選挙を知ろう

【世界選挙紀行】フランス②
“たまたま当選”を防げ!決選投票と2回投票

大山礼子 大山礼子さん

駒澤大学法学部教授。英米仏等の政治制度を専門に研究。

首相と大統領の両方がいる?!

フランスの政治制度は「半大統領制」とよばれる。国会の下院によって信任される「首相」と「内閣」の他に、国民が直接選挙で選ぶ「大統領」がいる。国家の元首は大統領。その選挙では、1回目の投票で過半数の票を得た候補者がいない場合に、上位2名の候補者による「決選投票」が行われる。

「決選投票」とは、1位と2位の2人の候補のうち「どちらを支持するか」をもう一度問うことで、より多くの人々が納得できる人物を選出する仕組みだ。選挙で票が割れた場合、本当は大多数の人々が支持していない候補者が“たまたま1位”になって当選しまうこともある。「決選投票」を行えば、有権者の大多数が拒否するような人物を大統領にしてしまう危険性が少なくなるので、手間はかかっても2回投票を実施する意味があると考えられる。

大統領制の国の多く、そして日本でも国会のなかで内閣総理大臣を選挙する際に、この「決選投票」が使われている。

フランスの投票所のようす

議員の選挙も、決選投票!

フランスの選挙制度の特徴は、大統領だけでなく、議員の選挙にまで「決選投票」を取り入れていることだ。下院議員の選挙制度は「小選挙区2回投票制」。1つの選挙区から1人の議員を選ぶ点は、日本の衆議院などで使われている「小選挙区制」と同じだが、1回の投票だけで当選者を決めるわけではない。第1回投票で過半数の票を得た候補者がいない場合には、1週間後に第2回投票を実施して決着をつけるのだ!

ただし、第2回投票が上位2人の一騎打ちになるとは限らない。大統領選と違って、下院選では第1回投票で12.5%以上の票を獲得した候補者が第2回投票に進むことになっているので、第2回投票は一騎打ちになることもあるし、三つどもえの戦いになることもある。

フランスの国会議事堂(下院)

昔は2回投票制が普通だった

手間と費用がかかる「2回投票」。現在、議会の選挙において実施しているのは、先進諸国ではフランスだけである。だが、20世紀初めころまでは、ヨーロッパの多くの国々で2回投票制が使われていた。

もともとの発想は、「一部の人々の支持だけで当選者を決定するのではなく、なるべく多くの人々の意見で、できれば全員一致で当選者を決めたい」ということだったようだ。伝統を重んじるローマ教皇の選挙では、今でも選挙権をもつ枢機卿たちが一部屋に籠もり、誰かが3分の2以上の票を獲得するまで、無記名投票を繰り返すそうだ。選挙がカギのかかった密室の中で行われるため、教皇選挙を「コンクラーヴェ」(ラテン語で「カギのかかった」という意味)とよんでいる。

議員の選挙では、まさかコンクラーヴェのような方法はとれないので、その簡略形として「2回投票制」が考えられたのだろう。その後、ヨーロッパ大陸の国々には「比例代表制」が普及したため、フランスだけに「2回投票制」が残ることになったのだ。

日本のような単純な小選挙区制と「小選挙区2回投票制」とを比較した場合、どちらも大きな政党に有利であることに変わりはないが、2回投票制では比較的小さな政党も生き残ることができると考えられる。実際、フランスでは、単純小選挙区制のイギリスとくらべると、政党の数はあまり減らなかった。右派、左派それぞれの陣営に複数の政党が存在し、緩やかな協力関係を築きながら、両陣営のあいだで政権交代が行われてきたのである。

※登録有権者中(フランスでは日本のように18歳になると自動的に選挙人名簿に記載されることはなく、自分で有権者として登録する必要がある)

国情報

フランス共和国
  • 国名:フランス共和国
  • 首都:パリ
  • 人口:約6,633万人(2016年)
  • 投票権:18歳以上
  • 大統領:フランソワ・オランド
  • 有名なもの:エッフェル塔、ヴェルサイユ宮殿、モン・サン=ミシェル、パリ・コレクション、クロワッサン、ワイン、マリー・アントワネット、ヴィクトル・ユーゴー、ルノー

(掲載されている情報は2016年11月現在の内容です)

写真:Irene Ledyaeva