選挙を知ろう

【18歳選挙権トリビア】
えっ!? 下宿先でも実家でも投票できない…

河村和徳さん河村和徳さん

東北大学大学院情報科学研究科准教授。共通投票所導入を検討した、総務省投票環境の向上方策等に関する研究会のメンバー。

大事なものは「住民票」

進学や就職をきっかけに、一人暮らしを始める人は多いことでしょう。その中で、「大学に進学しても将来は実家に戻って働くから」あるいは「たんに面倒くさい」といった理由で、住民票は実家に置いたままという人も少なくないようです。

しかし、住民票を移さないと、下宿先でも実家でも投票できなくなる場合があることを知っておいた方がいいと思います。現に今年の参院選でも、何人もの大学生や短大生などが投票できませんでした。

「暮らしている実態」がないと…

日本の民法は、「各人の生活の本拠をその者の住所とする」という立場を採っています。そのため、住民として認められるには、“そこで暮らしている事実”が必要となります。さらに公職選挙法では、居住実態のない住民は選挙ができないと定められています。

まず、住民票を移していない大学生などは、下宿先の自治体で投票はできません。投票できる人の名簿は住民基本台帳から作成されるのですが、住民票を移していると選挙人名簿に名前はありません。だから投票できないのです。

えっ!? 下宿先でも実家でも投票できない…

実家の自治体には住民票がそのままあります。しかし、“居住実態”は実家にないと言っていい状況です。公職選挙法を厳密に解釈すれば、実家でも投票できないことになります。事実、1954年に最高裁が、「親元から離れて居住する学生の住所(生活の本拠)は下宿先」と判断しています。実は古くからある問題なんです。

「でも、普通は実家で投票できるよね?」 と思いますよね。大半の選挙管理委員会は実家で投票することを認めていますし、不在者投票も可能です。厳密に対応している自治体はごく僅かです。住民票を移さなくても「投票できてしまっている」のです。居住実態があるかないか、市区町村の選挙管理委員会の裁量に任されています。選挙管理委員会の判断1つで、投票できない人が生まれてしまっているのが実態なのです。

「居所投票」ってどう?

住民票がないから下宿先で投票できず、居住実態がないから実家でも投票できないという状況は、やはり問題です。少なくとも国内に住んでいるのですから、国政選挙で投票できなくなるのはおかしいと思います。また参政権が自治体の個々の判断によって左右される状況も望ましくありません。

現在の日本では、仕送りを受ける学生に配慮した仕組みが整っています。国民年金の保険料徴収などでは、住民票を移さない方が親御さんが対応できるので楽、ということもあります。新幹線も飛行機もなかった時代と異なり、帰省も容易です。そのため、住民票を移すメリットが見えにくくなっているのが実態です。そうした現状を考えれば、居所(下宿先)を届け出て「居所投票」ができるように認めるような仕組みを考える必要があると思います。

以前では、自治体を超えた情報のやりとりには膨大な手間と費用がかかっていました。しかし、今では住民基本台帳ネットワークやマイナンバー制度など、情報技術を活用した仕組みができており、やりとりにかかる手間とコストはかなり軽減しています。それらを使って、この古くからある問題に取り組む必要があると思います。