投票のキホン

10月19日公示、31日投票の日程で行われる第49回衆議院選挙。
「選挙の投票方法がわからない」「期日前投票の時間・場所は?」「不在者投票の方法は?」など、投票の仕方にお悩みの方に選挙について1から分かりやすく説明します。

簡単です!1からわかる投票方法

ある日ポストに届いた1通の封筒。
衆議院選挙のお知らせの封筒のようだ。選挙が近くなると、「投票に行こう!」という呼びかけはよく耳にするけど、今ひとつよく分からない。私も投票できるの?どうやって投票するの?

誰が投票できるの

高校生(18)

この前、家に「投票所入場整理券在中」と書かれた封筒が届きました。
私、高校生なんですけど、投票できるんですか?

吉岡記者

はい。できますよ!

5年前に選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられました。高齢化が進むなか、より多くの若者に政治に関心を持ってもらおうというのがねらいです。4年前・前回の衆議院選挙では、有権者1億609万人のうち、2.2%にあたる237万人余りが18歳と19歳でした。

高校生(18)

投票って何だか難しそう…。誰に投票するか決めるのもだし、どういうふうに投票したらいいのか、今から緊張します。

吉岡記者

そんなことありません。少なくとも、投票の手順は難しいことはありません。

選挙が近づくと、選挙権がある人の元に市区町村から「投票所入場整理券」が届きます。

あなたの家にも届いていましたね。

自治体によっては葉書の場合もあります。

投票所入場整理券は3か月以上その自治体に住民票を置いている人に送られます。

高校生(18)

友達が最近引っ越したんですけど、今度の衆議院選挙、引っ越して3か月経っていなければ投票できないんですか?

吉岡記者

大丈夫です。できます!

転入届を出してから3か月未満の人はまだ新しい市区町村の選挙区で選挙人として登録が済んでいません。ですが、前に住んでいた市区町村で投票することができます。

実際に投票してみよう

高校生(18)

これから投票に行こうと思いますが、慌てないか不安です。

吉岡記者

はい。じゃあ、こちらの絵を使って投票の流れを説明しますね。

衆議院選挙に限らず、一般的な投票所を想像して描きましたので、実際にあなたが行く投票所とは異なると思いますが…。

高校生(18)

はい!お願いします。

吉岡記者

まず、入場整理券を持って投票所に行きましょう。

投票所がどこなのかは入場整理券に書いてあります。投票所に入ると、「受付の人」「選挙人名簿を確認する人(名簿対照係)」「投票用紙を手渡す人(投票用紙交付係)」の3人が座っています。

高校生(18)

いろんな役割の人がいるんですね。

吉岡記者

そうなんです。大切な1票ですから入念に確認するんです。

投票所には、このほか、投票所の責任者である「投票管理者」や、投票が正しく行われているかを確認する「投票立会人」も2人から5人います。

吉岡記者

投票立会人は、原則、その地区の有権者が選ばれるんですが、地域によっては過疎が進んで立会人のなり手不足が深刻になっているところもあります。

投票立会人は、朝から投票終了までずっと投票所に詰めていなくてはいけないので、報酬はありますが、結構大変なんですね。各地の選管では、若い世代の選挙への関心を高めようと18歳から20代の若者に立会人になってくれるよう呼びかけているところもあります。

高校生(18)

私の自治体はどうなのかしら…。

吉岡記者

話が横道に逸れちゃいましたね。では投票の流れの説明を続けます。

受付の人に入場整理券を渡して確認が済むと、投票用紙が手渡されます。

投票所には、横から覗かれないよう間仕切りの付いた記載台が置かれ、受け取った投票用紙に意中の候補者の名前を記入します。

記載台には候補者名が載った一覧が貼られていますから、投票所に着いて名前を忘れてしまっても大丈夫。

ここで注意しなくてはならないのは、2人以上の名前を書いてはだめ、ということと、「頑張れ!」とか名前以外のことを書いてはだめ、ということです。無効になってしまいますよ。

そうして、投票用紙を折り畳んで投票箱に入れて、完了!簡単でしょ!

吉岡記者

衆議院選挙では小選挙区と比例代表のそれぞれに投票しますので、投票用紙も2種類あります。

こちらは、前回の衆議院選挙の投票用紙の見本です。都の選挙管理委員会から借りてきました。

前回、東京都では、小選挙区をピンク色の紙、比例代表を薄い水色の紙にしましたが、今回は逆にするそうです。

触ってみてもらえますか。

前回衆院選の投票用紙

高校生(18)

何だかツルツルしていますね。

吉岡記者

鋭い!投票用紙、投票用紙と言ってきましたが、厳密には“紙”ではないんです。

高校生(18)

紙じゃない?!どういうこと?訳が分からない…。

吉岡記者

では、折り畳んでみてもらえますか。

高校生(18)

あ、すぐに開いてしまいますね。

吉岡記者

そうなんです。

これらの投票用紙は、よくある木材パルプで作られる紙ではなく、原料にポリプロピレン樹脂を使ったものなんです。

折り畳んでも自然と開くので、開票作業で仕分ける際に1枚1枚広げる必要がなく、作業のスピードアップにつながるメリットがあります。
また、偽造された投票用紙を計数機に通す際に見破ることもできるんだそうです。総務省に確認したら、国政選挙では昭和57年から使われていました。

衆議院選挙は1人2票

高校生(18)

さっき、衆議院選挙の投票用紙が2枚ありましたが、どういうことですか。まさか1人2票?

