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静岡かに情報 特産グルメへ“深海がに” 天丼・コロッケも 

シリーズ第7弾!世界最大級「タカアシガニ」水族館で見るかに食べてみよう
  • 2023年05月17日

富士山をはじめ伊豆半島や駿河湾など自然豊かな静岡県には、観光やグルメを求めて多くの人が訪れます。実は不思議なカニやおいしいカニもいっぱい!どんなカニがいるのか、どんな食文化があるのか各地で調べました。シリーズ「静岡かに情報」。第7弾は、深海で取れるタカアシガニです。(静岡かに取材班)

世界最大級とも言われるタカアシガニ。水族館で見た方も多いと思います。大きなものでは2メートル以上にもなるそうです。その大型のかにをおいしく食べようと、地域ぐるみで特産に育てたのが静岡県沼津市の戸田地区、深海漁の街です。グルメだけでなく、かにをめぐる文化も根づいていました。

深海魚の聖地 カニの街!

訪れたのは、深海魚の聖地として知られる沼津市戸田(へだ)。深海魚とともにタカアシガニを食べることができます。

あちこちにタカアシガニの看板があります

かにを目当てに訪れる

さっそくタカアシガニを食べさせてくれる食事処を訪ねてみました。

どーんと運ばれてきたのは、ゆでたタカアシガニ。これで中くらいの大きさだそうです。

ゆでたて熱々

甲羅の中には、かにみそ。身とあえて食べると最高とのこと。

関東から来た夫婦と友人のグループ。連休を利用してかにを目当てに来たそうです。

足の身は簡単に抜けるそうです

小さな“さかなクン”も食べてた!

埼玉県から来た家族です。4歳の子どもが深海の生き物が大好きとのこと。図鑑をよく見るという小さな“さかなクン”です。沼津市の深海漁の水族館でタカアシガニを見たあと、「食べたい」と戸田地区までそのまま足を伸ばしたそうです。

お父さんは甲殻類のアレルギーだそう

かにに興味津々、ずっと触っていましたが、ときおりパクリ。

水族館でもタカアシガニを見てきました!

「すごくおいしい」と両親に話しかけていました。

天丼にもタカアシガニ
切れ端をコロッケに

地域ぐるみで特産に!

この店の2代目、中島寿之さんです。27年前からタカアシガニなどの深海漁や地魚を扱っています。深海のカニを特産に育て、おいしく食べてもらうには、地域ぐるみの取り組みがあったといいます。

中島寿之さん

それはこちらの水槽。水温の低い場所に生息する深海のかには死ぬと水っぽくなり、ゆでると溶けてしまうそうです。

1メートルは超えています

そこで考え出されたのが、生きたまま調理すること。そのためには店に生かす水槽が必要だったというのです。水槽の水温は11度に保っています。

「昔は船も生かして持って帰らなかったから、商品価値がありませんでした。ただ船で漁をしていた人たちはタカアシガニはうまいというのです。そこで生かして持って帰り、店の水槽で生かす、これが確立したんです。1軒の店だけではなく、戸田の飲食店がそろって水槽で生かしておいしく食べてもらうことで、特産に育ったんです。タカアシガニは地域の宝。地域ぐるみで食べる仕組みを作り上げからこそ、今につながっています」

ところが年々数を減らす

午後3時。中島さんが「船が帰ってきたので行こう」と声をかけてくれました。戻ってきた漁船をのぞくと、タカアシガニや深海魚が入っていました。

底引き網の漁船です タカアシガニや深海魚も

タカアシガニは4匹でした。タカアシガニは水深150~250メートルの場所に生息し、底引き網で取るそうです。以前は1日で200匹以上取れることもありましたが、年々水揚げ量が減っているそうです。今では多くて50匹、まったく取れない日もあるということです。

大村真史さん

「数が減ったのは、取り過ぎではないかと思います。子どもを持っているかにや商品にならないものは、自主的に逃がしていますが、統一したルールが必要かもしれません。
タカアシガニは1メートル以上になるには何十年もかかるんじゃないかと思います。戸田では本当に大事な資源ですから、無くなるときついです」(底引き網漁船の大村真史さん)

中島さんは、市場などを通さず、漁船から直接タカアシガニを買っていました。以前から続く、この地域の習わしなんだそうです。

資源回復も地域ぐるみ

資源の回復に向けた取り組みも地域ぐるみで行っています。

放流用のタカアシガニの子供

こちらの飲食店兼土産物屋の水槽にいる小さめのタカアシガニ。資源を大切にしようと地域の人たちも、放流用のかにを用意しています。

中島幹仁さん

「このカニがあるから戸田にお客さんが来てくれます。タカアシガニでここの観光は成り立っています。だから飲食店や民宿なども放流に協力しています。資源を戻して、アフターコロナには、インバウンド需要にも期待したいと思っています」(水産物卸・中島幹仁さん)

地域の文化も

タカアシガニのお面も販売されています。もともとは地域に伝わる魔よけだったそうです。今では地元の子どもたちがお面に絵を描いて楽しむことも少なくないそうです。

お面は20~30分ゆでたうえで洗って天日干し、そのあと丁寧に毛をたわしでこすって産毛などを落とすそうです。観光客にも人気だそうです。

地域の人たちが育んだタカアシガニの文化。人々の結びつきとともに深海魚の街には欠かせないものとなっています。

シリーズ「静岡かに情報」。第8弾は、浜名湖の多様なカニ、メガネカラッパなどをご紹介します。

  • 長尾吉郎

    静岡局 ニュースデスク

    長尾吉郎

    1992年NHK入局
    初任地大分局で釣り覚える
    報道局社会部・広報局など
    ヤエンによるイカ釣り好き

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