「変えようよ、私たちで」
立ち上がった女性たち

知っていますか?あなたのまちの議員の数を。全国の地方議員は3万2,000人余り。このうち女性議員は4,200人余りで、全体の13%ほどにとどまっている。
「女性議員が増えれば、議会はもっと女性の関心を集めることができるのではないか」
長野県の女性たちが立ち上がった。(長野放送局記者 大場美歩)

新人がいない 相次ぐ無投票当選

きっかけは、相次ぐ無投票だった。

長野県内では今年1月、長野市のベットタウン、須坂市で行われた市議会議員選挙で立候補者が定員と同数の20人にとどまり、市政発足から65年、初めての無投票となった。

無投票は、いまや人口の少ない町村の議会だけでなく、市議会でも深刻だ。

新たな立候補者の少なさも指摘されている。須坂市の場合、立候補した20人のうち新人は2人。前回(4年前)、新人は8人いた。高齢などを理由に引退する議員が相次ぐ中、新たな担い手はあらわれない。

今回の統一地方選挙、長野県では34の市町村で議員選挙が行われる予定だが、このうち複数の選挙で無投票になるのではないかと指摘されている。

「議会に新たな価値観を」

無投票となった市議会では、検討会を立ち上げて原因や対策を探る動きもある。しかし、市民の参加は限られ、人任せの風潮は広がるばかり。

こうした状況を変えようと、今年1月26日、市民を対象にしたシンポジウムが安曇野市で開かれた。企画したのは県内のさまざまな自治体で活動する30代から40代の議員たち。しかも、多くは県外から移住してきた議員たちだ。

各議会では、いわば「マイノリティー」の存在の彼らが、市町村の垣根を越えて集まった。

「女性や子育て中の人にこそ、議会に関心を持ってもらいたい」
「さまざまな年代、性別が参加する、多様性のある議会にしたい」

およそ40人の参加者を前に、議員たちは率直な思いを訴えた。

安曇野市議の小林陽子さん(47)は、2児を育てる、子育て中のママさん議員。

栃木県出身の小林さんは8年前、東日本大震災を機に安曇野市に移住した。

「議会に女性や若い世代の議員が少ないのを見て、自分も女性、農業者、子育てをしている者として声を届けなければいけないなと。思い切って議員に立候補しました」

自分がなぜ議員になったのか、1人の女性として語った。

白馬村議の田中麻乃さん(35)は、沖縄県出身。

スキーの国体選手だった田中さんは、スキーが縁で6年前、夫と2人の子どもと共に白馬村に移住した。

「議員のイメージを変えたい。議員は偉い人がなるものではなく、普通の人がなれるもの。自分の意志と覚悟があれば立候補できる。子育て中であったり、移住だったり、自分の立場だからこそできることを心がけています」

議員は決して特別でない。むしろ、自分たちで行政を変えることができると訴えた。

シンポジウムでは、議員と参加者の意見交換も行われた。
参加者からは「議員の仕事や、やれることがイメージできないのが問題」「近づきにくい雰囲気がある」などの声が上がった一方、「議員は身近な存在ではなかったが実際に話を聞いたらかっこいいと思った」といった意見も聞かれた。

長野県内では、このほかにも女性の議員を増やそうという取り組みが始まっている。

今年2月下旬には、飯綱町で「女性議員を増やそう!!」と題したシンポジウムが開かれ、県内の女性議員や専門家など、およそ60人が集まった。

「女性が加わることで、子育てや教育、介護など、女性の関わりが深い分野にも議論の幅が広がる」
「女性の議会への関心が高まる」

女性は議会を変革する可能性を秘めているといった声が聞かれた。

一方で、いまの議会について、「男性議員の働き方をモデルにしているので、議員の働き方自体を変える必要がある」といった声も上がった。

女性議員を増やすために

特効薬がないなか、どうすれば議会は活性化するのか。地方自治に詳しい山梨学院大学の江藤俊昭教授は、次の2点が重要だと指摘する。

(1)「議会の魅力を伝える」
議会が何をしているのか、積極的に発信していくことが大切。議員がどんな活動をし、どんな役割を果たしているのかわからないと、定数や議員報酬を減らそうという話にもなり、ますます新たな立候補者が生まれにくくなる。

(2)「条件を整える」
かつて地方議員は、仕事を退職した人が年金をもらいながら務めるケースが多く見られた。いまは働く人の年齢が上がっているので、議員報酬を上げる、議会開催の在り方を柔軟にするなど、議員になりやすい条件を整えることが求められている。
特に女性は、育児や介護を中心になって担うことが多く、そうした部分を支援するための費用の補助など環境整備や制度の在り方について議論していく必要がある。

地方議会の可能性

日本社会はいま、「変化」のかじを大きく切ろうとしている。情報通信技術が発達し、働き方が変わり、外国人材の受け入れも始まる。外国人や性的マイノリティーの人たちの権利を守る動きも広がりを見せている。社会全体の多様化が進んでいる。これまでの価値観を変えるチャンスともいえる。

人口減少が進み、地域の活力が低下している地方で、いま1割強にとどまっている女性議員が増え、それが普通だと受け止められるようになれば、議会はきっと、いまより多様化する。

いろいろな環境で暮らしてきた、さまざまな考えを持つ議員でつくる議会となれば、それこそが議会を変える突破口となるのではないか。地方議会にはその可能性が十分にあるのではないかと、女性たちへの取材を通じて期待を抱いた。

ただ、最初の一歩は、彼女たちのように、この問題を私たちの課題として一人ひとりが人任せにせず、考えていくということなのかもしれない。

大場 美歩

長野放送局

大場 美歩

長野県高森町出身 長野局勤務9年目 信州を深く知る 人口減少社会で、信州の農業や議員のなり手不足など、中山間地域が抱える課題を継続的に取材

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