ページの本文へ

静岡WEB特集

  1. NHK静岡
  2. 静岡WEB特集
  3. 静岡かに情報・家康グルメパワーフード うなぎを超える?

静岡かに情報・家康グルメパワーフード うなぎを超える?

シリーズ第2弾!「ドウマンガニ」浜名湖の王!?
  • 2023年05月17日

富士山をはじめ伊豆半島や駿河湾など自然豊かな静岡県は、観光やグルメを求めて多くの人が訪れています。実は不思議なカニやおいしいカニもいっぱい!どんなカニがいるのか、どんな食文化があるのか各地で調べました。シリーズ「静岡かに情報」。第2弾は、ドウマンガニ(トゲノコギリガザミ)です。(静岡かに取材班)

うなぎで知られる静岡県浜松市と湖西市にまたがる浜名湖。南側は遠州灘の海へとつながる汽水湖です。海水と淡水の栄養が多く、生き物が豊富なことで知られています。ところがアサリやクルマエビなど多くの生き物が数を減らす中、復活しているのが、ワタリガニの仲間の“ドウマンガニ”。変化する浜名湖の環境の中で、なぜ増えているのか探ってみました。

えっ かにがいない!?

ドウマンガニが取れるのは、浜名湖の東側の水域。少し時期が早いが数匹は取れるかもしれないというので、浜名漁協雄踏支所の競りを訪ねました。

浜名漁協雄踏支所前の浜名湖

ところがこの日、水揚げされたのは、アユとクルマエビ、残念ながら、カニを見ることができませんでした。

きれいなアユ
漁師の伊藤貴之さん クルマエビを見せてくれました

水揚げした漁師の伊東貴之さんは、時期がまだ早いといいます。

「まだまだウナギの稚魚のシラスウナギを取っている人たちが多いんです。かには少しは取れているけど、漁をする人たちはほとんどいないんじゃないかな。昔と比べたら魚が減っているので、取れる魚を取るしかないんです」

確かに漁協の近くでも何人かがシラスウナギを生かして持って帰っていました。

網には透明なシラスウナギ でも量が少ないとのこと

それでもドウマンガニは増えているといいます。

江間勇人支所長

「この5~6年前から取れ始めました。それまでは数を減らし“幻のかに”とも言われました。アサリが取れず、かに漁に変える人も目立っています。今では、水揚げの主力となっています」(浜名漁協雄踏支所の江間勇人支所長)

どうしても かにが見たい

漁協近くの仲買人を訪ねました。いけすにいるかもと見せてくれました。

立派なハマグリ
天然うなぎ

ハマグリや天然のうなぎ。浜名湖にはもともとアサリよりもハマグリの方が多かったそうです。ドウマンガニはというと、「先週まではあったのに」と、ここでも見ることはできませんでした。

仲買人の加茂仙一郎さん

3代目の加茂仙一郎さんは、ドウマンガニの魅力をこう語ってくれました。

「ドウマンガニは、トゲノコギリガザミが正式名称で、甲羅が丸いことから、この地域ではドウマンとか甲丸(こうまる)と呼んでいます。おまつりのときには、今でもみんなで食べる欠かせない食材です。ほかの生き物が減る中で、ドウマンは浜名湖の生態系の頂点、いわばライオンのようなかにです。1年を通して取れますが、夏から秋は、オスの濃厚なみそとうまみのある身、メスは秋から冬の内子を味わって欲しいです。ただ全国規模で流通するほど量が取れず、ぜひ地元で味わって欲しいです」

放流のために卵を提供しているそう(加茂さん提供)

食べてみたい パワーフード!

そこまで言われると、まだ見ぬかにを食べてみたい。浜松市の飲食店を訪ねました。

浜松市はドウマンガニなど市内の食材を徳川家康の健康を支えたパワーフードとしてPRしています。でもドウマンガニを食べるには、やっぱり少し早いそうです。残念!!

真っ赤!(秋元さん提供)

社長の秋元健一さんは、この10年、市と一緒になって浜松の食材の魅力を発信しています。

秋元健一さん

「静岡県の農水産物320品目のうち、8割が浜松で取れたものです。海、川、山それに浜名湖があって食材が豊富なんです。その食材を旬のうちにいただく、旬の食べ物は栄養価も高く、家康の健康を支え、家康が強くなったのもそのおかげだと私たちは考えています。ドウマンガニはよそにはない食材で、味が濃いので、家康になったつもりで食べていただければと思います。すしは絶品ですよ」

食べて見たい(秋元さん提供)

結局食べられず。その魅力を心に刻みました。夏と秋、オス、メス双方の味を堪能するため、2回食べに行こうかな。

なぜ増えているの?

ドウマンガニの去年(2022年)の水揚げは6.8トンと5年前の倍近くに増えています。なぜ増えているのかもう少し詳しく知りたいと専門家を訪ねました。

長年、かにを研究してきたマリンオープンイノベーション機構の岡本一利博士です。浜名湖は日本の漁場の最北端、ドウマンガニは温暖化に強いといいます。

岡本一利博士

「ドウマンガニはもともと熱帯系のかにで、温暖化に強いのかもしれません。加えて浜名湖は年々、塩分濃度があがって、潮の流れも速くなっています。栄養源も少ないなどさまざまな環境変化が起きています。このためクルマエビやアサリが取れない。でもドウマンガニは泥の中に生息しているので、影響を受けにくいと考えられます」

浜名湖には、うなぎやクルマエビなどなど本当に贅沢な食材にあふれています。環境の変化の中で、その生態から生存力を発揮するドウマンガニ。浜名湖ならではパワーフードに育つかもしれません。

静岡のカニを知り尽くす、シリーズ「静岡かに情報」。第3弾は、今、幼魚水族館で見られるかわいいアサヒガニの赤ちゃんをご紹介。ほぼエビ?!なんだとか。

  • 長尾吉郎

    静岡局 ニュースデスク

    長尾吉郎

    1992年NHK入局
    初任地大分局で釣り覚える
    報道局社会部・広報局など
    ヤエンによるイカ釣り好き

ページトップに戻る