投票のキホン

6月22日公示、7月10日投票の日程で行われる第26回参議院選挙。
「投票できるのは何歳から?」「投票のしかたがわからない」「候補者ってどうやって選べばいいの?」などなど、不安や疑問でいっぱいのあなたのために、担当記者が解説します。

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簡単です!いちからわかる投票方法

あなたが「もうすぐ選挙だなあ」と思うのは、どんなときでしょうか。
最寄りの駅で街頭演説を目にすることが増えてきたとき?家の近くにポスターの掲示板が立ったとき?それとも選挙カーが走り始めてから、でしょうか。
選挙が近づいてきたとき、一人ひとりの家に届くのが1通の封筒です。この封筒が届いてから、投票所で投票を終えるまでの流れをひとつずつ見ていきましょう。

誰が投票できるの

高校生(18)

あっポストに何か届いてる…。「投票所(入場)整理券在中」。投票用紙かな?

投票所(入場)整理券が入った封筒
投票所(入場)整理券が入った封筒

関口記者

いいえ、その中に投票用紙は入っていませんよ。
封筒に入っているのは、これから行われる参議院選挙の投票の案内です。(はがきの場合もあります)。

投票所(入場)整理券
投票所(入場)整理券

今回の参議院選挙の投票日は7月10日(日)。投票時間は午前7時から午後8時までとなっていますが、投票時間などを変更する投票所も一部あります。念のため、手元に届いた入場整理券を確認しておくとよいですね。

高校生(18)

そうか、いつ・どこで投票できるかという案内なんですね。

関口記者

ちなみに投票する権利「選挙権」が得られる年齢は、2015年に「20歳」から「18歳」へと引き下げられました。若い皆さんに政治への関心を持ってもらい、その意見を政治にもっと反映したいという目的があるんです。

実は世界的に見ても、18歳で投票できる制度は当たり前にあるんです。
2015年、国立国会図書館が世界の199の国と地域について調べたところ、9割近い176か所で18歳までに投票が認められていることが分かっています。

高校生(18)

でも選挙のことも投票のこともわからないことばかり。ちょっと緊張します。

関口記者

丁寧に説明しますから、大丈夫ですよ。
次のパートでは、投票所に行ったときの流れを見ていきましょう。

実際に投票してみよう

関口記者

さて、ここからは投票所の様子を説明します。レイアウトは投票所によって異なりますが、受付名簿対照係投票用紙交付係。そして記載台投票箱という流れになっています。

高校生(18)

「投票管理者」や「投票立会人」という人たちは、どんな役割なんですか?

関口記者

「投票管理者」は投票所の最高責任者です。選挙の経験が豊富な自治体職員や、自治会の役員を務める地域住民などから選ばれます。
「投票立会人」は選挙が公正に行われているか監視する人です。(立会人は「たちあいにん」などと読みます)。こちらも地域住民から選ばれるケースがあるほか、最近は選挙への関心を持ってもらおうと、18歳以上の若い人を対象に公募するケースもあります。

さて、まずは受付の担当者に投票所(入場)整理券を手渡してください。

高校生(18)

もし入場整理券を忘れたら、投票できないんですか?

関口記者

安心して下さい。投票できますよ。
「名簿対照係」で本人確認をしますので、指示に従ってください。
運転免許証やマイナンバーカードといった身分証明書を持っていたら、それを見せることで本人確認ができる場合もありますし、名前や住所を口頭で確認する場合もあります。

選挙区と比例代表の違い

関口記者

本人確認が済んだら投票用紙を受け取って、いよいよ投票です。
参議院選挙ではあわせて2回、投票をします

高校生(18)

えっ、1人2回も投票できるんですか?

関口記者

そうなんです。選挙区と比例代表、2種類の選挙があります。
クリーム色の投票用紙が選挙区白い投票用紙は比例代表のものです。
間違えないように選挙区の「選」、比例代表の「比」の字が大きく書いてあります。

2種類の投票用紙

投票用紙の交付係でまず手渡されるのが、選挙区の投票用紙です。
これを持って記載台に進んでください。筆記用具も用意されています。

高校生(18)

記載台には、どうして仕切りがあるんですか?

