どう向き合う なり手不足

地方議会は「なり手不足」という深刻な課題に直面している。直近の選挙で定員割れになった町や村は、全国で11に上った。なり手不足の解消に妙手はあるのか。2つの議会の例を追った。

ライバルをみずから育ててでも(北海道)

 
  
(動画リポート 帯広放送局:兼清光太郎)
 

北海道浦幌町。昭和30年代、炭鉱で栄えていたころは1万4000人余りが住んでいたが、都市部への流出などで現在は4700人余り。ピーク時の3分の1にまで減った。

衝撃が走ったのは、前回(4年前)の町議会議員選挙。定員割れを防ごうと、選挙前に定数を2人減らして11人にしたものの候補者が足りず、欠員が1人出てしまった。

「このままでは、議員のなり手がいなくなってしまう」

強い危機感から、10人の議員全員が党派を超えて結成したのが「チーム議会」。住民との対話を重視して、議員全員で地域を回り、住民ひとりひとりから意見を聞く場を設けた。こうした議員との対話に参加したのをきっかけに、立候補を考えるようになった若者もいる。

「チーム議会」の取り組みを始めてから4年。こうした新人の登場もあり、4月に迫った次の選挙では、定員割れは回避できる見通しだ。

選挙戦になれば現職の議員たちは、言わば自ら育てた新人たちと議席を争うことになるが、町のためならそれもいとわないと言う。

「百人委員会」から議会へ(鳥取県)

 
  
(動画リポート 鳥取放送局:吉村美智子)
 

4月の統一地方選挙の対象ではないが、鳥取県には住民みずからが町の政策を考える取り組みを通じて、議員のなり手が生まれた町がある。

県の山間部にある智頭町。この町で行われている民間の保育事業では、子どもたちを自然の中で育てる方針が人気で、東京や大阪から移住してくる家族がいるほどだ。

こうしたユニークな事業を生んできたのが、町の「百人委員会」だ。住民100人が参加してみずから考えた事業を町に提案。政策決定に関わる。この百人委員会を経て議員になった人もいる。

町議会の議長は「予算がつくプロセスやシステムを議員になるまでに体験している。人材を育てるという意味で、よい意味合いの委員会だと評価している」と話す。

今では12人の議員のうち4人が百人委員会の経験者で、住民と議会の懸け橋となっている。

解説「地方自治の担い手は住民自身」

 
  
 

世論調査で「市区町村の地方議員になりたいか」と聞いたところ、 90%が「なりたくない」と答えた一方、「市区町村の議会は必要だと思うか」という問いには、 87%が「必要」だと回答した。

旧自治省で選挙部長を務めた片木淳さんは、この結果について、「『お任せ民主主義』の最たるものだ。私たち住民自身が地方自治の担い手だと自覚し、議員も危機感を持つべきだ」と話す。

そのうえで「特効薬はない。地域のつながりが薄まり、地方議会に地域の名士が出る時代ではなくなっている。議員は自分たちの活動を住民にもっと理解してもらうため、ネット時代にあった情報発信が必要だ」と指摘する。

多くの自治体で議員選挙が行われる統一地方選挙。この機会に改めて、自分のまちについて考えてみてはどうだろうか。

【おはよう日本 3月13日放送:この記事は放送を基に再構成したものです 詳しくは動画でご覧ください】

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