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【解説】“袴田事件”審理終わる 決定の行方は?

半世紀以上「無実」を訴え続ける袴田さんに再審への扉は開かれるのか
  • 2022年12月12日

56年前に今の静岡市清水区で起きた強盗殺人事件をめぐり、再審・裁判のやり直しを求めてきた袴田巌さん。高裁でのすべての審理が終わりました。争点を担当記者が解説します。

袴田事件とは

56年前の昭和41年6月、今の静岡市清水区でみそ製造会社の一家4人が殺害された事件。当時30歳の袴田巌さんが逮捕され、その後、強盗殺人などの罪で死刑判決が確定しました。

 56年前の現場 今の静岡市清水区 

この事件をめぐり、再審・裁判のやり直しを求めてきた袴田さん。12月5日に東京高等裁判所を訪れ、裁判官と面会。この日をもって高裁での審理が終わりました。

姉のひで子さんは記者会見で「巌は、56年間も無実を訴えてまいりました。どうか再審開始のご判断をお願い申し上げます」と訴えました。

無実を訴え続ける袴田巌さん

審理の争点は?

小田葉月記者 審理の中心となっているのは、有罪の決め手となった血の付いた「5点の衣類」です。これらは事件から1年2か月後に、みそ製造会社のタンクから見つかったものです。

検察は「袴田さんが犯行時に着ていて、その後隠したものだ」と主張しています。この衣類についた血痕の色について事件当時の捜査資料では、「濃い赤色」などと記され、赤みが残っていたことがわかっています。

これに対し、弁護側は、血液をつけた布をみそに漬ける実験を繰り返し実施。その結果から、1年以上みそに漬かった状態で血液の赤みが残ることはありえず証拠がねつ造されたと主張しています。

みそに漬けられた血痕に赤みは残るのかどうか」。これが審理の最大の争点となっています。

血痕の赤みは残る?

大きなポイントの1つは、検察側が去年9月から独自に行った、血痕の付いた布をみそに漬ける実験の結果です。

11月1日、東京高裁の裁判官らが実験を視察するため静岡地検を訪問しました。犯人のものとされる衣類が発見されるまでの期間と同じおよそ1年2か月にわたってみそに漬けられた血痕の色の変化を確認しました。

画面左側が犯人のものとされる衣類。右側が、検察の実験で1年2か月間みそに漬けられた血痕です。裁判官の視察に立ち会った弁護団が撮影しました。

この結果について、弁護側と検察は、それぞれ次のように主張しています。

弁護側は「赤みが消えている様子が確認できた」としています。その根拠として専門家の鑑定結果から、「みそ特有の高い塩分濃度と弱酸性の性質によって、血液の赤みの原因であるヘモグロビンの性質が変化したり、分解されたりした」と説明しています。その上で、「時間がたつと赤みがなくなることは検察の実験でも裏付けられた。証拠がねつ造されたことがうかがえる」と主張しました。

検察は実験の結果について、「一部には赤みが観察され、長期間みそに漬けた血痕に赤みが残る可能性を十分に示すことができた」と反論しています。その上で刑の執行停止の取り消しと身柄の収容を求めました。

裁判官との面会で 袴田さんは?

袴田さんは47年以上拘束された影響で、十分な会話ができない状態が続いていますが、裁判官とのやりとりについて姉のひで子さんは次のように述べています。

姉のひで子さんの記者会見

「お体はどうですか」とちょっと優しい言葉をかけていただきまして、そしたら「死刑廃止をどうのこうの」って言い出したのよ。

「おれは無罪になっているんだ」とか、そんなようなことを言っていました。やっぱり妄想の世界にいるから。

ものすごく優しく巌に接してくれた。それが大変うれしく思いました。再審開始になると思っています。

気になる決定の行方は?

裁判所は協議の中で、「来年3月末までに決定を出したい」と明言した上で、1か月前にはその日時を告知する考えを示したということです。

半世紀以上にわたって無実を訴え続けてきた袴田さんに、再審への扉は開かれるのか。裁判所の判断に大きな注目が集まっています。

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