投票に行こう

政治部長 山口太一

衆議院が解散され、選挙は安倍政権を継続させるか否かを巡り3極が争う構図となった。第1極は与党と日本のこころ。安倍総理は解散直後、「新党は混乱と経済の低迷をもたらす」と力説した。また連日、街頭に出て、経済指標の好調さと外交の実績を訴えている。ただ、いつにも増して熱を帯びる演説は、危機感の裏返しともいえる。電撃的な解散に打って出たものの、現段階では小池百合子氏の言動の方が、良くも悪くも注目されている。それを跳ね返そうと小泉進次郎氏は「小池都知事は選挙に出ても無責任。出なくても無責任。無責任のジレンマだ」と挑発している。自民・公明両党は安倍政権の継続に向けて、必死の訴えを続けている。

第2極は希望の党。小池氏は小泉純一郎元総理ら時の権力者と連携して実績を作り、持ち前の政局感で東京都知事にまで上り詰めた。今回、解散を逆手にとって「日本をリセット」と宣言。排除の論理、日本維新の会との連携、刺客作戦を矢継ぎ早に打ち出した。劇場型の演出で解散政局はめまぐるしい。しかし「新党は選挙目当ての一夜城」「自民党の補完勢力」と強烈な批判も浴びている。小池氏が立候補しない場合、首班を誰にするのかが焦点だ。

小池新党によって分断された「民進党」。野田佳彦前総理ら多くの議員が無所属での立候補を余儀なくされた。その一方、排除の論理に反発した枝野幸男氏らは「立憲民主党」を結成した。共産党や社民党と連携し、第3極を構成する。加計・森友問題を徹底的に追及し、安倍政権の打倒を目指す。保守の2極に対抗して受け皿となれるのかが焦点だ。

投票日まで、あと2週間。しかし近年の国政選挙と異なり、今回ばかりは、どんな選挙結果に落ち着くのか予測が難しい。小池氏の動向も判然としないし、リベラル勢力に風が吹くのかも見通せない。今週末からは党首討論も予定されていて、そこでの発言は選挙戦に大きな影響を与えるだろう。そうした発言や各党の政策をNHKは、この選挙WEBも通じて、できるだけ詳細にわかりやすく伝えていきたいと思う。

最後に一言。有権者のみなさんには是非とも投票に行ってほしい。前回の投票率は、約53%に止まり、戦後最低を更新してしまった。もしも今回50%を切るようなことになったら、それは民主主義の危機だ。お隣の北朝鮮をはじめ世界には選挙で政権を選択したくても、できない国がある。どの政党も、どの候補者も、不満足かもしれない。しかし棄権は、勝利者に政治を白紙委任することと、ほぼ同じだ。投票できない18歳未満や、まだ生まれていない次世代のためも、そしてなにより、「よりましな日本」を作るためにも、投票に行きませんか。あなたの決断が、この国の行方を決めるのだから。

山口太一
政治部長
山口太一
52歳
官邸・外務省キャップなどを歴任
政治を長く取材