関口記者

誰が誰に投票したか分からないようにする、「投票の秘密」を守るためです。
もし「投票の秘密」が守られないと、例えば、ある候補への投票を強要されたり、言われたとおりに投票しなかったら責められたりする恐れも出てきます。投票先を自分の意思で自由に決められる、公正な選挙を実現するために「投票の秘密」は大切な原則なんです。

高校生(18)

なるほど、よくわかりました。ところで候補者の名前は、投票所で確認できるんですか?

関口記者

記載台に、候補の名前が全員分、掲示されています。
選挙区は原則、都道府県ごとにわかれていて(鳥取・島根と徳島・高知は各2県で1選挙区)、自分の住む選挙区の候補から1人選んで、投票用紙に候補の名前を書きます。ひらがなやカタカナで書いてもいいんですよ。
ただし投票用紙に2人以上の候補の名前を書いたり、応援のメッセージなど名前以外の内容を書いたりはしないでくださいね。せっかくの票が無効になる可能性があります。

選挙区の投票用紙を投票箱に入れたら、次は比例代表の投票です。
選挙区とは別のところに交付係・記載台・投票箱が設置されています。

高校生(18)

比例代表に立候補しているのは、選挙区と同じ人たちですか?

関口記者

いいえ。参議院の比例代表は選挙区とは別の人たちが立候補しています。
まず、比例代表は全国単位の選挙。つまり全国どこでも候補者は同じです。
そして知っておいてほしいのが、投票用紙の書き方です。必ずしも候補本人の名前ではなくても投票できるんですよ。

高校生(18)

どういうことですか?

関口記者

比例代表では候補の名前か、その候補を立てている政党・政治団体の名前を書くことで投票します。候補の名前が書かれた票と政党の名前が書かれた票の合計が、その政党全体の得票です。そして各政党の得票数に応じて、比例代表の50議席が配分されます

高校生(18)

政党ごとの議席数の分け方はわかったけど、当選する候補はどうやって決まるんですか?

関口記者

原則は各候補の得票数に応じて、当選の順位が決まります。
ただ、政党が個々の候補の得票数にかかわらず優先して当選させたい人物を決められる「優先枠」という制度も、前回3年前の参議院選挙から導入されました。政党によっては、こうした仕組みも使うケースもあります。

高校生(18)

なるほど!ありがとうございます。

関口記者

ちなみに投票を終えると、「投票済証」をもらえる自治体もあります。過去にも各地でユニークな投票済証が話題になってきました。

投票済証をお店で見せると、さまざまなサービスを受けられる動きも広がっています。
自分の住んでいる自治体で投票済証がもらえるかどうか、調べてみるのもいいかもしれませんね。

投票先、どうやって選ぶ?

高校生(18)

投票済証というのがあるんですね。ちょっと興味がわきました。
それにしても肝心の投票先をどう決めようか迷います。参考になるものはありますか?

関口記者

選挙が始まったら自治体の選挙管理委員会(略して「選管」)から「選挙公報」が送られてきます。それぞれの候補の経歴や考え方などが書かれているので、見比べてみることができます。都道府県の選管のホームページで選挙公報を公開しているケースもあります。

高校生(18)

知りませんでした。選管のホームページもチェックしてみようかな。

関口記者

候補本人や陣営からの発信も参考になります。最近では、インターネットやSNSを使って、主張や選挙運動について積極的に発信する候補も増えています。街頭演説の予定を告知している場合もありますから、候補者の訴えをじかに聞きに行くのもお勧めです。

投票日に投票所に行けない人は?

期日前投票

大学生(20)

週末はアルバイトで忙しいです。投票に行くのは難しいかな。

関口記者

ちょっと待ってください!
投票日でなくとも、投票する方法はあります。諦めるのはもったいないですよ。
期日前投票ということば、聞いたことないですか?

大学生(20)

なんとなく聞いたことはあるけど、手続きとか面倒くさそう。

関口記者

難しいことはないですよ!。
期日前投票は、投票日に仕事や旅行などの用事があって行けない人が、投票日の前に投票できるしくみです。公示日の翌日から投票日の前日、今回の参議院選挙でいうと6月23日から7月9日まで投票できるんですよ。
期日前投票所が市区町村に必ず1か所以上設けられて、都合のよい日に自分の住む市区町村の投票所で投票できます。もちろん事前の予約などは必要ありません

大学生(20)

期日前投票所って、どういう場所にあるんですか?

