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袴田事件 特別抗告で長期化も? 制度の課題を元裁判長語る

制度の課題とは?詳しく解説  “証拠開示の規定がないこと” “検察の不服申立て=抗告が禁止されていないこと”
  • 2023年03月16日

57年前、静岡県で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で、死刑が確定した袴田巌さんの再審=裁判のやり直しが3月13日に認められました。検察は不服があれば3月20日を期限に最高裁判所に特別抗告することができますが、袴田さんの弁護団は、「袴田さんは87歳で、審理を継続させることは無用の負担と苦痛を与える」として東京高等検察庁に対し特別抗告しないよう申し入れました。

再審に関する法律の見直しを訴える市民グループは会見し、「審理の長期化を防ぐには再審に関する法改正が必要だ」と訴えました。

この再審制度の課題をどう考えればいいのか、元裁判長に聞きました。

村山元裁判長とは?

9年前、袴田さんの裁判のやり直しとともに、釈放も認める決定を出し、おととし退官した村山浩昭元裁判官。現在は弁護士です。

村山浩昭 元裁判官

裁判長として袴田事件の審理にあたり、検察に、これまでに出していない証拠を開示するよう積極的に働きかけ、「5点の衣類という最も重要な証拠を捜査機関がねつ造した疑いがある」と指摘。当時の捜査を厳しく批判しました。

5点の衣類という重要証拠 ねつ造の疑いを指摘した

(村山浩昭 元裁判官)「知れば知るほど『二度とこんなことがあってはいけない。早くたださなければいけなかった』と思いました。私が再審法改正のために、何か力になれるのであれば努力したいと思った原点です」

今の再審に関する制度の課題は?

村山さんが制度の課題として指摘したのが主に次の2点です。

証拠開示の規定がないこと

検察の不服申立て=抗告が禁止されていないこと。

【証拠開示の規定がないことについて】

(村山浩昭 元裁判官)「いまの制度では、証拠開示の規定がないため、裁判官の裁量によって開示される証拠に大きな差が出ます。有罪となった裁判の段階で出されていたら、結論が変わっていたかもしれません。重要な証拠が1個でも2個でも出てきたら、そのこと自体が重大な問題で、法律でルール化することが必要だと思います」

「証拠は、検察官のものではなく公的なものです。警察や検察が収集したと言っても、国家の予算で人権を保障するために集めた物なので、我が物顔にしてはならない」

【検察の不服申立てが禁止されていないことについて】

(村山浩昭 元裁判官)「検察の不服申立てによって、再審が始まるまでに長い年月が費やされ、迅速な救済を大きく阻んでいる。検察は言い分があれば、やり直しの裁判で主張すればいい。検察官個人の問題というより、検察の組織としての意思決定になるので、運用で変わることは考えにくい。法律で禁止するしかない」

「日本が刑事関係の法律を作る際に参考にしたドイツでは1964年に抗告を禁止していて、日本の再審制度は世界的にも立ち遅れている

村山浩昭 元裁判官

“法改正の議論必要”

日本の再審に関する法律は70年以上にわたって一度も改正されていません。

「袴田事件」では、「無罪かどうか」ではなく、その前段である「裁判をやり直すかどうか」の審理だけで実に40年以上も費やしています。

いまの制度が無実を訴える人のためのものになっているのか。村山さんはこう訴えています。

(村山浩昭 元裁判官)「えん罪被害者の早期救済のためにも、今回の裁判所の決定を機に法改正に向けた議論を進めるべきだ」

3月14日 高裁の決定文を見る袴田さん
(提供 袴田さん支援クラブ)

「袴田事件」で検察が抗告できる期限は3月20日。袴田さんの弁護団は「袴田さんは87歳で、審理を継続させることは無用の負担と苦痛を与える」として、東京高等検察庁に対し特別抗告しないよう申し入れています。

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