選挙を知ろう

今さらだけど…なんで「18歳選挙」?

藤井剛さん藤井剛さん

明治大学文学部特任教授。長年、高校で“18歳”を指導。主権者教育を研究。

「18歳選挙権」ってどう?

2017年初回のテーマは、ズバリ「18歳選挙権」になった理由

2016年の夏に選挙権が「20歳以上から18歳以上」に引き下げられました。僕が受け持った高校生の中には「政治・経済についてあまり知らないから、選挙権が自分にも与えられると思うと気が重い」なんて言う人もいました。

なぜ『18歳選挙権』になったんだろう

「選挙権なんて別に欲しくないのに、なぜ『18歳選挙権』になったんだろう?」
「メンドくさそうなことが、2年も繰り上げられちゃったってどういうこと?」

疑問に思っている人も少なくないんじゃないでしょうか?

WHY?その理由は…

「18歳選挙権」になった理由は、主に下の3つです。

高齢化が進む → 若い有権者を増やそう!
世界の傾向に合わせよう!
③ 「憲法改正」に必要な国民投票の年齢が「18歳」なので、合わせよう!

…難しいですか?
もう少し、お話をつづけると…

① 高齢化が進む → 若い有権者を増やそう!

若者が「ひとこと言わせてもらいたいこと」が増えています。

たとえば“年金問題”
いまの年金制度は、若者が納付している年金保険料が、高齢者に支払われる方式。若者が比較的多い間は良いのですが、将来は若者が減っていく時代。年金は破綻するか、給付が大幅に減ると予測されています。

「ええっ?なんとかならないの?」と、年金問題に“ひとこと”言いたくても、若者の“ひとこと”の影響がものすご~く小さかったらどうでしょう?

人口を比べると、20歳代は「1,268万人」、60歳代は「1,836万人」。その差は、実に「1.45倍」。そのため、20歳代の「年金システムを見直してほしい」という声は、年配の人たちの声と比べて、多勢に無勢で、小さくなってしまいます。

でも!
「18歳選挙権」にすることで約240万人の18・19歳が20歳代の応援に加わると、60歳代の人数とほぼ同じになり、「声の大きさ」はあまり変わらなくなるのです。

若者の「声」は小さかった?

若者の「声」は小さかった?

② 世界の傾向に合わせよう!

国立国会図書館調べ※1によると、199の国・地域のなかで、選挙権が18歳以下の国は、なんと「176カ国」! そのうち最低年齢は「16歳」で、オーストリアやブラジル、キューバを含む6カ国。先進5か国(G5)の中でも、日本だけが遅れていたんです。

各国の選挙権年齢

日本では被選挙権も25歳と高めですが、イギリスは18歳、キューバではなんと16歳から。“学生議員”も、世界各国では誕生しています。

③ 「憲法改正」に必要な国民投票の年齢が「18歳」なので合わせよう!

でも、18歳じゃ何も決められないって?いえいえ、そんなことはありません。
「国民投票」では18歳以上が投票できることになっています※2

「国民投票」とは、日本国憲法を改正するかどうかを決める時に行われます。たとえば、「憲法9条を改正するか、しないか」という議論。ニュースでみたことありませんか?

憲法を改正するためには…

憲法改正のしくみ

日本の最高法規である憲法を改正するか否かを18歳で決めることができるのに、議員を選ぶ権利(=選挙権)は20歳からというのは、なんか変じゃないか!?と考えられたのです。

「選挙権を持つ」って大事なんだって~。

そもそも「何か決めるときに、自分たちの意見を反映させたい」という強い気持ちから選挙権獲得の歴史は始まっています。たとえば、想像してみてください。

自分が兵隊として戦場にいくかもしれない場合、「自分の国が、戦争に参加するかしないかは自分たちで決めたい」と思う人が多いのでは?

100年前の第一次世界大戦。男性が大量に戦地に送られ、たくさんの女性が社会に出て働くようになると「私たちにも政治に対して、ひとこと言わせて欲しい」という空気が高まりました。そこで、第一次世界大戦後、「女性参政権」が各国で実現したり、選挙権が引き下げられて18歳選挙権となったりしてきたのです。

日本では、明治時代に自由民権運動で「選挙権」を勝ち取りました。でも、「20歳選挙権」になったのは、みんなが「20歳の男女普通選挙にしてくれ!」と声を上げたのではありません。第二次世界大戦で日本が負けた後、連合国軍総司令部(GHQ)の指示だったんですよ。そして今回の「18歳選挙権」も、若者たちが「選挙権が欲しい」と強く言ったわけではありませんでした。だから、日本では政治や選挙への関心が高まらない、と説明されることもあります。

※1. 2015年12月末現在、国立国会図書館調べ。
※2.憲法改正国民投票法。2014年に20歳から18歳に引き下げられた。ただし、投票日が平成30年6月20日までの国民投票においては、年齢満20歳以上の者が投票権を有する。