関口記者

市役所などの公共施設や、駅やショッピングモールといった人が集まる場所に設置されることが多いです。また選挙で投票できる年齢が「18歳以上」に広がったことを受けて、高校や大学に設置されるケースも出てきていて、どんどん便利になっているんですよ。
有権者にも浸透が進んでいて、昨年の衆議院選挙では約2000万人が期日前投票を利用しました。

大学生(20)

たくさんの人が期日前投票を使っているんですね。
でも便利な場所の期日前投票所は混んでそう。新型コロナも心配だし、人混みは避けたいな。

関口記者

混雑が心配という人のために、投票所の混み具合を事前に確認できるサービスも始まっているんですよ。
昨年の衆議院選挙では、複数の自治体が民間企業の協力を得て、期日前投票や選挙当日の投票所の混み具合をホームページで表示するサービスを行いました。青、黄色、赤の3色に色分けしたランプで、どのくらい混んでいるのか一目でわかります。

大津市の混雑ランプ

大学生(20)

これはわかりやすい!

関口記者

お住まいの自治体でこうした取り組みをしているか、チェックしてみるのもいいかもしれませんね。

不在者投票

専門学校生(19)

専門学校に通うため1人暮らししています。住民票は実家にあるので投票できません。

関口記者

待ってください!不在者投票という仕組みで、投票できますよ。

不在者投票とは、仕事や旅行などで長期間、住民票のある市区町村を離れている人が、いまいる市区町村で投票できる仕組みです。

専門学校生(19)

どうすれば、不在者投票をできるんですか?

関口記者

まず、住民票のある市区町村の選管に郵送などで投票用紙を請求し、どの市区町村で投票したいかを伝えます。請求書は総務省のホームページなどでダウンロードできます。 また請求自体をオンラインでできる自治体もありますよ。

投票用紙を手に入れたら、その市区町村の選管に出向いて投票できます。投票できる対象は、住民票を置いている選挙区です。不在者投票ができるのは投票日の前日までなので、注意してくださいね。

専門学校生(19)

そうなんですね。意外と簡単そう!

関口記者

ところで、ひとつ大切なことがあります。
住民票は特別な理由がないかぎり、引っ越しをした日から14日以内に移すことが法律で決められています。手続きしなければ、5万円以下の過料に科されることもあるんです。覚えておいてくださいね。

郵便投票

会社員(45)

新型コロナに感染して自宅療養中です。
症状はないのですが外出できないので、投票は諦めます。

関口記者

諦めるのは早いですよ。 郵便投票という方法があります。投票所に出向かなくても投票できるんです。

もともと体の不自由な人に限られた投票方法だったのですが、昨年6月から新型コロナに感染して自宅などで療養中の人も利用できるようになりました。昨年10月の衆議院選挙では324人が新型コロナの関連で郵便投票を利用しています。

会社員(45)

郵便投票?自宅で投票用紙に記入するということですか。

関口記者

そのとおりです。
まず、郵送でお住まいの市区町村の選管に投票用紙を請求します。

新型コロナに感染して外出できないことが確認できれば、投票用紙が送られてきます。
そして投票用紙に記入し、選管に送り返せば投票完了です。
投票用紙の請求書は投票日の4日前まで、今回の参議院選挙では7月6日までに選管に届く必要がありますので、注意してくださいね。

会社員(45)

投票できるんですね!よかったです。妻にお願いしてポストに投かんしてもらいます。

関口記者

そうですね。ただ、ひとりで自宅療養している方は、誰かにポストに投かんするようお願いしなくてはなりません。また濃厚接触者の方は郵便投票の対象外なので、投票所で投票することになります。

在外投票

大学院生(25)

海外留学を目指しています。外国に行ったら投票できませんか。

関口記者

海外からも投票できる仕組みがあります。仕事や留学などで海外に住んでいる人が対象で、在外投票というんですよ。

大学院生(25)

どうやって投票するんですか?

