時間」、探究学習。教科書や板書でほぼ一方的に学科を教えられるのではなく、生徒がみずから課題を設定し、解決に向けた道筋を探る授業です。変化の激しい社会に対応して、課題を解決し自分の生き方を考える力を養うために始まりました。
探究の授業、どんなことをやっているのでしょう?

「探究学習」どんな授業?

訪れたのは、静岡市葵区にある静岡市立高校です。

静岡市立高校の「総合的な探究の時間」の授業は、1・2年生が受けています。1チーム数人のグループに分かれ、生徒が設定したテーマを1年かけて「探究」します。

1年生の授業風景

生徒たちは年度の前半に、自分が興味のあるテーマを元に探究する課題を設定。共通する課題をもつ生徒同士でチームを組み、探究を始めます。数か月かけて、先生や関係する企業に取材したり、アンケートや文献、実地でさまざまな調査を行ったりします。

生徒たちは、例えばこんな探究をしていました。

「勉強がはかどる色は?」
「校内の落とし物を減らすには?」
「休みの日を充実させるには?」

確かに、知りたくなるようなことばかりですね!学校生活の身近な疑問をテーマにする生徒が多いそうです。

取材したのは1月中旬。2月に控えた探究成果の発表で使うプレゼン資料を黙々と作っているチームもあれば、まとめ方について「うーん…」と悩みながら作業をしているチームもありました。

パソコンを使って発表用スライドを作成

静岡市立高校の探究学習では、ほかの授業の3倍ほど先生を配置しているそうです。さまざまな人の考えを聞き、探究の質を高めるためです。
答えは、生徒の数だけある指導する先生たちにとっても模索の日々です。生徒がみずからの経験や想像力をいかして探究テーマを見つけられるよう導いたり、在学中よりもむしろ卒業後に資質や能力を発揮できるようプログラムを作ったりすることを意識しているそうです。

「探究学習」の成果は、バスケットボールチームの運営!

伏見優那さん(左)、長橋穂乃花さん(右)

2年生になると、1年生であげた探究成果を軸に、さらに高度なテーマに取り組みます。
2年生でバスケットボール部の長橋穂乃花さんと伏見優那さんの探究テーマは、ずばり「バスケットボール」。今年度の探究学習として、なんと去年4月から、3対3で行う3x3のバスケットボールチームを運営しているんです。
チーム名は「CELESTARS(セレスターズ)」!

2人が運営するCELESTARS(画像提供:静岡市立高校)
CELESTARSは、Celeste(青空) Star(星)から。
1人1人がのびのびと、星のように輝くプレーをしてほしい
という思いが込められています(画像提供:静岡市立高校)

セレスターズに所属しているのは8人の女子選手。高校生ではなく、静岡市内の中学生です。静岡市立高校の体育館で練習し、市内のクラブチームや市立高校の女子バスケット部と試合を行って技と力をみがいています。
 

なぜ、中学生のチームを作ったのでしょうか?
そもそもなぜ、探究学習でバスケチームを運営しようと?

その理由は、長橋さん、伏見さん自身がプレーするバスケットボールをめぐる問題意識です。セレスターズの選手たちが通う公立中学校の部活動は、一部を地域団体や民間事業者に委託する「地域移行」の方向に進んでいます。

長橋穂乃花さん
伏見優那さん

長橋さん)
私は私立の中学出身で、在学中はほぼ毎日、バスケ部の活動がありました。
一方で、妹は公立中学。活動日も練習時間も私の半分程度でした。

このままでは、環境によって差が生まれ、高校進学でバスケットをやめてしまう生徒が出てくるのでは?と思ったんです。

公立中学の生徒にも、もっとバスケットをする機会を増やしてもらいたい。地域移行が整うまで何らかのサポートをしたい…というのが、私たちの探究テーマなんです。

選手が中学のバスケット部に所属しながら別のバスケチームにも登録すると「二重登録」になり、大会への出場資格を失ってしまいます。それを避けるため目をつけたのが、5人制のバスケットボールとは別競技とみなされる3x3のチームを作ることだったんです。

3x3は、東京大会に続きパリ大会でもオリンピック種目に
採用されています(画像提供:静岡市立高校)

セレスターズは、静岡市立高校バスケット部の先生の協力も受けて練習を重ね、昨夏には18歳以下の「日本選手権」の静岡大会に出場。高校生を相手にチーム初白星となる1勝をあげました!

