NHK静岡 三上弥アナウンサー 鉄道150年 SL
- 2022年12月12日
「鉄道150年」の年、静岡県は、台風15号に伴う記録的大雨の被害を受けました。
SLの運行で知られる地方鉄道は、いまだ全線復旧には至っていません。
台風15号に伴う記録的な大雨 静岡県 「秋分の日」の夜から
9月23日(金)「秋分の日」の夜から翌朝にかけて、台風15号に伴う記録的な大雨の影響で、静岡県は各地で甚大な被害を受けました。公共交通機関で復旧まで最も長い時間がかかっているのが、静岡県の私鉄・大井川鉄道です。蒸気機関車・SLの運行や、旧型電車の運行で知られています。この鉄道会社では、大井川本線と井川(いかわ)線の合わせて46か所で、倒木や土砂流入などの被害を受けました。
「秋分の日」の夜に雨が激しく降った時間帯は、井川線の最終列車が上り・下りとも終着駅に到着したあとです。大井川本線では、上り・下りとも最終列車の1本前までは終着駅に着いていました。最終列車が始発駅を出発する前に雨量が規制値を超えたため、上り・下りとも運休にしたということです。このため、旅客輸送中の列車が雨による被害に遭うという事態は回避されています。
鉄道沿線46か所の被害 公的支援を求める訴え
道路の復旧工事が行政主導で進むのに対して、鉄道の場合は、会社の負担で進めることが原則です。取材を進めるなかで、被害を受けた46か所の復旧作業をすべて自社の力だけで進めるのはなかなか難しいという社長の話があったため、「災害からの鉄道復旧には公的支援も必要」という被災した当事者の訴えを静岡県向けのニュースと全国放送の「列島ニュース」で伝えました。
「復活運転」目指すSL 復旧・復興の「旗印」に
10月19日(水)の「NHKニュース おはよう日本」7時台・中継企画で伝えたのが、
復旧・復興の「旗印」にしたいというSL修繕に向けての動きです。
修繕費用の一部を寄付で募るクラウドファンディングを活用していて、石炭と水を積む「炭水車(たんすいしゃ)/tender」や、石炭を投入する「焚口戸(たきぐちど)」が良い状態で残っていることも紹介しました。
修繕には約3億円の費用が見込まれる一方、新型コロナの感染拡大の影響で利用者が大幅に減ったことから、鉄道会社は、3分の1にあたる1億円を目標にクラウドファンディングで寄付を募りました。
その結果、11月30日までの2か月余りの期間に、県内外の鉄道ファンなど4283人から、8356万円あまりが寄せられたということです。
鉄道の沿線は、台風15号に伴う記録的な大雨の影響で線路に土砂が流れ込むなどの被害を受け、現在も復旧作業が進められていて「復活運転」=動態化(どうたいか)の取り組みは、復旧・復興の旗印、いわばシンボルとして位置づけ、支援を呼びかけてきました。
蒸気機関車の文化継承目指す
SLの動態化を目指すクラウドファンディングは、当初、大井川鉄道が創立100年を迎える令和7年の営業運転を目指して、ことし・令和4年9月20日に始まりました。記録的な大雨による被害を受けたのは、「秋分の日」の夜からなので、クラウドファンディング開始3日後ということになります。
もともと創業100年という節目を目指して始めた取り組みが、偶然、災害からの復旧・復興や、日本の鉄道開業150年とも重なったという流れです。
こうした状況を受けて、鉄道会社は、「取り組みへの応援とともに、被災に対する励ましのことばを多数いただき御礼申し上げます。国内では新しく造ることがなくなった蒸気機関車の文化継承にもつなげていきたい」と話していました。
今後も、駅の募金箱に寄せられた支援や、個別に寄せられた寄付は受け付けるということです。記録的大雨の被害を受けたあとも、創立100年を迎える令和7年の営業運転を目指しています。
NHK発! 鉄道150年
日本の鉄道開業からちょうど150年を迎えたのは、いまの暦・太陽暦で「10月14日」がちょうど「その日」に当たります。鉄道会社やNHKは10月に、「鉄道150年」にちなむ取り組みや催事を集中して実施しました。NHK静岡放送局の「鉄道150年」は、鉄道の愛好家だけでなく、ふだん通勤・通学・通院・旅行・行楽などで利用する方々と一緒に楽しもうという試みです。
筆者自身は、都市間の移動や、取材先と職場の行き来、旅行で鉄道を利用することはあっても、趣味で「乗るため」「撮るため」だけに行くということはありません。一方、これまでの勤務地では、高速交通網や「地域の足」、開業、廃止・廃線、最新技術などを取材するなかで、鉄道に触れてきました。
今回は、これまでの蓄積をいかして、「NHK発! 鉄道150年」に関わった次第です。静岡県向けに4本のニュース企画と、全国向けに2本の企画を放送しました。あわせて、映像取材グループが提案・取材している「み~つけた」でも、鉄道シリーズを組んでいます。
反応多い鉄道記事に「心寄せて」
10月からNHKのウェブサイトやTwitterで発信した記事の反応を拝見しているうちに、愛好家だけでなく多くの方々が鉄道に関心を持っていることを知りました。公共交通機関としてふだん利用する方が多いことの証左なのかもしれません。これまでテレビジョンで伝えてきた情報をWEB特集でも改めて紹介できればと考えています。