吉岡記者

そのまさか、です。

衆議院選挙では小選挙区と比例代表でそれぞれ投票します。小選挙区は全国に289あり、各選挙区で当選するのは1人。つまり、小選挙区の定員は289。一方、比例代表の定員は、全国11ブロックで合わせて176です。

小選挙区は、候補者の名前を書いて投票するので、簡単ですね。
その選挙区で最も多い票を得た候補者が当選です。

比例代表は、政党や政治団体の名前を書いて投票します。

得票に応じて政党・団体に議席が配分され、誰が当選するかは、政党・団体がそれぞれ提出する名簿の順位などで決まります。
名簿には、比例代表で擁立された候補者が一覧で掲載されています。

もうちょっと説明しますと、小選挙区の候補者も比例代表の名簿に掲載できる、つまり、小選挙区と比例代表の両方に立候補できるんです。

高校生(18)

両方に立候補できるんですか!

吉岡記者

はい。これを「重複立候補」と言って、仮に小選挙区で落選しても比例代表で当選するケースもあるんです。
これを「復活当選」と言います。

制度の話をすると、ちょっと難しく聞こえますが、とにかく、衆議院選挙は、小選挙区と比例代表でそれぞれ1票を投じる、ということを覚えておいてくださいね!
投票所では、まず小選挙区の投票を済ませたあと、続けて比例代表の投票用紙を受け取って投票します。
さらに、このあと、衆議院選挙とは別に「最高裁判所裁判官国民審査」の投票もあります。

私の意中の候補って誰?

高校生(18)

分かりました!では、投票に行ってきます!あ、投票所入場整理券を忘れないようにしなきゃ!

吉岡記者

もし忘れてしまっても、本人と確認できれば投票できるんですけどね。

高校生(18)

あ、そういえば、誰に入れるかまだ決めてなかったです…。

吉岡記者

それも大切ですね!
誰を選べば私たちにとってより良い政治が行われるのか、候補者が掲げる政策、どんな訴えをしているのかを知る必要がありますね。

候補者の訴えは、選管が発行する選挙公報やテレビやラジオで放送される政見放送で確認できます。
また、街頭演説の会場に出向いて、直接、話を聞くのも手ですね。
ただ、今はコロナ禍ですし、外出したくないという方は、ホームページに自分の政策や訴えを掲載している候補者もいるので、役に立つかもしれません。

NHKでも、候補者に政策アンケートを行い、選挙期間中に特設サイトに掲載する予定です。よろしければそちらも参考にしてみてください。

投票日に投票所に行けない人は?

期日前投票

会社員(34)

投票日は予定があるので、棄権しようと思います。息子の野球の試合があるんですよね。

安田記者

ちょっと待ってください!
投票日でなくても、投票する方法はあります。棄権するなんてもったいないですよ!

会社員(34)

え、投票日以外でも投票できるの?

安田記者

はい。期日前投票という制度があります。実は、投票日だけでなく、公示の翌日から投票日の前日までも、毎日が“投票日”なんです。

期日前投票所はお住まいの市区町村に必ず1か所以上設けられ、投票日当日に仕事や旅行などの用事があって行けない人は都合が良い日に投票できます。

平成15年に導入され、年々利用する人が増えています。4年前に行われた前回の衆議院選挙では、投票した人のおよそ4割が期日前投票を利用していました。

安田記者

ここで問題

前回の衆議院選挙で、期日前投票を利用した人の割合が全国で最も高かった都道府県はどこでしょう?

会社員(34)

えーっと、・・・。

安田記者

秋田県です!
秋田県では何と投票者の半分以上が期日前投票を利用したんです。

秋田県では秋田駅や大きなショッピングモールなど人が立ち寄りやすい場所に積極的に投票所が設けられ、これが効果的だったそうです。

県の選挙管理委員会は「便利な場所に設けるよう取り組んだことで、有権者に浸透してきたのではないか」と話していました。

ショッピングセンターに設けられた期日前投票所(2015年秋田県議選)

会社員(34)

でも、最近は新型コロナもあって、人が集まるところに行くのは心配です。

安田記者

そうですね。

ただ、各地の選管は、期日前投票所は比較的空いている時間帯もあると、利用を呼びかけているんです。

今回、東京・練馬区の選管は、ウェブ上で期日前投票所の混雑具合をリアルタイムで知らせる取り組みを行います。画面に「空いています」、「やや混雑」、「混雑」の3段階で表示され、スマホでも確認できます。「この時間は空いてる」と一目で分かるから便利ですね。

お住まいの自治体でもこうした取り組みを行うかもしれません。気になった方は、インターネットなどで調べてみるのもいいかもしれませんね。

不在者投票

大学生(20)

同じ大学に通っている友だちについての相談です。住民票は実家にあって、コロナで帰省を控えているので、投票できないと言っていました。

安田記者

ちょっと待ってください!