複数の中学から集まる「混成チーム」のため、練習会場やスケジュールを調整するのが難しいなど課題も多く、運営はまさに探究中ですが、選手たちはもう次の大会に向けて思いきりバスケットをプレーしています。
 


県内高校生の「探究」が大集合!
探究イベント!

1月21日に静岡市内のホテルで開催

高校生の探究学習をテーマにしたイベントも行われました。その名も静岡探究コレクション(Shizuoka Tankyu Collection)。高校生たちが企画・運営を手がけ、実行委員は県内各地の高校生およそ30人です。

それぞれの学校が探究学習の成果を発表したほか、SDGsをめざすファッションショー、トークショーなどを企画。県内の39校から159人が参加し、約500人の来場者で賑わいました。

「環境に優しい洋服とは何か」をテーマにした
古着のファッションショー

探究学習の発表は、17校が行いました。

防災力を高めるため、「想定外の事態」を盛り込んで学内防災訓練を実践した探究

楽器の音色が「暗い、明るい」など主観的に表現されることから、音色の定量化を図るアプリを開発して共通理解をすすめる探究

地域活性化などの点から、ミツバチを飼育し商品開発を行う探究 など

探究学習で弁当を開発した学校も。静岡商業高校の探究テーマは、生産者にとっての課題、「規格外で破棄されてしまう野菜」の活用方法について。その解決策として、規格外の「葉ネギ」をふんだんに使った弁当を作りました。ご飯の上に、炒り卵やマーボー豆腐、ユーリンチーなどのおかずがどっさり!

静岡商業高校が開発した「よくばりしチャイナ丼」
 

シャクシャクとした食感がアクセントに。そして調理の仕方でさまざまに変わる葉ネギの風味を楽しむことができ、とてもおいしかったです。

「イベントなどで販売しています!」

高校生のさまざまな視点、豊かな発想と行動力が示される場になりました。

静岡市立高校バスケ部の長橋さん、伏見さんも探究成果を発表
長橋穂乃花さん
伏見優那さん

探究学習を通じて、「課題を設定し、改善する」ことを繰り返し行う大切さを学びました。
大学生・社会人になってからも、この経験を生かしていきたいです!

実行委員の焼津市産高校2年生の河合和来さんに、イベントの成果について聞きました。

実行委員の焼津水産高校2年 河合さん
河合和来さん

私の探究のテーマは「コミュニケーション能力の向上」でした。さまざまな方法を模索し、他校の生徒たちと一つのイベントを企画することで多様な意見・価値観にふれ、私自身の探究も深めることができました。

静岡県教育委員会 池上重弘教育長
池上重弘
県教育長

探究というのは、いわば「学びの手法」です。自分で問いを立て、これまで学んだことを元に、いろいろな人と経験を共にしながら、よりよい社会作りに関わっていく。そういう姿勢をぜひ身につけてほしいと思っています。

一口に探究学習といっても、テーマはひとつも重ならないほど多様で、高校生ならではの視点で設定された課題と、解決のためのアイデアや手法には、取材する側から見ても新たな発見や学びがありました。もしかしたら、これらの探究が社会を良い方向に変える一歩につながるかもしれません。それが楽しみになるような成果ばかりでした!

  • 大窪愛

    静岡放送局キャスター

    大窪愛

    浜松市出身。たっぷり静岡リポーター、おはよう静岡キャスター。
    ものごとを探究する姿勢、大切にしたいです

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