関口記者

まず、いま住んでいる国にある日本大使館や総領事館に申請して、「在外選挙人名簿」に登録してもらいます。出国前なら市区町村の選管でも申請できます。
登録されると「在外選挙人証」が手元に届き、在外投票ができるようになります。手続きには時間がかかるので、選挙が近づく前にここまで終えておきましょう。

大学院生(25)

ちょっと一手間、かかるんですね。

関口記者

選挙になったら、公示の翌日から日本大使館や総領事館などの在外公館で投票できます。ただ、在外公館から投票用紙を日本に送る時間が必要なので、投票できる期間は国内の投票日の6日前まで。国・地域によってはさらに短期間のところもありますから、各国の在外公館に確認してください。また、在外公館に出向かなくても直接、国内の市区町村選管に投票用紙を請求し、郵送で投票することもできます。

大学院生(25)

なるほど。でも交通や郵便の事情も日本とは違うだろうし、ちゃんと投票できるか不安です。

関口記者

確かに、在外投票は各国の交通・郵便事情に影響される方法と言えますね。国内での投票に比べてハードルが高いのは確かです。在外投票は2000年の衆議院選挙から行われてきましたが、投票率は衆議院選挙・参議院選挙ともに毎回10~20%台と低迷しています。

特に昨年の衆議院選挙は新型コロナの感染拡大で世界的に交通・郵便事情が悪化する中で行われ、いまの制度に対する不満や戸惑いの声もSNS上などで次々にあがりました。衆議院選挙のあと、海外に住む日本人の間ではインターネットで投票できる仕組み作りを求める署名活動も行われましたが、今のところ導入の見通しは立っていません。

番外編 こんな投票方法も…

関口記者

ここからは特殊な業務にあたっている人たちのための投票制度を紹介しましょう。
日本から遠く離れた南極で観測や研究にあたる「南極地域観測隊」のための投票制度、その名も「南極投票」です。

南極地域観測隊の集合写真

南極からも投票できるんですか!いったいどうやって!?

関口記者

観測隊には夏の3か月を過ごす「夏隊」と1年を通じて滞在する「越冬隊」がありますが、隊員たちは日本を出発する前に市区町村の選管から「南極選挙人証」を受け取ります。
選挙当日には南極の昭和基地に投票所が設けられ、投票管理者は隊長が、投票立会人は隊員が務めます。隊長はそれぞれの隊員が持参した「南極選挙人証」を確認し、日本から持ってきたA4サイズの専用の投票用紙を手渡します。

「南極投票」の張り紙

そうなんですか。記入した投票用紙はどうやって日本に送るのですか?

関口記者

FAXを使って、投票する隊員がみずから日本の選管に送るんです。
FAXの受け付けは東京都の港区と中央区の選管が1年ごとに交代で担当していて、そこから各隊員の住所がある自治体の選管に郵送されます。昨年の衆議院選挙では港区選管が担当でした。

投票用紙に記入する様子・FAXで送信する様子

こうしたFAXを使った投票は、国際航路や遠洋漁業などで働く船員のための「洋上投票」でも行われているんですよ。

こんな離れたところから投票できるなんて、すごいですね!

関口記者

そう。投票所の運営を担当した当時の隊員は、滞りなく投票してもらうために、投票用紙の用意以外にも多くの準備が必要だったと教えてくれました。
例えば、投票日を迎える前にFAXをトラブル無く送信できるか、日本の選管と連絡を取りながらチェックします。昨年の衆議院選挙では、チェックの段階でFAXの送信がうまくいかず、急きょ予備の機械に交換したそうです。
また隊員たちが選挙の情報を得る手助けもしました。昭和基地では、インターネットには接続できるものの通信速度が遅い、テレビの視聴ができないなど、情報を得る手段が限られています。このため選挙担当の隊員が、選挙公報を選管のホームページから基地内のパソコンにダウンロードして、隊員たちが閲覧できるように便宜を図ったそうです。

そこまでやるんですか。

関口記者

私が話を聞いた元隊員は「こうした手続きを取ってでも、遠く南極から投票できる仕組みがあるのは、1票が大事にされているということなのだなと感じました。選挙に関して深く考える、1票の重みを意識する投票でした」と話していました。

(選挙プロジェクト記者・関口紘亮)