確かに、投票できるのは3か月以上住民票を置いている自治体の選挙区なので、このお友だちが投票できるのは実家のある選挙区です。
ただ、仕事や旅行などで、長期間、住民票のある市区町村を離れている人は、あらかじめ手続きをすれば、今いる市区町村で投票できるんです。

これを「不在者投票」と言います。

大学生(20)

手続きって何ですか。友だちに教えてあげたいです。

安田記者

不在者投票をするには、まず、住民票のある市区町村の選管に郵送などで投票用紙を請求し、どの市区町村で投票したいかを伝えます。

市区町村によってはオンラインで請求できます。

投票用紙を手に入れたら投票日前日までにその市区町村の選管に出向いて投票完了!

市区町村によっては期日前投票所でも投票できます。

不在者投票は、都道府県選管が指定した病院や老人ホームなどでも行われています。

安田記者

あと、もう1つ大切なことがあります。

住民票は特別な理由がないかぎり引っ越しした日から14日以内に移すことが法律で決められています。

手続きしなければ、5万円以下の過料に科されることもあるんです。覚えておいてくださいね。

在外投票

大学生(23)

海外で留学中です。投票は諦めます。

安田記者

ちょっと待ってください!

仕事や留学などで海外に住んでいる人が、外国にいながら国政選挙に投票することができます。これを「在外投票」と言います。

大学生(23)

最近、インターネットで日本の政治についての記事を関心を持って読んでいます。

今回の衆議院選挙は自分もぜひ参加したいと思っていたんです。どうすればいいんですか。

安田記者

「在外投票」を利用するには、あらかじめ、お住まいの国の日本大使館や総領事館に申請し、在外選挙人名簿に登録される必要があります。

出国前なら市区町村の窓口で申請できます。

在外選挙人名簿に登録されれば、公示の翌日から日本大使館や総領事館などの在外公館で投票できます。ただ、投票用紙を日本に送る時間が必要な分、投票期間が短くなってしまいます。いつまで投票できるかは、各国の在外公館に確認してください。

また、在外公館に出向かなくても、直接日本国内の市区町村選管に投票用紙を請求し、郵送で投票することもできます。

郵便投票

会社員(25)

新型コロナに感染して自宅療養中です。症状はないんですが外出できないので、投票は諦めます。

安田記者

ちょっと待ってください!

郵便投票」という方法があります。投票所に出向かなくても投票できるんです。

これまで体の不自由な人に限られていた対象が、ことし6月から新型コロナに感染して自宅やホテルで療養中の人にも広げられました。

会社員(25)

郵便投票?それは自宅で投票用紙に記入するということですか。

安田記者

そうです。

まず、郵送でお住まいの市区町村の選管に投票用紙を請求します。

新型コロナに感染して外出できないことが確認できれば、投票用紙が送られてきます。

そして投票用紙に記入し、選管に送り返せば投票完了です。

投票用紙の請求書は投票日の4日前までに選管に届く必要がありますので、注意してくださいね。

会社員(25)

投票できるんですね!良かったです。妻にお願いしてポストに投函してもらいます。

安田記者

そうですね。

ただ、1人で自宅療養している方は、誰かにポストに投函するようお願いしなくてはなりませんから、それは大きな課題となっているんです。
あと、制度をどう広く知ってもらうかも課題ですね。

新型コロナに感染して自宅療養するなどし、郵便投票を利用した人は、7月の都議会議員選挙では110人、8月の横浜市長選挙では47人でした。

新型コロナの感染状況を考えれば多くの人が利用したとは言えません。
もちろん、感染して投票どころではない、という方もいらっしゃると思いますが、1票を投じたいという人の投票の機会を確保することは大切なことですので、制度の周知などにしっかり取り組んでもらう必要がありますね。

インターネット投票(まだ、ありませんが…)

高校生(18)

それにしても、オンラインで投票できれば投票所に行かなくてもいいのになぁ。

安田記者

その意見には私も同感です。

自宅にいながらパソコンやスマートフォンで投票できれば便利ですよね。投票率の大幅な向上につながるかもしれません。

高校生(18)

実現しないんですか?

安田記者

そう簡単なことではないようです。

国は、インターネット投票の可能性について議論してもらおうと、有識者による研究会を立ち上げ、おととし報告書を公表しました。

この議論を踏まえ、今は、海外に住む日本人が投票する「在外投票」でネット投票が導入できないか、実証実験も進められています。

一方で、ネット投票を全国で本格的に導入するには、1億人を超える膨大な投票データを安全かつ正確に管理し、集計するシステムの構築が必要です。また、投票所ではないところで、投票が公正に行われるかなど、解決されなければならない課題も多くあります。

誰もが1票を投じやすい環境の整備に向け、ネット投票も含めてより良い投票のあり方を真剣に議論していく必要があると思います。

(選挙プロジェクト記者・吉岡桜子、政治部記者・安田早織)

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