2017年06月06日 (火)

【シブ5時探偵団】急増! "仮想通貨"投資トラブル (6月5日 放送)


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シブ5時探偵団
急増! “仮想通貨”投資トラブル (6月5日 放送)

「仮想通貨、今買えば値上がり確実!」といった宣伝文句、ネット上で見かけたことはありませんか? 今、“新しい仮想通貨”への投資を勧誘されて購入したものの、取り引きできるようにならず、返金も交換もできなくなるトラブルが相次いでいます。いったい何が起きているのか、取材しました。(報道局・岡田真理紗記者)

 

“新しい仮想通貨”をセミナーで購入

NHKが仮想通貨をめぐる投資のトラブルについて情報提供を呼びかけたところ、さまざまな情報が寄せられました。そのうちの1人、20代の男性に直接話を聞くことができました。もともと仮想通貨に関心のあった男性は、2年前、将来のために知っておきたいと“仮想通貨セミナー”に参加。セミナーでは講師から、「仮想通貨は市場全体が成長している」といった一般的な説明がありましたが、終盤になって「今いちばん熱い、新しい仮想通貨」とのふれこみで、イギリスの会社が開発しているという仮想通貨の説明があり、「この場で申し込めば割引価格で買える」と購入を促されたということです。

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「1年後に取引所に上場する。持っておくだけで2倍、3倍、4倍にもなる」という講師の話を信じた男性は、120万円分を購入。男性によると、若い女性や大学生などのセミナー参加者のほぼ全員が購入を申し込んだといいます。そして、「上場は2016年9月」と言われ、上場後の値上がりを期待して待っていました。しかし、上場予定日の当日になって、開発元から「上場を延期する」との連絡が来たのです。「システムにぜい弱性が見つかった」というのがその理由でした。


上場延期で取り引きできず

どういうことなのか? 一般に、仮想通貨が売買されるようになるには「取引所」に上場される必要があります。株式や為替と同じように取り引きによって市場価格が形成され値段が上下するのが特徴です。しかし、今回のように取引所に上場されないと、「データ上」は仮想通貨を持っていることになっていても、取り引きやほかの通貨への交換ができず、利益を得ることはできなくなります。

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上場延期の知らせに驚いた男性が開発元に問い合わせたところ、「2、3か月待ってほしい」との返事がありました。しかし、その期間を過ぎても連絡がなかったため、セミナーを主催した団体に連絡。すると、「自分たちが開発しているわけではないので、開発元に聞いてほしい」との返事が来ました。その後、開発元から「5月に上場する」という連絡が来たものの、示された日程を過ぎても上場されなかったということです。

「知識がなかったので、すでに値上がりしている『ビットコイン』を例に出されると、ほかの仮想通貨が出てきて値上がりしてもおかしくないと思ってしまった」、そう男性は振り返ります。
そして、「『今買ったらお得』『値上がりが待っている』といったあおり文句は多かったが、損失の可能性や上場できなくなった場合のリスクの説明はなかった」と話しています。


開発元を追ってみると

それでは、男性が購入した仮想通貨とはいったいどんなものなのか? サイトを見ると、「アンティークコインで価値が担保されているので価格急落の可能性が低い」と書かれ、事前販売の価格は「50円から」、市場取引が始まったときの予想価格は「200円から400円」、つまり4倍から8倍に値上がりするという予想が書かれていました。そして、開発している会社の所在地としてイギリス・ロンドンの住所が掲載されていました。

この住所を調べると、そこは“バーチャルオフィス”であることがわかりました。現地を訪ねると、ビルの1階に、いわゆる「コワーキングスペース」(貸しオフィスや共同オフィス)がありました。仮想通貨開発元とされている会社の名前を受付担当者に告げると、「確かにここに登録している」との返事。しかし、「会社の人間は見たことがない」とも話していました。少なくともこの場所では開発会社の実態はわかりませんでした。

次に、イギリス政府のサイトで開発元会社の登記情報を探してみました。すると、2016年7月31日時点で「休眠会社」の状態である、という情報が出てきました。9月の市場公開を目指して開発を進めていると説明していたのに、なぜ直前に休眠状態だったのか? 不可解な点が浮かび上がりました。

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セミナー主催者は

セミナーを主催した団体はこのような実態を知っていたのか? 文書で取材を申し込んで、この仮想通貨を紹介する前にどのようなチェックを行っていたのかをたずねたところ、「なすべきチェックは行っており、責任はないものと考えている」「仮想通貨を紹介したが『購入の取次ぎ』や『勧誘』を行ったことはない」という回答がありました。しかし、詳しいチェックの内容は分からず、セミナー参加者の説明とは食い違っています。

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また、「公開できなくなる可能性も含めて説明するなどの十分な情報を開示しなかったのではないか」と聞いたところ、「公開が遅れること自体は大きな問題であるとは考えていない。公開が延期されても価格が上昇した仮想通貨もある」との回答。「いずれの仮想通貨を紹介する場合でも、必ず値段が上がるといった確定的な情報を提供していないし、限られた時間の中で、仮想通貨の購入が自己責任であること、損失が生じる可能性があることをお伝えしている」としています。しかし、参加者によると、損失リスクの説明はほとんどなかったということで、ここでも見解が分かれています。


専門家の見方は?

国民生活センターによると、仮想通貨への投資をめぐるトラブルは2014年度は194件だったのが、2016年度は634件に急増しています。消費者トラブルに詳しい荒井哲朗弁護士によると、セミナーで勧誘されて契約したものの入金後に連絡がつかなくなったり事前の説明と異なったりするといったトラブルが多いということです。「セミナーのほとんどの時間で値上がりするという話をしたあとで、少しだけリスクについて触れていたとしても、きちんと利益と損失について説明したことにはならない。総合的に見て利益を強調し商品を購入したほうがよいと断定的な判断を提供する内容であれば、民法上の不法行為に該当し違法性が高い」と荒井弁護士は指摘しています。

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一方で、ことし4月に施行された改正資金決済法(いわゆる仮想通貨法)では、仮想通貨は投資商品とは位置づけられていません。このため、金融商品では禁止されている「絶対もうかる」といった説明について直接的な規制はされていないのです。荒井弁護士は「仮想通貨は株式などの金融商品と類似する性質を持っていて実質的に投資目的で取り引きされているのに、勧誘方法には直接の規制がない。被害を防ぐ観点からは今の法規制は不完全で、何らかの対応が必要だ」としています。
自分だけが知っているお得な情報?
取材で出会った人たちは「だまされやすい」といったイメージとは違い、むしろ投資やITに感度が高く、まだ世の中に知られていない新しい情報を求めてセミナーに参加している印象を受けました。注目を集めている「仮想通貨」は、超低金利時代の今、魅力のある投資対象と映るのかもしれません。しかし、新しいものであるからこそ、慎重で十分な見極めが必要だと言えます。

投稿者:シブ5時 スタッフ | 投稿時間:14:11


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