1票の価値はいくら?

あなたの1票には、どれくらいの価値があるか考えてみたことはありますか? 気づいたら投票に行かなかったという経験のある人もいるのではないでしょうか。
18歳以上の国民に等しく与えられている、「当たり前」の1票の権利だからこそ、その価値に気づきにくいということもあると思います。
衆議院選挙の1票の価値をわかりやすく実感してもらうために、今回、専門家に聞いてみましたが、色々な考え方があるようです。いくつかの例を紹介します。

ニッセイ基礎研究所 高山武士 准主任研究員

高山武士 准主任研究員
高山武士 准主任研究員

高山研究員が考える一票の価値は・・・『約400万円』

高山研究員は、国の予算の使い方は有権者の投票結果で決まる、という考え方に基づいて1票の価値を計算しています。

詳しい計算式は、
国の一般会計 年間約100兆円÷有権者約1億人✕衆議院の任期4年

これで計算すると、1票の価値は約400万円ということになります。
高山研究員は、「選挙における有権者の投票で国会議員が選ばれ、その国会議員が国の予算の使い方を決めるという構図を単純化し、少し大胆ですが、衆議院の任期期間(4年)における国の予算の使われ方は有権者の1票によって決まるという仕組みをこの計算式で表現しています」と話しています。

行動経済学が専門 滋賀県立大学 村上一真 准教授

村上一真 准教授
村上一真 准教授

村上准教授が考える一票の価値は・・・『約205万円』

滋賀県立大学の村上准教授は、1票の価値をお金に換算できれば、投票に行かないことがどれほどもったいないことなのか知ってもらえるのではないかという思いから、独自の計算式を発案しました。そこでも、選挙の結果が国の予算の使い方に影響するという考え方がベースになっています。国会議員が国会で審議をして予算の使い方を決めるという仕組みを式に反映させたということです。

詳しい計算式は、
国の一般会計(国債費を除く)÷国会議員の数
=国会議員1人が1年間で責任を持つべき予算(以後「責任予算額」とする)
責任予算額 ✕ 衆議院議員の定数465 ✕ 衆議院議員の任期4年÷ 有権者約1億人

この計算式に今年度(令和3年度)の国の予算を当てはめて試算すると、1票の価値は約205万円となります。村上准教授によりますと、「投票する権利を使わないということは、納税はするのに税金の使い方の決定に関わらないということでもあり、あまりにもったいない。一票の価値を金額で表すことで、投票へのインセンティブを高められないかと考えました」ということです。

政治学が専門 明治大学 井田正道 教授

井田正道 教授
井田正道 教授

井田教授が考える一票の価値は・・・『約600円』

井田教授は、衆議院選挙の経費にあてられる国の予算600億円が、選挙の『必要経費』だという考え方に基づいて一票の価値を計算しています。

詳しい計算式は、
衆議院選挙のための予算600億円÷有権者約1億人=約600円

衆議院選挙のための予算約600億円は、有権者に送る「投票所入場整理券」の発送や、投票所・開票所の事務経費などに使われます。井田教授は、「選挙を行うために有権者1人につき600円の経費がかかっていると言える。棄権するということは、600円の入場券を無駄にする行為、と考えることができるのではないでしょうか」と話しています。

経済学が専門 追手門学院 奥井克美 教授

奥井克美 教授
奥井克美 教授

奥井教授が考える一票の価値は・・・『多くの人は0円以下かもしれません』

奥井教授によると、1960年代にアメリカの政治学者ライカーとオードシュックが論文で発表した、1票の価値を割り出すための有名な数式があるそうです。数式は、投票によって有権者が利益を得る確率と投票にかかるコストを差し引いて、1票の価値について考えるものです。奥井教授によると「この数式で考えると、投票によって有権者が利益を得る確率は極めて低い。一方で、投票には、投票所へ行ったり、予定を調整したり、人によっては移動のために交通機関を使ったりとコストがかかる。そのため、一票の価値を計算すると、多くの人はマイナスになるかもしれない」ということです。
では、投票に行くのは損なのでしょうか。すると奥井教授は、「1票の差で選挙の当落が決まることもある。選挙の結果は、のちの政治、国の政策に影響していくので貴重な1票の権利を決してむげにしてほしくない」と話しています。

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