女子学生が見た議員のシゴト

若者の政治離れ。
今や当たり前のように聞かれるこのことば。そんな中、岡山県内で、議員のもとでその仕事を体験するインターンシップに参加する女子の大学生が増えているとの情報が。女子学生は「議員のシゴト」に何を感じたのか。
(岡山放送局記者 杉山大樹)

増える女子学生インターン

増える女子学生インターン

まず向かったのが、インターンの前に行われる研修会。岡山県と香川県で参加を予定している大学生が70人も集まっていた。主催しているNPO法人に聞いてみると、参加者はこの2年で倍近くに増えたそうだ。

中でも目立ったのが女子学生の姿だ。実は筆者も、10年以上前に議員のもとでのインターンに参加した「経験者」。自分が参加したころは男性が多かったような気がするが、今は参加者の7割以上が女子学生だという。動機を聞いてみるとこんな声が聞かれた。

「高校の授業で選挙について取りあげられ興味を持った」

「『子連れ議員』や『女性議員へのヤジ』などのニュースを見て、女性と政治の関係が気になった」

インターンで議員を身近に

実際に始まったインターンで私が取材したのは倉敷市議会議員の事務所。岡山市内の大学に通う1年生の女子学生2人が、春休みを利用して週に2回ほど、議員の仕事を体験していた。

市議会の委員会では、去年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた倉敷市真備町の復興計画についての議論を傍聴。

その後、議員と一緒に地元の児島地域の商工会議所に向かった。この地域はデニムが特産。デニムにどう付加価値をつけ、町おこしにつなげるのか、意見交換の様子を見学した。議場だけでなく、さまざまな場所で活動する意義を感じたという。

インターンで議員を身近に

「スケジュール帳も常に埋まっていて、いろんな活動を通じていろんな視点で考えられると思った」

「地方議員という仕事の存在は知っていたが何をしているかわからなかったけれど、気さくな人も多く、遠い存在には感じなくなった」

受け入れた議員側にとっても、若い世代、特に女性の考え方を知ることができる機会は貴重だという。

「地方議会でも、待機児童など子育て施策をどうするかは議論の焦点になっているので、学生を受け入れることで若い人たちの考え方やアイデアを取り入れていきたい」(インターンを受け入れた中西公仁議員)

インターンで議員を身近に

体験したからこそ感じた“壁”

政治との距離を縮めているように見えるインターンシップ。しかし、経験したほかの女子学生に聞いてみると、こんな声もあった。

「議員の支援者は年配の人ばかりで『なぜ若い人がいるの?』という視線を向けられた」

「議場で女性が発言すると、年配の議員がヤジを飛ばしていて怖かった。私だったら何も発言できない」

体験したからこそ感じた“壁”

大学1年生の贄田桜子さんは、インターンに参加したことで、それまで以上に政治との距離を感じるようになったという。子どものころからニュースや国会中継をよく見ていたという贄田さん。政治家の道を志してみたいという思いを持ったこともあった。

「議員は自分の一言で制度や法律、条例がつくられたりして、素敵な仕事だと思っていたので興味があってインターンに参加してみました」(贄田さん)

しかし議員の仕事を「体験」してみると、出会った議員のほとんどは男性だった。そして、議員活動の中心は、地元の企業や団体のあいさつまわりや、地域の行事に参加することだと知った。

みずからが実現を目指す政策を訴え、それが支持されれば議員になることができると思っていた贄田さん。しかし、実際に目にした議員の姿は、それとはかけ離れていると感じたという。インターンシップを終えた直後、贄田さんは、将来の職業の選択肢から、議員を消した。

「集会でのあいさつも男性議員が先で女性は最後。いまだに男性社会で年功序列が強く、年上のほうが有利な社会なんだと感じました。今は議員になろうと思わない」(贄田さん)

体験したからこそ感じた“壁”

政治離れは若者だけのせい?

若者の政治離れ。
どこか若者側に原因を求めるニュアンスに聞こえるこのことば。しかし、取材した女子学生たちは、選挙権年齢の引き下げなどをきっかけに政治に興味を持ち、政治の現場や政治家のリアルを率直に知りたいと考えていた。

そして、知れば知るほど、政治から離れていく女子学生も、そこにはいた。

なり手不足が深刻な今、真剣に考えなければいけないと思う。

政治離れは若者だけのせいですか?

 
  
【3月20日岡山で放送 動画:4分43秒】
 
市川 不二子

岡山放送局

杉山 大樹

鳥取局、大阪局スポーツ担当を経て岡山局
現在、行政取材や選挙などを担当
学生時代、国会議員と市議会議員のもとでインターン

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