選挙を知ろう

【選挙事件ファイル④】
「封印破棄」すると災いが!!?

「封印破棄」という罪があります

封印のイメージ

おどろおどろしい名前ですが、その真相は「“封印”されたものを破る罪」のこと。

選挙は投票用紙を数えたら “終わり”ではなく、当落結果が出た後も投票用紙は保管されています。そして保管の際、その投票用紙に「封印」がされるのです。

封印されているのは、その選挙で選ばれた議員などの任期中。しかし、封印が解かれる時もあります!選挙に関して異議を申し立てられた場合などで、この時は選挙管理委員会や裁判所が調査に入り、「封印を解く」のです。

それ以外で封印を破って、中身を取り出したりすれば刑法第96条の「封印破棄罪」で、3年以下の懲役または250万円以下の罰金に処されます。

「選挙事件ファイル①~③」で取り上げた香川県高松市の開票不正事件。開票作業中、本来の票数よりも少なくなってしまい、つじつまをあわせるために白票で水増しした高松市の職員たち。後日、捜査機関に不正を告発する匿名の投書が寄せられると、自分たちの罪がバレないように(!)、勝手に封印を解き、票の移し替えや裁断を行いました。逮捕された職員たちは、不正に投票を増減したことにより“公職選挙法”に違反しただけでなく、“刑法”にも違反したとして罪に問われました。

秘儀?!「封印」方法を教えて!

…ところで、「封印」ってどうやるの?

1974年から40年以上、選挙管理の現場に関わってきた小島勇人さんに話を聞きました。

 小島勇人さん小島勇人さん

川崎市選挙管理アドバイザー。これまで衆・参両院の各選挙を十数回、衆参同日選挙を2回、統一地方選挙を十数回にわたり地方公務員として経験。

小島さん「“封印”といっても、かっこいい箱に入っているわけではありません。通常の場合、段ボール箱です。」

・・・えっ、そうなの!?
有権者が投じた投票を点検し、候補者(政党)ごとの得票数を集計し、“開票録”という書類を作成します。その後、点検済みの投票用紙は、 “有効”“無効”を区別した上で、容器に入れ、封印されます。

“有効投票”は、選挙別に段ボール箱に入れられます。開けられてしまう可能性がある場所をすべて、ガムテープ及びロープで密閉梱包。さらに!ふたの合わせ目を紙などで封じ、管理者と立会人全員がそれぞれの印鑑で割り印を押します。厳重ですねー。

《封印の一例》

“無効投票”も“有効投票”と同様に、選挙別にクラフト紙などで包み、麻ひもなどで縛ったうえで、梱包の合わせ目に管理者および立会人全員の割り印を押します。

小島さん「選挙管理委員会の、厳格に鍵のかかる場所で保存されます。保存期限が過ぎた投票用紙は、これも厳格に焼却したり、再生資源に利用されることにより処分されます。

有権者の投じた貴重な一票を投票箱に受けとめ、その投票を正確に数え、市政・県政・国政に“政治の声”としてお届けすることが、選挙事務の現場における責務です。このことを十分認識していれば、投票の増減や封印の破棄という民主主義の基本である“選挙”への信頼を損なう行為が行われないはずです。これからも有権者の選挙事務に寄せる信頼に応えるよう選挙事務関係者に頑張ってほしいと思いますね。」

※ 例えば参議院通常選挙の場合、“選挙区選挙”と“比例代表選挙”。